COD MW3(2023) 先行プレイキャンペーン総評(独断と偏見&EDまでのネタバレあり)


初めに

 本記事は、COD MW3(2023)を正式発売日よりも早くEDまでキャンペーンを遊び、思ったこと感じたことを書いている記事である。
 ある程度の濁しによるネタバレ回避は極力行うが、内容を語ること自体がネタバレになるため、本記事を読まれる方はキャンペーンのネタバレに留意していただきたい。

 10月某日、私はMW3(2023)のデラックスエディションを購入した。11月某日。CODのことなんてすっかり忘れてブリズコンを眺めていた。主にオーバーウォッチに関する情報を収集するために。
 ふとbattle.netを起動すると、CODのキャンペーンの早期プレイに関するニュースが流れていた。私は慌てて80GBもの容量をSSDにインストールし、期待と楽しみを胸に秘めながらキャンペーンを遊び始めた。

期待の先にあるもの

 壮大なオープニング。どこかオリジナルで見覚えのあるステージ。見覚えのある内装。オマージュ。期待しかなかった。展開も先が気になって仕方がなかった。時期的にもあわてんぼうすぎるサンタさんがくれた贈り物だと思っていた。しかしプレゼントの蓋を開けてみれば、頼んだ覚えのない品々がズラリと並んでいたのだ。

  • 求めてもいない大幅なオンラインマルチシステムの逆輸入

  • 1人で歩き回らされる少し広いマップ

  • 無線越しにだけ感じ取れる味方の存在

  • 目的地に行ってミッションを達成。その後帰宅、というワンパターンミッション

  • ムービーで重要ストーリーが進むため、世界観やキャラに没入できない

……等々、出るわ出るわネガティブな感想が、といったところである。順に細かく説明していこう。

ウェポンズフリー

 本作では、基本的にウェポンズフリー(自由交戦規程)というモードで遊んでいくことになる。このモードが本当に劣悪で、上記のネガティブな感想をすべて内包しているのである。
 まずムービーで「ここに脅威があるから排除してこい」といった感じのことを言われ、ゲームが始まる。2人以上で行動する話をしているため味方も付いてくるかと思いきや、離れたところで観測しているだけのため基本的には1人で敵地に侵入することになる。
 いや現場で一緒に戦闘しろよ、という感情を押し殺しつつ、最低限の装備を持って戦場に足を踏み入れる。少し探索すると、ジップラインを見つけることができる。それを使おうとするとなんと昇降機が必要だと言われる。いやそれも持って来いよ特殊部隊。なんで現地で調達するんだよ。ていうか過去作とかでは普通に持ってただろなんで持ってないんだ。
 失礼、本題に戻ろう。ここからオンライン要素が所狭しと襲ってくるのである。

 まずはマップを開き、どこに行くべきかを知る。暴れることも可能だが、ムービーや状況的にもステルスで行けと強く指示されるため、なるべく隠れて進んでいくことになる。
 フィールドには武器やアイテムが出てくるオレンジ箱があり、この箱から武器を見つけると、大きな箱のロードアウト呼び出しから自由に取り出せるようになる。なぜか武器を現地で見つけたら現地になぜかある箱でなぜか見つけた武器だけ取り出せるという、謎しかない要素だがまあヨシとしよう。
 ほかにもキルストリーク(倒されずに連続キルすると呼び出せるものたち)やWARZONEに存在するアイテムがフィールド上に存在する。
 これらを駆使してミッションをこなし、脅威を排除して帰る。するとムービーでストーリーが進む。

 文章で纏めるとたったそれだけだが、実際にプレイするとこれが大きく違和感どころではないものを感じるのだ。
 というのも過去作ではプレイを通じて登場キャラたちのまさに生死を分ける戦いを肌で感じられるような没入感を出していたのだ。とくにMW1(2019)ではプレイアブルキャラが抱く怒りは私たちプレイヤーも強く抱くものになるなど、その世界に自然と体が入り込んでいく。
 だがこのウェポンズフリーモードでは、そういった没入感が一切存在しない。なぜならば、ぶっちゃけると操作キャラなど誰でも良いからだ。一応会話はするためそのキャラにはなるが、やっていることは「ただミッションをこなすだけ」。道中やその会話に深いストーリーも存在しなければカタルシスも存在しない。ただ言われたことをやって言われた通りやっただけである。ストーリー的なアクシデントもなく。何をどう没入しろと言うのだろうか。

繰り返し

 また、ミッション内容も似たり寄ったりなのが世界からプレイヤーが切り離されるのを加速させる。そう、ウェポンズフリーモードは1、2個だけではなく、過半数を占めると言っていいほどのメイン要素となっているのだ。
 Aを解決したらムービー中にBが判明したからBを解決してこい。これを繰り返すだけなのである。ステージやキャラこそ違えど、やることやその内容はほぼ変わりない。ミッションをこなして帰るだけである。これでは没入しろという方が無理だろう。なにせ登場キャラたちの緊迫感はプレイ中には一切存在しないからだ。ステルスに失敗してバレた!などのプレイとしての緊張はあるだろうが、ただそれだけである。ストーリーとしての緊迫感などこれっぽっちも存在しない。
 一応、合間にウェポンズフリーではないミッションもあるが、短くて少ない。だが、本来遊びたいのはこういったキャンペーンなのだと実感させる。
 さらに、この短いミッションでストーリーが大きく進むため、ウェポンズフリーは本当にお遊びなのだという考えがより大きく浮かび上がってしまう。

薄っぺらいストーリー

 ウェポンズフリーのミッションが多いため、結果としてストーリーはほとんど進まない。
 悪役のマカロフがなんかするから阻止しようをウェポンズフリーで繰り返し、合間の通常のミッションで話が進む。これでどんな深いストーリーを体験しろというのか。
 現に最後まで阻止を繰り返しているだけである。そして最後にちょろっとマカロフが出てきて負傷させ、メインキャラの1人が死んで弔う。最後にちょろっと出てきてあっさりメインキャラが死んで、何を感じろというのだろうか。それまで同じことをしていただけだというのに。そしてこの展開、なんと最終ミッションなのである。
 メインキャラがただ死に、でも悪役は倒せないままスタッフロールに入るのはあまりにもユーザーを置き去りにし過ぎではないだろうか。最後に悪役をその手で倒し、それまでのフラストレーションや死んでいった仲間の復讐を果たすことによって得られるカタルシスで物語を締めくくるべきだというのに、中途半端も中途半端、起承転結の承で終わられて何を得ろというのだろうか。しかもMW1やMW2で死んだはずのキャラはしれっと生きているのにメインキャラだけはハッキリと殺して。
 映画だって中途半端に終わられては腹が立つだろう。全てを揺るがす大きな悪はまだ残っているが、目の前にある小さくはない大きな悪をぶちのめして束の間の平和を享受する。ただそれだけでも区切りはつくし、次回はどうなるんだろうなという期待も持てる。だがこれは、区切りなどついていない。
 物語と呼ぶには、あまりにもお粗末すぎる。

総評

 キャンペーンを目的として遊ぶには余りにも出来が悪すぎる。そう評価せざるを得ないだろう。グラフィックの良さなどこの際どうでもよい。
 自由に遊べることを良い事とする人もいるし、理解も出来るが、それはストーリーではなくただ自由に遊べる点が良いというだけだと私は思う。
 自由に遊べるゲームなんていくらでもある。世はオープンワールド時代だ。だからこそCODは1本道の濃厚な演出と熱いストーリーで差を付けていたのではないだろうか。自由に遊べたところで自由に遊んだ結果がストーリーに左右するわけではない。薄い演出と寒いストーリー展開を見せられて、それでもまだ自由に戦えと同じことを繰り返させられる。こんなので何を楽しめ期待しろというのだ。その自由は良い自由ではない。繰り返し遊ぶ魅力にはならない。

 本作は、ストーリーをぶつ切りで終わらせ、同じことをユーザーに繰り返させ、なおかつ全体が短いという、最悪の作品であったと言わせしめるほどの出来であった。キャンペーンを求めて購入される方は心した方がよい。

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