31年間嫌いだった辛い物が食べられるようになった

ありとあらゆる辛いものが苦手だった。
唐辛子、わさび、辛子の類、刺激の強いもの、(わさびを「辛い」と表現すると怒る人がいることはまあわかっています)少し前までは中辛のカレーですらしんどかった。
舌がしびれ、次に口に入れたものの味を感じられなくなるほど、身体が受け付けなかった。

その昔、仲間内で居酒屋に行くと「えぇーっ、なべむらさんにも苦手なものがあるんですか?!辛い物食べられないの?!」とみんな嬉しそうにして「ホラこれ辛くないっすよ!」とよく騙されたものである。
もちろん韓国料理やタイ料理を食べたことはないし、餃子にはポン酢しかかけたことなかった。

そんな味覚に最初の変化があったのは、二人目の妊娠中だった。
毎日吐いていた一人目の時ほどのつわりはひどくなかったものの、何を食べても味がせず、砂を噛んでいるような感じとはこのことか…と毎日が憂鬱だった。
塩気のあるものが食べたくてポテトチップスを時々食べていたけれどどうにも物足らず、そういえば辛いものが食べたいような気がする、と思って夫に「辛いポテトチップスってないのかな」と訊いたところ「カラムーチョ」なるものの存在を知り、ハマった。それはもうハマった。地獄に仏とはこのことかと思った。苦手だった舌を突き刺すピリリとした感覚を心地よく感じるようになり、今まで、(食べる人の気が知れない…)と忌み嫌っていたキムチも買ってみた。(だいすけお兄さんが初めて出演したCMということで少し話題になったやつ。食べてみたらおいしかった)。

しかしつわりの終焉とともにブームは去り、今まで通り「辛いものは苦手」という認識をもつようになった。

ところがである。あれから2年半、再び辛いものブームが訪れたのである。
きっかけはよく分からない。妊娠はしていない。新型コロナの影響で3か月誰にも会わず幼児たちと引きこもっていて頭がおかしくなったのかもしれない。


ふと、またキムチが食べたいなと思ったのである。
試しに甘めのを食べてみたら案の定物足りず、今はいろんなキムチを食べ比べているところ。納豆豚キムチオートミールおいしい。

あんなに苦手だったものがどうして食べられるようになったのかは分からないけれど、世界が少し開けたような気がしている。
今まで「無理」としか思っていなかったものに希望がもてるということは、なんかいいものだ。

連続テレビ小説「ごちそうさん」で、食べることが大好きな東京出身の主人公が関西に嫁いだものの、出汁のうまみが感じられず親戚にいびられ、数日間の絶食の後に出汁の味がわかるようになり「私はこれからおいしく食べられるものがもっともっと増えるのよ!」みたいなセリフがあったことを思い出す。


今まで買おうと思ったこともなかったラー油とか七味唐辛子とかを買ってみたり、トムヤムクンヌードルを食べてみるなど、買い物の幅も広がった。カレーにはなんとガラムマサラなんかも入れちゃう。
もしかしたらいつか東南アジアとかの国を旅行するとか、そういうのも夢じゃないかも。なんて。

近場に「からいもの食べられるようになった!!おいしいとこ教えて!!一緒に行こう!!」と言える友人がいないことが少し寂しくはあるが、
からいものライフをたのしみたい。


あ、わさびの辛みはまだ苦手です。

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