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『勝利』と『ICUFC』|新入生の皆様へ




ふとした瞬間、何故勝たなくてはいけないのかがわからなくなる時がある。



予め前置きしておくと、僕はそれはそれは死ぬほど『勝利』を欲している人間である。勝てばご機嫌、負ければ不機嫌。そんな単純な人間である。
言わずもがな、チームのみんなと勝利を分かち合う光景を想像して、勝利のためにあらゆる側面から「向上」を目指し、毎日愚直に仕事をする。

でもなぜ勝ちたいのか、強烈な理由が見つからない。
薄っぺらい理由はいくらでも思いつく。だけれど、"本当"の「勝たなくてはいけない理由」が、僕には一向に見つからないのだ。


だって、勝っても、負けても、明日はたいして大きく変わらないじゃないか。
負ければその日は少しばかり寝られなくなる。たかだか、そんなもんの話だ。



・・・



サッカーは、スポーツであり、「競技」である。

競技(きょうぎ):英(competition)

一定のルールに従って、優劣を争うこと。

(Wikipediaより)



「競技」という性質上、僕達はサッカーをすることで、相手よりも優れているのか、劣っているのか、ということを巡って相手と争う。
つまり僕達はサッカーが「競技」である以上、『勝利』を目指して90分間を戦うことを強制的に強いられる。『勝利』を勝手に押し付けられる。
勝っても、負けても、明日はたいして変わらないのに。


僕達は勝手に「競技」という「レッド・オーシャン」に投げ込まれる。
自分達のゴールにボールが入った数よりも、相手のゴールにボールが入った数が多ければいいねなんていう、文字に起こすと驚くほど単純そうな「レッド・オーシャン」に。
我々は投げ込まれた「レッド・オーシャン」の中で、当然の如く勝利に取り憑かれ、「勝ったらいいよね」という暗黙の了解の下、誰も真っ当な理由を持っていないのにもかかわらず、勝てば正義、負ければ悪となる。

僕は今、ここに拒否反応を起こしている。




「レッド・オーシャン」の対概念に「ブルー・オーシャン」がある。
レッドオーシャンから可能な限り脱却して、競争のない理想的な未開拓市場のことである。
資本主義社会という競争をベースに作られる枠組みの中で、下記の本では「競争のない世界を創造する」を実現させようというのだ。
競争が基盤の社会に、競争のない世界を創り出すだって?

競争へのこだわりを捨てた企業は、
ライバルに対抗したり相手を打ち負かしたりすることや、あるいは、競争上有利なポジショニングを手に入れることにほとんど関心を払わない

(中略)

「バリュー・イノベーション」という呼称を用いたのは、
ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にするからだ。





ICUFC


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僕が監督を務める国際基督教大学サッカー部は昨シーズンにリーグ無敗優勝・昇格を果たし、今シーズンは3部リーグにステージを移し、戦う。
チームが掲げた目標は、2部昇格。サッカーのルールの中で、相手よりも優れる試合をより多く積み上げましょうというわけである。

もちろん目指す。上へ上がっていく。でも同時に、相手より優れているからなんだって言うんだよ、とも思う。
僕達にはやっぱり勝たなくてはいけない理由なんてないんだから。


だから僕は、下記のようなことを選手・マネージャーに対して、うざいほど繰り返しているし、これからも死ぬほど繰り返し問うていく。

「君は、大学サッカーで何がしたいんだ?」
「ICUFCを通して、君はどうありたいんだ?」




我々は、嘘っぱちの理由を並べて、相手より優れているのか、劣っているのかだけに固執をして、「競技」に押し付けられた価値や評価の下でフットボールをしない。(しない組織になっていく)
我々の価値・評価・基準は、自分達で作り出すのだ。

それはつまり、「レッド・オーシャン」からの脱却であり、僕達だけの価値を創造する「ブルー・オーシャン」を目指していくということである。


我々はどうありたいのか。ICUFCで何がしたいのか。
それらは全て自分たちで作り出し、自分達で作り出さなければならないのだ。

狂うほど自分に問い、そして死ぬほど組織で共有し、時には熱くなってムカつきながら語り合って、ゆっくりと削られながら、ICUFCだけの価値がデザインされていく。ここに「正解」という概念は存在しない。


ID25(新入生)の皆さまへ



もしあなたがICUFCに入部したら、何がしたいですか?どういう自分でありたいですか?どういう組織にしたいですか?
僕は部員のみんなと対等に意見を述べたり、情報提供はしますが、(立場上の役割を除いて)僕が価値や基準を決定することはありません。ましてや、押し付けることもありません。


勝ちたいのか、勝ちたくないのか、それさえもあなたが決めてください。


僕は、僕自身が幸せで、そしてそれ以上にICUFCに所属するみんなが幸せになるような仕事をしていきたいと思っています。


一緒に挑戦を楽しみましょう。よろしくお願いいたします。


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国際基督教大学サッカー部監督   
泊 寛太





白潟総合研究所株式会社様、今シーズンもよろしくお願いいたします。


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