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ナイル川殺人事件

2022年の方。ずっと見てなかったから…

エルキュール・ポアロ強火解釈巨大感情実装映画とは聞いてない

ミステリー作品が好き!!媒体は問わず好き!!でももっというと人の愚かさが2件目以降の殺人を招き、親しい人はもうこの世にはいなくて今事件を解決したとしても死者は蘇ってはくれなくて残された人の尊厳さえ踏み躙るかも知れなくて何より自分がこの真実に辿り着いた冷酷さが憎い感じのミステリーが1番好き…!!!!今回ナイル川殺人事件を見てそれを思い出しました。

丁重に散りばめられて補足を待ってる真実と初めから積み上げられた隙のない人間関係の描写が美しくて、これが見たくて2時間ちょいの映画を見ているという充実感があった。1時間で殺人から解決までやるドラマでは描ききれない複雑さを存分に浴びて人が死ぬ前からもう最高。何も言ってないが視線とか居心地悪そうな挙動からわかる不和とか明確に口にされる言葉の全てに意味があるし無いような空気感が本当に好き。

オリエント急行から続投の年下の友人、ブークが出てきたのもかなり嬉しかった。もしかしてブークは本シリーズの助手役として決定なのかなとか思いもした。思いましたね…。

あと単にブークのキャラクター性がめちゃくちゃ好みなのでかなり困っていた。溌剌として口がよく回って人をよく見ていて探偵に信頼を置いていて年下で愛のことを信じている。もうだめだよだいぶ好きだよ…。

シャーロックホームズなどと違ってまあまあ礼節を重んじるポアロは社会的地位が実績を伴わずにあるので捜査の上ではあまり助手を必要としないタイプの探偵なんだけど、ポアロをちょっと浮世離れした探偵として確立してツッコミ続けるために常識をわきまえた視聴者寄りの存在が必要なのでブークが必要であることが最後の最後に効いてくる。

常に世間とは一線を画して冷徹なまでに事実を追い求められるポアロに感情移入はできなかったけどラストの船上のシーンにおいてはポアロという存在にブークはいらなかった。浮世離れはしてないから、地に足つけて優雅さも紳士らしさのかけらもなく仁王立ちしてるから。

あのシーンからのポアロがめちゃくちゃ、めちゃくちゃ好きなんだけどエルキュール・ポアロらしくないと言えばそう。でも本当に最高なので全部許してしまう。

リメイクというか新しくやるにあたってあまりに偉大な映像化を踏襲して負けに行く必要一切ないわけだし…。

でも「そして、ブーク」の間の何も話さず目に涙を溜めて眉間に皺を寄せて後悔の念に苛まれるエルキュール・ポアロ。あまりに強火解釈すぎる…。負けてしまった…監督兼主演しかできないポアロの解釈が劇場で公開され、好評を博し、3作目が出る事実すごいな。みんなあのポアロにもう一回会いたいってこと?あの少し髪が濡れてて疲れ切っててそこそこ体が小さいことが明らかになってて紳士さのかけらもない立ち方で銃を構えて苦しそうに真実を述べるポアロにもう一回会いたいってこと?すご…世界のこと信じられるな…。

とにかくずっと楽しかった。はっぴー!!!って映画ではないんだけどミステリー映画のいいところ全部詰まってた。愛は何もかもを可能にするという話として悲劇的かつ手から溢れていくラストにグッときて仕方なかった。散策目が楽しみです。

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