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異端が先端を創る。アーティスト思考。

 今から約7年前。とあるアーティストとの出会いで今後のビジネスにおいては「アーティストの思考力&行動力」に近いチカラが必要であると確信し、ゲラとしてまとめていたものを少しアレンジしてお伝えしていきます。

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2011年7月11日――。
日本に大きな衝撃が走った。
時代の歌姫、ファッションリーダーであるレディ・ガガが日本に来日し、「ミュージックステーション」「徹子の部屋」初出演したのだ。
 彼女のファッションは2020年になった今でも多くの世界観を広げている。当時そのファッションの中でも一際目を引いたのが、高い背の靴。ヒールのないハイヒールのような履物だった。
ガガは番組の中で、「どうしてもこの靴を履いて出たかった」
と言っている。
 後に「ヒールレスシューズ」と名付けられ、世界中のセレブたちに広まっていったあの靴である。
 そしてそのファッションアイテムを創り出したのが、日本人アーティスト「舘鼻則孝」である。
 近年、ここまで世界的注目を浴びた日本人アーティストは多くない。舘鼻氏との出会いはとある企業様のビジネスプランニングをコンサルティングしているときだ。舘鼻氏は違うセッションでアイデンティティに関する講話していた。その打ち上げの席で挨拶したのがきっかけとなり、その後、継続的に仕事でご一緒させていただいている。
 彼と話をしていると実におもしろい。深い。感性の塊である。そしてとても論理的なのである。まさに、彼は理論的感受性の生みの親だと感じた。
 それからというもの、私はこの舘鼻則孝氏というアーティストに強烈に興味を持つようになり、アートに関しても勉強するようになった。

「彼はいかにして世界的アーティストになったのか?」
「その戦略とはどういったものなのか?」
「そして、世界中のセレブたちを魅了する、あのフォルムはどうやって生まれたのか?」
「多くの人を魅了する感性を創りだす背景とそれを支える論理性は一体なんなのか?」
 それらを体系立ててひも解くことは、今後の日本における創造性躍進と戦略性強化のヒントになると確信し、彼の思考、技術、行動をぜひとも多くのビジネスパーソンにも伝えてほしいと頼みこんだ。
 現在、彼は企業での研修や講演を通じて、多くのビジネスパーソンにも新しい思考や発想のきっかけを与えている。芸術や近代美術界以外でも大きな注目を浴びている。
 先鋭的なフォルムを生み出す舘鼻則孝氏がアートを通じて伝えたいメッセージは、「日本文化の再構築」である。
 私は、舘鼻則孝氏を始めとする世界的なアーティストが生み出す、新しく、それでいて文化的背景を持ったアート作品群の背景と発想の思考をひも解き、現代日本に求められる創造性と戦略性の再構築には何が必要なのかを考えてみたい。
 日本企業が、いや日本が世界で広く認められるためには、過去をひも解き、現代を読み取り、本質を伝えていくために、自分たちの存在を再構築していく必要があるのではないかと強く感じている。
 2020年4月現在、世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により大混乱の渦にある。正しく恐れることと正しく未来を見据えていく必要があるだろう。以前のような世界に戻ることを期待することも必要かもしれないが、新たな制約によって生み出される創造性を基にこれまでの概念の再構築が必要となる。 
 こういった状況だからと「未来が見えない」「夢が持てない」というネガティブな発想ばかりが目立ちすぎてはいけない。
 健全な「危機意識」を持つことはもちろん重要である。「危機意識」から「当事者意識」は生まれる。しかし、「危機意識」と「諦め」はまるで違う。これから未来を担う若手までもが、まるで「諦め」のような意識や言葉、雰囲気だけは出してほしくない。
 仕事の現場では社員は皆、汗水を流し、自社の利益維持のために頑張っている。決して怠けているわけではない。むしろ30年前よりも忙しいくらいだ。「そもそも変革とは何か?」「何が変われば新しいと認識されるのか?」――その議論も乏しいままに「変革」という言葉だけが独り歩きしているようにも感じる。
 もしかしたら、ネガティブな発想を持ち、若手にその思想を植え付けているのは、バブルを経験し、過去の成功体験を払拭できずに、これまでの延長線上だけでしか将来を想像できない一部の人間だけなのかもしれない。
「栄枯盛衰は世の習い」であるならば、変えずに伝承すべき本質を見極め、時流を捉えて今を読み解き、未来に向けてすべきことを柔軟に創り変えていく発想が必要なのではないかという考えに至る。

 かつて、ソニーの共同創業者である井深大氏はこう語っている。
 「未来を推測する予測するということはあんまり意味ないんじゃなかろうかと。それよりも未来っていうのは、それをやろうという人が自分自身で創りだすことに一番意味があるのではなかろうか。新しいフィールドであるとか、新しいマーケットであるとか、新しい分野であるとか、あるいはもっと大きな世界ってものを自分達が創りだしていくんだという、そういう気構えってのが創造性にとっては一番貴重なことではないかと思うわけです」と。

 敗戦後、made in Japan は「安かろう・悪かろう」の代名詞だった。その時代に、「安かろう・悪かろう」というイメージの払拭に全力を傾けて、日本全体のモノづくりや技術を世界標準にしていくために、自分たちが未来を創っていくんだという気概を感じる言葉である。
誰もやったことがないものならば、リスクだって想像上のものでしかない。やってみなければわからないという行動への執念さえ感じられる。
 戦前と戦後では、日本の状況は様変わりしていただろう。その状況下に置いて、誰もが見たことのない未来を自らの手で創るためには、既存の理論に頼るよりも自分の感性を信じ、これまでの経験に頼るのではなく、新しい発想を創り出し、顧客の心に響く新しい未来を創ることにこだわることが重要なのだというメッセージとも受け取れる。
 アフターコロナも様変わりしているだろう。未来は創るものである。 
 サイエンス(理論、分析)偏重だけでは限界があり、クラフト(経験)偏重でも過去の経験が通用しない激動の時代には、改めてアート(感性・創造性)を磨きあげることの重要性は多く伝えられるようになってきた。だからこそ、概念だけではなく今の時代に合致した思考と技術と行動を再構築するための具体的な方法を考えていく必要があるのではないか。
このアーティスト思考の大きな論点は
「世界的アーティストが持つ、問いの立て方と解決策への導き」
である。

「はじめは異端かもしれない。しかしいずれ先端になる」これが新しい世界感を創っていく。

 どのような構造で分解していくとわかりやすいのかは、まだ整理中ではあるが、一旦下記のように分けて整理していきたい。
1:「自分概念の分解と理解」=「アイデンティティ」を明確にして
   発想の軸を創る
2:「時流に問題を提起する」=「コンテンポラリー」を知り疑問を
   提示する
3:「本質価値に絞り込む」=「ミニマル」で無駄のない存在を創る

 これから、「再構築」を探求し、自らの未来と日本の未来を作り上げていくためのノートとしたい。

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