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君はもう『柳生連也武芸帖』を読んだか。

本邦では「ナチス」「ゾンビ」以上に創作界隈でフリー素材と化している感のあるアイコンこと「柳生」。しかし皆様、柳生についてはどの程度御存じなのでしょうか。お前の柳生深度はどの程度だって聞いてんだよ。

昨今の柳生宗矩は魔界転生してツインテールになったり、沢庵和尚とのエピソードに焦点が当てられてかなりファンキーな好々爺の面がフィーチャーされています。本稿では「柳生」について手っ取り早く学べる最良のテキスト、とみ新蔵先生の『柳生連也武芸帖』(リイド社)を御紹介します。

※おことわり
 本稿はあくまでとみ新蔵先生の『柳生連也武芸帖』を紹介するためのものであり、史実の柳生一族と乖離があることは否めませんので御了承ください。

『柳生連也武芸帖』は、若くして柳生の印可を受けた柳生厳包こと連也が18歳の頃、尾張藩二代藩主の徳川光友に剣術指南役として就任した日から話は始まります。体格に恵まれ、実践剣術を標榜する光友は当初連也を軽んじますが、お抱えの剣士三十人と試合して見事ぶっこ抜き、また城下の辻斬り事件などを解決したその手腕から次第に実力を認め、師弟愛を育んでいきます。
しかし連也の活躍を快く思わないのが徳川将軍家の兵法指南役を務める柳生宗矩。宗矩と、その遺志を継いだ子息・柳生烈堂はあらゆる手を使って連也を亡き者にしようと企てます。

●人物紹介

【主人公柳生】柳生連也

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通称「小ぼんさん」。光友からは「老け顔」と評されるも、吉原を歩けば女たちの方から声がかかるほどのイケメン。若くして新陰流を継ぐ実力を持つも、可能な限り殺生を避ける人格者。民草のためならば容易く命を懸け、弱者を虐げる者には容赦しない。とみ先生、流石に盛りすぎでは。

【大名柳生】徳川光友

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尾張藩二代藩主。三代将軍家光の従兄にあたる。物語当初は連也を軽んじていたものの次第に信頼を寄せるようになる。事情により連也が切腹することになった際には、その旨を報告しにきた部下を叱責して止めに走らせるほど。連也×光友キテル…

【眼帯柳生】柳生十兵衛

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おそらく日本で一番有名な眼帯が似合う男。劇中では柳生の暗黒面を担うも、罪悪感から今まで手にかけてきた者達の幻覚を見て連也に斬りかかるというノイローゼの社会人みたいになっている。

【ダース柳生】柳生宗矩

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老練にして老獪、老いてなお剣は鈍ることがない江戸柳生こと柳生新陰流当主。没落していた柳生家の再興に尽力するも正統である「新陰流」を継げず、そのコンプレックスが連也に血の道を歩ませることとなる。

【ヴィラン柳生】柳生烈堂

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十兵衛に代わって柳生の暗黒面を受け継ぐパンチパーマ。宗矩の遺産を浪人や剣術家にバラ撒き、あらゆる手で連也を亡き者にせんと企てる。こいつがいないと『柳生連也武芸帖』の物語は三分の一くらいに圧縮される。

【静電気柳生】柳生宗冬

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宗矩の子息、烈堂の兄。真面目過ぎるきらいがあるものの、剣の実力は十兵衛も認めるほど。静電気を「気」の力と言い張る十兵衛からのスパルタ教育を経て覚醒、病床の家光を慰めるため連也と上覧試合を繰り広げる。

【パパ柳生】柳生兵庫(如雲斎)

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連也の父、前作主人公。この人に関しては、同じくとみ新蔵先生の『柳生兵庫助』に詳しい。

【アサシン柳生】柳生常闇斎

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新陰流六波羅派宗主、厩衆元締。大和第一位の剣客であり、「英雄編」では村正を装甲した湊景明を生身で圧倒する。如何なる時にも沈着冷静。目下の者に対しても慇懃丁寧な態度で接するが、他のルートでは意外な真相が明らかになる。『柳生連也武芸帖』には登場しない。

【生涯柳生被特攻】近江鉄之助

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烈堂に雇われた薙刀使いの浪人。上泉信綱、柳生石舟斎、柳生兵庫と先祖代々が歴代の柳生に敗北を喫しており、自分の代で妥当新陰流を標榜し連也に挑む。内職で作ったコマを連也に渡す際の台詞がハードボイルドの極み。

【ただただ女運が悪い】寺本新之丞

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烈堂に雇われた刺客。宮本武蔵の直弟子という、この時代においては強すぎるバフを持つ二刀流の使い手。一度は剣を捨てようとしたものの、惚れた弱味から悲壮な決意と共に連也の前へと立ちはだかる。

【胤善と愉快な仲間達】

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目的のためには殺生上等の破戒僧。烈堂に並ぶ外道。地の利、数の利、間合いの利を得つつも、連也のルール無用砂浜デスマッチ戦法の前に破れる。

……等々、連也の前には柳生非柳生を問わず様々な剣客が立ち塞がります。時には苛烈に、時には悲哀と共に血路を開く連也の活躍。冊数も少なく、柳生入門にはうってつけの作品となっております。ぜひ一度お読みになり、より良い柳生ライフをお過ごし下さい。

甲冑積立金にします。