彼の覚醒 ⑧

彼との会話するようになり、色んな共通する部分があった。シンクロニシティと言ってもいいのだろうか。
例えば、聴いていた音楽の好みが同じだったこと。マイナーなものなのに同じCDを幾つか持っていた。
彼から紹介されたアーティストの音楽は、どれも好きになり、波長が重なり合う感じがして安らいでいくのがわかった。

初夏になると私の誕生日が訪れ、彼から初めてプレゼントを戴いた。
昔の航海図のような包装紙を開くと、ケルト音楽のCDと星野道夫さんの著書、ナチュラルな感じのTシャツと手紙が添えられていた。どれもが嬉しくて、彼が一つ一つ選んでくれた物と、選ぶために費された時間さえも愛おしく貴いものに感じられた。

私は、包まれていた綺麗な包装紙も彼からの気持ちの一つと感じて、大切にしようと思った。
よく使っているクリアーな4つの引き出しにその綺麗な柄が見えるように入れて、私の目にいつも触れるようにした。
すると後日、彼から包装紙を買って彼自身が包んでくれたことを伝え聞いた。
それだけではなく、
「包装紙がいつも見えるように大切にしてくれているんですね。」
と私が話していなかった引き出しのことやその思いを、知る由もない彼の方から言われて唖然とした。
「え?どうして私が大切にしてるってわかったのですか?」
と驚きの余り聞き返すと
「あなたの考えることは何でもわかります。」
と平然と彼は答えた。本当にビックリしてしまった。

その頃から「なぜ知っているの?」「どうしてわかるの?」と感じるほど、私の心の中まで透視されていると思えるようなことが徐々に現れてきた。私にはそんな彼が不思議でならなかった。彼の方が想いが強いのかも知れないと考える他なかった。

今思い返すと、それは彼が私との出会いから最初の霊的な目覚め、覚醒を経験しはじめた時期だったのだと思う。
私の内面すべてが彼に見透され、テレパシーとして伝わっていたのかも知れない。

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