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正常な骨


幸せな家庭に育った。
裕福とまではいかないが何不自由なく暮らせた。
生まれてきたのがわたしで父も母もとても喜んでくれた。とくに父は男の子が良かったが、女の子も可愛いものだなあ、とデレデレになりながら職場や近所や親戚に自慢して回ったそうだ。父は教師をしていたが自分の子供には超絶に甘々だった。両親、とくに父の溺愛ぶりは半端なかった。小さい頃からおもちゃや絵本をたくさん与えて絵を描かせたら天才だと褒めた。
何をしても
楽しい習い事もたくさんやらせてくれた。母は心を込めた料理を毎日好きなものばかり作ってくれて、学校にあがると可愛いキャラ弁を持たせてくれていた。ワクワクして昼まで待ちきれないほど毎回違うキャラクターだった。たまにお姫様のようなワンピースやドレスを着させてくれて髪を素敵な形に結ってくれた。
わたしは長い黒髪が自慢だったので切らずに腰の下までずっと伸ばしていたので、学校では姫、とか納言、とか式部、とか呼ばれていた。高校大学とストレートに合格し、文学の道に進んだがその後いい人と出会って結婚し、文章も本も一切関わらなくなった。

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