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この気候のせいで、花粉症の薬を煎じて飲んでいます。症状が重かったので、調子に乗ってかなり多めに飲んでみたところ、昨日はなかなか寝付くことができず布団の中でずっともぞもぞしていました・・・。

漢方薬には副作用がない、と思われている方も多いですがそんなに都合がいいことはありません。やはり正しく使わなければりっぱに副作用も出るものです。

今からおよそ30年ほど前に小柴胡湯という薬の副作用間質性肺炎が話題になりました。漢方薬の保険適応が広まり、知識が不十分な医師が漢方薬を使い出した頃ではないでしょうか。小柴胡湯の副作用は西洋薬と比べれば頻度としては低いものの、死亡者もでたので当時かなり衝撃を与えました。

小柴胡湯は多くの漢方方剤の基本となる歴史の古い重要な方剤です。この小柴胡湯が副作用の発現でやり玉にあがってしまった背景は、先ほども述べたように処方側の勉強不足があったのではないかと考えられます。小柴胡湯は体内の熱(炎症)を肺から体外へ放出するものです。無理な使用法で放出するはずの熱がそのまま肺で炎症を起こしてしまったのではないでしょうか。

他にも漢方の副作用と言えば甘草が有名です。甘草の副作用は偽アルドステロン症と呼ばれ、むくみや血圧上昇を引き起こします。甘草は体に元気を与える補気作用や痛みを和らげる鎮痙・鎮痛作用があり、漢方方剤全体の3/4に含まれると言われています。そのため安易に複数方剤併用すると簡単にオーバードーズになってしまいます。

しかも甘草の副作用の背景はもう少し多くの事情が重なっています。甘草の有効成分はグリチルリチンと呼ばれます。このグリチルリチンが通常は速やかに行われるコルチゾールからコルチゾンの変換を邪魔するためです。コルチゾールにはアルドステロンなどの鉱質コルチコイドと同じ作用があり、ナトリウムの再吸収を促進、反対にカリウムの排泄を促進し、血中のミネラルバランスを崩します。変換を阻害され濃度が増したコルチゾールが悪さをするというわけです。

グリチルリチン・・・効いたことはありませんか?グリチルリチンは実はカロリーは少ないにもかかわらず砂糖の50倍の甘さ。漢方薬を飲んで、意外と甘い!というのはこの甘草のおかげです。これを利用し、様々な食品に甘味料として添加されています。つまり、漢方薬以外からも摂取が多くなっているということです。また、現代の食生活がナトリウム過多になっていることも副作用の発現を後押ししています。

甘草による副作用はミネラルバランスの乱れによる水の停滞です。五苓散のような利水剤を適切に使えばなんなく改善します。

また、かの有名な葛根湯も胃腸への負担、睡眠の質の低下、年配者では心臓への負担も注意が必要です。手軽に使われていますが、長期の使用はやはり専門家の指示をきちんとうけないと心配です。

漢方薬もまた西洋薬と同様、体にインパクトを与えるものですから、その特徴をしっかり掴んで使用しなければ思わぬ弊害も出てしまいます。副作用がない・・・と思われてきたのは今の漢方薬が効果も薄い質が悪いものである、というのもあるのかもしれません。

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