あくのあじ

藍の乾燥葉に、冬の間、水を振りかけ、ひとまとめにしておくと、発熱し、発酵する。そうして出来たものを、スクモという。藍建てを始めてから、そこに、毎日灰汁を加えて混ぜて行っている。藍踏みの次の日は、そのまま一日置いた。
灰汁を足していくと、スクモは広々と膨らみ続け、まだまだ液相と固相に分かれそうにない。今日で5日目になるのか。ゆっくりと灰汁を増やしていくのがいいそうなのだが、それは何故だろう?微生物が、生まれてふえて行っているということなのだろう。傍らの時間に、雪は降り、薪は燃え、藍がふえていく。暮らしというのは、からくりで満たせる。流れる温度、景色、寒さ、星、窓。藍建ては静かだ。お酒のように、発泡する音は聞こえない。匂いは、枯葉の下のにおいと大玉の人たちは言っていた。灰汁、臭いはない。スプーンひとさじ舐めてみた。ベロにチクチクと刺激があり、苦く、少し魚介のにおいがした気がするけど、ベロが溶けているだけかもしれない。こんな中で、藍の中にいる菌は増えるのかと、隣人の変わりっぷりにあきれる。理解を越えたところにいる気がするこのヒトたちは、ゆっくり広がりたいんだろうか。微生物の密度分布の整いに思いを巡らす。

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