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Vtuberの定義とは? 〜「声優」「魂」「中の人」が報われた2020年11月19日@おめがレイ・虹河ラキ〜

はじめに

 おめがレイさん、ご出産おめでとうございます。

 虹河ラキさん、ご卒業おめでとうございます。

 偶然にも2020年11月19日(木)は「演者が実写出演し出産を発表する動画」と「Vtuberの卒業配信で声優が顔出し出演」という2つの出来事がほぼ同時に発生し、そのどちらについても多くのファンが祝福し、素直に祝福できなかったファンも配信を荒らすようなことはしない、優しい世界が現実に顕現した日となった。これを機会に、バーチャルYouTuber及びVtuberの定義や、Vtuberの実写動画について、Vtuberの中の人の実写出演についてなどを自分なりにまとめようと思った。



Vtuberの定義考察① キズナアイについて

 VtuberとはバーチャルYouTuberの略称である。Vtuberの定義は現在定まっていない(定まっていないからこそ考察するわけだが)。バーチャルYouTuberという言葉については、キズナアイが自己紹介動画で「私、実は2次元なんです!あれ?3Dだから3次元?ん〜、まあとりあえず、バーチャルってことで!バーチャルYouTuberって響き、カッコよくないですか?」と喋っているものが初出である。その他、キズナアイがユリイカで『「人間のみんなとは違うバーチャルな存在だよね、というわりと単純な考えで名乗り始めた言葉』とも語っている。あくまでキズナアイの名乗りであって、ジャンル名として誕生した言葉ではないことは覚えておきたい。

(キズナアイの初投稿動画。2016年12月1日、全てが始まった。)



Vtuberの定義考察② ばあちゃるについて


 キズナアイについては上述のとおりであり、バーチャルYouTuberという言葉の始まりを確認した。では、バーチャルYouTuberという言葉がジャンル名のようになった大きなきっかけは何か。私は、これについて「ばあちゃる」の存在が大きいと考えている。なぜなら、「バーチャルYouTuber」という言葉をキズナアイ以外で初めて堂々とチャンネル名で使用した存在だからである(ばあちゃるのチャンネル名→【世界初?!】男性バーチャルYouTuber ばあちゃる)。ちなみにばあちゃる以前にデビューしたシロは「電脳少女YouTuberシロ」を名乗っていた。

(初投稿動画のサムネで「僕がバーチャルYouTuberです」と記載があるばあちゃんさん。2017年8月9日投稿。)

 ばあちゃるはAIを自称しており、3Dモデルで動画投稿を行うバーチャルYouTuberであるので、一見するとキズナアイと大差ないように思える。しかし、ばあちゃるは普通に生身でスーツと馬の被り物を身につけた状態でイベントに参加したことがある。

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(https://panora.tokyo/57145/の記事から写真を引用)

 もはやばあちゃるはAI設定や3Dモデル云々を超越しているのだ。



Vtuberの定義考察③ キズナアイとばあちゃるの共通点

 ここまでキズナアイとばあちゃるについて確認した。最初にバーチャルYouTuberを名乗った者と、最初にバーチャルYouTuberをジャンル名に変えた者の共通点から、バーチャルYouTuberが何なのかを考えようと思う。AIか?いや、ばあちゃるがAI設定を貫いているとは思い難い。3Dか?いや、ばあちゃるは生身でも活動している。では、何か。

 それは、コラボ等を除いて「基本的に生身の人間の顔が見えない」こと。そして、「バーチャルYouTuberを名乗っている」こと。ここはばあちゃるですら一貫している。一時期、2DはVtuberじゃないとか、一枚絵だけだとVtuberじゃないとか、色々なことが言われていたが、例えばキズナアイ杯に参加できたメンバーを見るとだいたい何でもアリだと感じる。ただ、「基本的に生身の人間の顔が見えない」「バーチャルYouTuber(Vtuber)を名乗っていること」は共通していた(キズナアイ杯はバーチャルYouTuberのみが参加できた)。一旦、私はこれをVtuberの定義とする。

(キズナアイ杯予選ダイジェスト。予選の開催日は2018年7月20日。俺は道明寺を応援していた。面白かったね。)



Vtuberの実写動画について

 Vtuberの実写動画は荒れやすいと一般的に思われている(多分)。アニメを見ているときに突然実写演出が登場したら俺も驚くし、生身の人間なんて見たくないという層もたしかに存在している(まあアニメの実写演出もエヴァの旧劇とか無数の先例があるが…)。ただ、Vtuberの実写動画の歴史は古い。まずはVtuberの最古の実写動画を確認した。

 2016年12月22日にキズナアイが投稿したトレバ動画だ。多分、これが実写映像を用いた最初のVtuber動画である。とにかく実写を使うなという過激派は、2016年12月22日までタイムスリップして非難すれば、その後の歴史が変わるかもしれない。

 実写動画には色々なタイプがある。一番メジャーなタイプは「モニターに映るVtuberと生身の人間が会話する様子を撮影したもの」であり、ダウンタウンDXにキズナアイが出演したときや、Vtuberとファンが会話できるイベントも広義にはこれに含まれる(俺の基準です)。

(モニターに映るキズナアイと会話する生身の上坂すみれの動画。上坂すみれ、良いよね。)



 他には、中の人自身が普通に実写動画を撮影して投稿した(と思われる)ものもある。

(ホロライブの赤井はあとのはあちゃまクッキングシリーズ。めちゃくちゃ好き。)



 もはや本人が出演しているのかすらわからない実写動画もある。

(にじさんじの月ノ美兎の謎ノ美兎シリーズ。天才だ。)



 動画編集により生身の人間とVtuberが一緒に存在しているようなものもある。

(キズナアイのオリジナル曲、AIAIAI。生身の人間が踊り狂っており、苦手なオタクも多いらしい。もちろんファンは振り付けを完璧に覚えていると思うが。ちなみに、実写演出を含む中で最も再生数が多い動画が多分これ。)


(凄まじい再生数を誇るキッズバーチャルYouTuberのクマーバ。親が子守りのために無限ループで見せるのである。)


(Vtuber系のテレビ番組で最も成功していると思われるガリベンガーは、同じ次元に生身の人間とVtuberが存在しているように見える。)



 ちなみに、一番燃えた実写動画は恐らくキズナアイとホリエモンのコラボ企画である。ただ、実写かどうかというより、単にホリエモンを見たくない人が多かっただけという印象ではある。

(これからも全人類と繋がれるようにキズナアイには頑張ってほしい。)

 このような感じで(どんな感じだ)、Vtuberの実写動画はかなり多い。ただ、やはりVtuber自身が生身で出演する動画となると一気に数が減る。生身の動画が増えるなら、それはVtuberではなくYouTuberで良いだろうということにもなるし、そもそも設定を遵守するVtuberにとっては禁忌となることもある。



声優非公開Vtuberの覆面付き生身出演(おめがレイ)

(とりあえず、この動画を見ろ。そして祝え。)

 おめがレイが出産報告を生身で行った。顔は隠していたが、腕等は普通に見えていた。生身出演した理由は「嘘ついてる感じで罪悪感がある」「正直にこれからも視聴者さんと真剣に向き合うため」というもので、「賛否両論かもしれないけど」行ったものであった。



声優非公開Vtuberの顔出し生身出演(虹河ラキ)

(とりあえずこのアーカイブを見ろ。そして祝え。)

 虹河ラキの卒業配信にて、声優が生身で顔出しで自己紹介をした。理由は「声優とVtuberを繋ぎたい」という、運営からの提案だったとのこと。虹河ラキの卒業は、運営元の経営状況悪化によるものが大きいと推測されており、虹河ラキ自身は運営と一体のチームで活動を行えていたことが、このような配信が実現した要因だと考える。


俺はサンタクロースがいないことを知っている

 今回の結末は概ね祝福であった。おめがレイと虹河ラキの決断が優しく迎え入れられた理由は何だろうか。出演した理由が悪いものではなかったからか?それもあるだろう。ファンに優しい人が多かったからか?それもあるかもしれない。

 一番の理由はきっと、彼女らが頑張ってきたことを、ファンが知っているからだろう。彼女らが軽い気持ちでファンを困惑させるようなことをするわけがないと、ファンが一番知っているのである。優しいファンがいるのではなく、優しくしたいと思えるVtuberだったのだ。彼女らの活動は、キャラクターに頼らずとも、中の人として報われるほどに、ファンに届いていたのだ。

 Vtuberの中身は人間である。サンタクロースが実在しないことを、ファンはみんな知っている。それでもなおサンタクロースにプレゼントを願うことを楽しむ人がいる。サンタクロースがいないことを前提としてクリスマスを楽しむ人もいる。単に好みの問題であり、どちらの性格が悪いということはない。どちらが上で、どちらが正しいということもない(ただ、Vtuberに人外の夢を見ていたのに、それを壊されて、でもその悲しみをぐっと胸に秘められた人が、一番正しくて優しい人だと俺は思う)。

 Vtuberの魂が生身を出すことは、ファンの想像以上に勇気が必要なことだろう。虹河ラキの声優は、10回夢に見たと言っていた。それでも出演してくれるほど、ファンは、おめシスに、虹河ラキに、信用して貰えていたのだ。きっとわかってくれると。わかって貰えなくても、周りを傷つけるような人は少ないはずだと。

 それは、ワガママなのかもしれない。いきなり実写で生身の中の人を見せつけて受け入れて欲しいなんて、残酷だと思う人もいるかもしれない。

 ただ、これまで、沢山の幸せをひたむきに届けてくれて、ファンのわがままを受け入れてくれていたVtuberの、特大のわがままを、俺は受け入れたい。

 また、おめがシスターズの楽しい動画が投稿されることを俺は待っている。

 今後、虹河ラキを演じ切った声優の八木侑紀さんが活躍することを俺は楽しみにしている。


おわりに

 色々書いてきたが、おめがレイは顔を出さず、虹河ラキは顔を出したことが今回の大きな差異であると感じた。Vtuberを卒業する際に全てを晒した八木侑紀さんと、Vtuberを継続するおめがレイ。

 最初に書いた「基本的に生身の人間の顔が見えない」「Vtuberを名乗っている」という条件から、八木侑紀さんは卒業した。おめがレイは、条件を守っている。

 ぼんやり書いた定義ではあるが、案外当たっているのかもしれないな、と思った2020年11月20日だった。