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現代の“鬼”は相続の匂いで近づいてくる⁉

THE GOLD ONLINEの記事で、“地獄の相続手続き”という見出しが目に止まりました。

相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が実際に扱った事例を紹介しています。

相続実務士とは、相続対策のアドバイスができる認定資格。

この事例は、40代の専業主夫のもとに兄からかかってきた電話が発端になっています。

その内容は、実母の相続というもの。この実母については、相談者が0歳、電話を掛けてきた兄が2歳のときに死別されているとのこと。

相続というのが、実母の祖母名義の土地に関するもので、その遺産分割協議の相談でした。

このあたりまでなら、「もしかして宝くじ当選的な話かも!」なんて喜んでいられるかもしれないのですが、ことは深刻でした。
被相続人の実母の祖母から相続人を調べた家系図が送られてくると、なんと36人もの人が関係していることが判明。そして、対象となる土地というのがわずか5坪だというのです。

ただし、5坪の土地があるのは都内の一等地で、どうやらいざこざに巻き込まれるような条件がそろっていそうだったとか。

電話を掛けてきた兄は叔父という人と話し合っていて、そうした係争に発展しそうなために相続を諦めて欲しいという打診があったそうです。

相談者もトラブルに巻き込まれたくないので、相続放棄をすることに決めようとしたのですが……。

曽根氏の提携先の司法書士から、この件についての相続放棄には、以下のハードルがあるという意見が出てきました。

①相続放棄するには、亡母の戸籍を全部集めて、家庭裁判所に申述することになる。しかし、亡母の戸籍を集めるにも時間と費用がかかり、家庭裁判所への書類の提出にも手間がかかる。
②自分で手続きすれば費用は抑えられるが、司法書士や弁護士に手続きを依頼すると、それなりに費用がかかる。

https://gentosha-go.com/articles/-/52429

相続放棄というのは、相続が発生した際に、相続財産となる資産や房らなどの権利や義務の一切を引き継がずに放棄するものです。

相続放棄を請託することで権利も義務も受け継がずにするのですが、それには「亡くなったことを知ったときから3ヵ月以内に相続放棄をすべきか否かを家庭裁判所へ申述」する必要があります。

この記事のケースでも、相談者は連絡を受けたときに相続資産のある実母の祖母の死を知ったことになるわけですが、問題は家庭裁判所への申述手続きのために実母関連の戸籍などを集めなければならない部分なのです。

代襲相続になっているわけなので、相談者が相続の対象者であることを書類によって証明しなければならないわけですね。

これらを自分でやるのであれば費用が抑えられますが、あちこちの行政機関に出向いて戸籍などを取得しなければならず、そう考えると意外に費用がかかるかもしれませんし、なによりも時間はかかってしまいます。

そこで相続実務士の立場から提案したのが、「相続分の譲渡」という方法でした。

相続分を特定の相続人(この場合は叔父)に譲渡する旨を記した「譲渡証書」を作成、署名押印して、印鑑証明書と戸籍謄本を添付すれば手続き終了となるようです。

問題は、この話を相談者とその兄にもってきた「叔父」を信用できるのか、というところ。

印鑑証明書と押印された証書を預けるので、心配するのも当然かもしれません。

トラブルのリスクを避けるには、送付先を相手方の担当の司法書士宛にする方法が確実とのこと。

この手続きによって、相談者はなんとか面倒に巻き込まれずに済んだようです。

近い親等が亡くなっていると、相続は関係ないように思いがちですが、遡って降りかかってくることも珍しくないことを、この事例は教えてくれます。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化されるのに伴って、こうした遡った相続の処理も一時的に増えるかもしれません。

いつ我が身に降りかかるのかもわからない過去の亡霊、鬼のような存在の相続もあるということを、記憶の隅にでも留めておいたほうがいいのではないでしょうか。


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