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中国の歴史・思想・文化

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中国の古代思想と伝統文化について、現職時に研究テーマとしていた論考や、授業で使った講義ノートなどをアレンジしてみました。
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2023年9月の記事一覧

「白鬚の太守亦何ぞ痴なる」~唐詩人・白居易の「痴」

要旨  「痴」は、精神の働きが鈍い一種の病態を表す文字である。中国古典詩においては、六…

泉聲悠韻
8か月前
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『幽明録』「趙泰の冥土巡り」~泰山府君と仏陀

魏晋南北朝時代、「六朝志怪」と呼ばれる怪異小説が盛行しました。 その中から、南朝宋・劉義…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】「人は癖(へき)無かるべからず」~袁宏道評『癖顛小史』に見る…

一 「癖」について(一)「癖」の字義  「癖(へき)」字は、字書『玉篇』に「癖、食不消…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】陽明学左派の「狂」について

要旨  明代後期、王陽明によって掲げられた「狂」の精神は、陽明学左派の思想家たちによって…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】王陽明の「狂」について

要旨  明代後期の中国思想界において重要な位置を占める王陽明は、思想家として、講学者と…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】魏晋の「痴」の群像 

はじめに  魏晋は、中国の精神文化史において、極めて特異な時代である。南朝宋・劉義慶の…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】魏晋の「狂」の群像

はじめに  中国古代思想における「狂」には、大別すると「狂狷」と「佯狂」の二つの異なる系譜がある。   前者は、孔子が『論語』において「進取の気」として肯定的評価を与えたことに始まり、孟子がこれを祖述し、以後、連綿として明末の王陽明にまで受け継がれ、儒家的な精神文化の一側面を形成している。  後者は、殷王朝の末に狂気を装って紂王の暴政を逃れた箕子に始まるものであり、乱世を生き延びるための「明哲保身」の処世術として、知識人たちが古代から長く守り伝えてきた。  「狂」は

【中国の思想と文化】富貴の価値~野山の花か、花瓶の花か

「富貴名誉の道徳より来たる者は、山林中の花の如し」(『菜根譚』より) 儒家の語る「富」 …

泉聲悠韻
9か月前
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【中国の思想と文化】「玩物喪志」~「狂」「痴」「癖」の文人精神

はじめに  「玩物喪志」は、「物を玩(もてあそ)びて志を喪(うしな)う」と訓ずる。  「物」…

泉聲悠韻
9か月前
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【中国人の名前】「避諱」~犯すと怖い厄介な禁忌

中国人の名前  近代以前、中国では、一人の人間にいくつもの名前があった。  本名のこと…

泉聲悠韻
9か月前
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李白と杜甫の「狂」

はじめに  本稿は、中国の文人精神における「狂」の諸相を考察する上で、特に文学の領域か…

泉聲悠韻
9か月前
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