回遊する

回遊するヒト 
高山建築学校2020夏ステートメント

 モノをつくることは、素材が手に入り、手から離れるまでの時間を言う。いのちや、たましい、ことばの行き来するせかいの話。常にむかhし話にならない今話である。高山建築学校は、年に十日間の手で考えるモノ作りの建築の私塾である。
 原発事故が九年前に起きた。視座として、モノが息する様を表す「回遊する」を見つけた。
 東日本大地震以降、縁のできた大玉という村で、宝永年間(1704-1711わずか八年間) にできた石の祠を直したことがある。コモレビが、七色に光る場所にあった。そこからは、里と山が見えた。川べりの畑の中には、白色に塗られた鋼板で囲まれた土地も見える。そこでは、オレンジ色した腕の、黒いキャタピラの付いた重機が、集落の家々の庭から集めた放射性の汚染土が入った、黒いフレコンバックをぶら下げていた。
 栃木で会った竹の職人さんは自身の世紀を回想し、「段ボールとプラスチックに籠は、とってかわられた」と言っていた。火も電気に取って代わられ、人のいる時間も、陽の下よりも、電気の下の方が長くなっているかもしれない。
 「生活はしやすくなったかもしれないが、暮らしにくくなった」と永六輔は、職人の言葉を書き留めた(『職人』岩波 1991)。話は、路上が、在地のヒトの仕事する場所や、たむろする場所から、車の走る道路へと変わったことにも触れている。問題はある。物流をガソリンや電気にまかせっきりというのが、核心だ。モノを運ぶのは、カゴとヒトを必要とする。近代の社会システムのほころびをつくろおう。仲間がいる。みみをすましてボディランゲージ。
 今年、大玉村での藍の種まきは五回目を迎える。季節とともに、藍でモノを作る。回遊する場所、回遊するヒトタチ。鮭やくじらや樹木のように少しづつ大きくなる。四季に二十四節をきく。
 宝永年間、南海トラフ地震が起き、それは「日本」史上最大のものと言われ、富士山も噴火し、浅間山が三回噴火し、阿蘇山、桜島、霧島連山での噴火が起きるという時代であった。「どうか無事に」という思いの祠が石とともに回遊している。その思いは、今和次郎が『働く人の家』(相模書房1947)の中で書き留めた「ゆっくり定住したい気持ち」と相同であり、季節や、ヒトや、モノが、定点を回遊させる。
 豪雪、豪雨、台風といった気候に、建築はこたえる。地震史のタイムスケールを建築に持ち込む。モデリングとドローイングの二地点を回遊し、1/1のからだでつくる。町と里を繋ぐ道に泳ぐモノを作る。
 建築家、野心家、心配家、デザインを志す人、同時代のヒト、この夏、高山建築学校で、手で考え、命の世界を測り、うちゅうのように、おどり泳ぎ話し、寝、食い、縫い、眺め、聴き、拭き、絞り、洗い、笑い、回遊しよう。

ところで、薪ストーブのそばに落ちていた回遊するって言葉は誰のだ?

モノや想像をととのえること。せかいは、とっちらかろうとする。それをととのえることは、せかいに触れる。

はやしごうへい
高山建築学校10年生くらい

以下、インフォメーションです。
【会期】本日程 2020年8月10‐20日(9日準備、21日掃除)
【場所】〒509-4201 岐阜県 飛騨市古川町中数河1792 高山建築学校
【定員】35名 申し込みは、意気込みを沿えてtass20xx@yahoo.co.jp
            7月7日に確定の連絡を致します。
【事前説明会】5,6,7月の第一土曜14時から蟻鱒鳶ル
【参加費】4万円 口座振込(未定)、事前説明会、本日程期間に支払可能
【形式】モノを作る。
  全日、90分の授業(ないし、ワークショップ)が一度
  全員、中間発表と最終講評に参加
【講師】未定

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