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【物語の現場028】吉之助が工夫した掛け軸の「中回し」とは?

「狩野岑信」の第二十二章で、吉之助が自作の富士図に施した表装について書きました。掛け軸については、表具も重要な見どころ。作品に合った表具は画を引き立てます。また、使われている裂やその文様に作者や所有者のメッセージが隠されていることもよくあります。

 今回、吉之助は、中回しに御前様の祖父ゆかりの名物裂を用いて褒められました。では、「中回し」とは、どこの部分でしょうか。

 ご承知の方も多いと思いますが、今後もいろいろ出てくると思うので、ここで掛け軸の部位についてまとめて説明しておきましょう。

 と言っても、上の図の通り。

「中回し」は、大ぶりな花唐草文の入った濃い青色の部分。ただ、更に細分化し、本紙の上下の部分だけを「中回し」とし、両サイドを「柱」と呼ぶ場合もあります。
 また、他の部位についても別な呼称、細かい区分等あると思いますが、大まかなところさえ押さえておけば十分でしょう。

 ちなみに、この富士図(自己所蔵)は、正に粉本通り、駿河(静岡県)側から見た富士山。作者は、「融女寛好」に登場する奥絵師・狩野伊川院栄信。


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