カウンセラーが語るモラルハラスメントを読んで

カウンセラーが語るモラルハラスメントという本を読んだので、感想を。やや文章が冗長なところもあるが、被害者目線に立って、感情に寄り添って書かれている本だと感じた。また、モラルハラスメントとは何か、具体的にわかりやすく書かれている。

以下、要約

はじめに

モラルハラスメントとは、心理的な支配関係に基づいた暴力である。夫があなたをからかう時、彼は快感を得ている。彼はあなたを支配し、自分のためにあなたがいると思っている。日々の操作的で支配的なやりとりの積み重ねで、支配関係が生まれていく。

被害者は、「暴力ではない」と思い込もうとするが、心は確実に傷を負っていく。そして、傷は積み重なっていく。

モラハラを知る

夫婦間であっても、暴力は犯罪。モラハラとは、精神的な暴力であり、モラハラが起きている家庭には、常に緊張と不安が生み出される。そのような家庭は、加害者中心の世界だ。加害者は、加害者が何もかも決め、彼のイメージ通りに物事が運ばれるべきと考えている。

モラハラパーソナリティの特性

彼らは、パートナーがこの世に生を受け、その人の人生を歩んでいること、支援し合う関係であると思えない人である。パートナーの価値観を無視する。

彼らは自己中心性を持っている。自己中心性とは、自分都合の考えという意味ではなく、自分とは異なった視点があることを知らず、すべてを自分中心の視点からしか認知・判断できない性質のことを言う。幼児はそのような性質を有しており、成長するにつれて、解消されて行く。

彼らは、モラハラに依存している。モラハラによって、自分の心の問題に向き合うことが避けられるからだ。

彼らはプライドが高い。自尊心が過剰に膨らんでいると言って良い。自尊心とは、良いところ、悪いところも含めて、ありのままの自分を認める心をいう。自尊心が低いと、自分を否定する感情が高まり、他者への依存傾向が強くなる。自尊心が過剰に高いと、根拠なしに自分をすごいと思う。肥大した自我イメージを周囲に認めてもらおうと、現実を無視して、虚勢をはるのである。具体的には、失敗しても事実を認めない、他者に責任転嫁、あるべき自分のイメージにとらわれ、そう信じることができるような材料で周りを固めようとする。

モラハラという攻撃

彼らは突然不機嫌になる。そして、不機嫌・怒りの理由を話し合おうとしても応じない。彼らに、合理的な理由はなく、問題を明確にしない方が都合が良いからである。

彼らは(無意識であることもあるが)マインドコントロールをしてくる。被害者に、自らの価値観・世界観・生き方を押し付ける。一つ一つの行動はたわいもないことが多いが、積み重ねることで、被害者を支配下に置いてコントロールしようとする。

彼らが不機嫌になるとき、理由はない。彼らは以下のプロセスを通じて、支配を試みる。まず小さなきっかけを見つけて、ため息をついたり、不機嫌な表情をすることで、被害者を不安にさせる。被害者をそっとしておいても、不機嫌は治らない(気分によって引き起こされた不機嫌ではなく、意図的なものであるからだ)。不機嫌の理由を聞いても、「考えろ」と言ってくる。理由がわからない被害者は自信をなくす。こうして、被害者は彼らの感情に敏感になり、支配されていくようになる。

彼らは、「釣った魚にギリギリの餌を与える」。相手が我慢の限界に近くなったら、優しくする。支配対象を失うことは、彼にとっても損失であるからだ。

モラハラを受け続けた被害者は、徐々に自尊心と自信をなくしていく。そして、被害者は徐々に周りに自分のことを話せなくなる。パートナーに対する否定意見を他者から聞くと、自分の中にある不信感を確信してしまうから避けるということもあるし、働くことや出かけることを制限されるということもある。こうして、彼らは疲れ果てていく。

モラハラの連鎖

モラハラは加害者から被害者に連鎖していく。モラハラを被害者が「学習」して、被害者が他の人にモラハラを行なってしまうのだ。

モラハラ家庭で育った子供は、親子の関係を見て、「相手に思い通りに行動してもらうには、こんな方法もあるのだ」と学習する。こうして、彼らは他者と、支配的な関係を築こうとする。

また、被害者として学習する子供も出てくる。その場合、少しでも自分に非があれば我慢するような子になる。

彼らはそれなりに自我を持ち、意見を述べられるような年代になると、加害親のおかしさに気づき、徹底的に嫌ったり批判的な態度を示すことも多い。

モラハラパーソナリティは変われるか

本人が変わろうとしない限り、不可能である。

被害者の加害者化

被害者は、代替行動にのめり込むことがある。代替行動とは、欲求を別の形で満たすことを指す。

彼らは他の被害者に過剰に関わり、他の被害者をコントロールしようとする。自分ができなかったことを被害者にさせようとするのだ。これは、被害者自身のためではなく、自分のための行動である。被害者は、他の人を支援する際に、そのような行為に走る危険があることに自覚的にある必要がある。

問題の解決方法や生き方は、その人自身が見つけていかないといけない。自分でたどり着いた答え出なければ、後々自分の選択が正しかったのかという不安を抱くようになる。そして、加害者の元に戻ってしまうというケースもある。

被害者が、支援者であるあなたの言葉や指示に従わない場合。もし、あなたが腹を立てたのであれば、それはあなたが相手をコントロールする快感を得ようとしているからだ。

モラハラ加害者とは離れるしかない?

まず離れることが大切である。別居できるならベストだが、実家帰り、旅行など、加害者の影響を受けない空間であれば、どのようなところでも構わない。もし、離れられない理由があなたにあるなら、それを明らかにすること。

加害者は、あなたが離れようとするとき、罪悪感を煽る・離婚に猛烈に反対してくるなどの攻撃をしてくる可能性が高い。そのことを認識しておくこと。

第3者の介入

あなたが被害者の親である場合。

被害者は、あなたに幸せアピールする時期がある。彼らは、そのエピソードにしがみついているのだ。被害者が、全てを親に話すときは、彼らの精神に限界が来たとき、または自分なりに答えが出たときである。

あなたは、違和感を抱いてもただただ話を聞いてあげることが大切である。たしなめず、相手の悪口や擁護もしない。答えを出すのは、本人であり、解決策を求めているとも限らない。本人がどうするかを決めなければ、後になってやってくる迷いの時期に、後悔が生まれる可能性がある。

例えば、ある被害者は加害者のことを親に話したところ、「そんな相手とは離婚していいよ」といわれた。被害者は、結婚生活を続けたいと当時思っていたので、「これ以上、親に話してはいけない」とおもった。このように、一方的な親切心が効果を生まないこともある。

周囲の関わり方

被害者が自分の状況を話すとき、親や第3者が必要以上の世話を焼くと、彼らは自分の心を見つけられなくなる。

例えば、モラハラを知らない被害者に、「モラハラされているわよ!」と言い切るのは、その人のためにならない。そういう場合、もどかしくても、ゆっくりとヒントを与えて、本人に気づいてもらう必要がある。

被害者は、モラハラの影響で、他人に強く言われたことを拒否できない癖があることを頭に入れること。

加えて、指導的なアドバイスは避けること。指導的なアドバイスを通じて、モラハラそのものが解決したとしても、依存の対象が変わるだけである。解決を急ぎすぎると、相手の心理段階を無視して、指導的になってしまう。

では、どうすれば良いのかというと、参考資料を提供するということ。すぐに使われなくても、後で被害者の役に立つこともある。

また、「あなたにも改めるべき点があるのではないか」という助言は、かなりまずい。被害者の「自分のせい」という心理を深くさせてしまうからだ。

感想

私の家庭では、いわゆるモラルハラスメントが起きていると感じている。もっとも、程度はもう少しマシだと考えているが、根底にあるのは支配関係ではないかと考えている。

この本を読んで、私も被害親への関わり方を考えさせられた。自分の"復讐"に利用するのではなく、彼女の心のうちをまずはしっかりと聴きたい。私の行動が、代替行動になる可能性もある。彼女の感情に寄り添うことがまず大切であると学んだ。

そして、解決は彼ら自身が行う必要があることを頭に入れておかなくてはいけない。そうでないと、持続はしないからである。自分の感情に囚われて、短期的な解決を目指すのではなく(それは自分自身の欲求)、まず彼らがどうしたいのか。話はそこからだ。

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