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雨に頬を撫でられる

僕は雨の町で育った。
そんな町に、教育実習の為、戻ってきた。この町で腰を据えて暮らすのは約5年ぶり。というか、中学校からこの町を出ていたので、11年ぶりかも知れない。
長い年月が経つと色々変わって見える。通っていた学校。通っていた通学路。自分の部屋。全てが小さくなっていたり、近くなっていたりするように感じる。あの頃みたいに毎日がワクワクで、少し歩いただけで大冒険した気分、大きな家の中で自分の部屋がある高揚感、雨がサーサーと降っていると、外で遊べない残念な気持ちになるも、どこか心がざわつく感覚はもう味わえないのだろうか?と少し残念になる。
そんな僕とは違い、学校に行き、子ども達を実際に見ると、彼ら・彼女らは輝いていた。この雨の町で、雨が降っていても目を輝かせて生きていた。
「あの頃の僕もこんな感じだったのか・・・。」
と少し思い出させてくれた。

しかし、良い事だけでは終わらないのが人生なもので、胃腸風邪になってしまい、1週間の内、2日しか学校に行けなかった。
寝込んで吐き気と腹痛に苦しみながら寝ていると、あの音が聞こえてきた。

サーサー

自室のロフトの窓から雨音が聞こえ始めた。「雨が降ってきたんだ・・・。窓閉めなきゃ・・・・。」そう考えていると、雨の冷たい風が窓から流れてきて、僕の頬を撫でた。風邪で苦しんでいる僕に
「頑張れよ。言い忘れていたけど、お帰り。」
と言ってくれているように感じた。
それが、なんとなく嬉しいような、懐かしいような。
「あぁ、僕はやっぱり雨の町の住人なんだな。」
そう思わされた。

胃腸風邪は無事に回復し、どうにか来週からまた学校に行けそう。(おかげで4㎏痩せた。)当分、この雨の町を存分に堪能しようと思う。もちろん、クライミングも含めて。

ただいま。僕の町。

カエル

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