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#076 とあるカフェで

窓際に座る 向こうのマンションの窓の外に敷き詰められた花 手入れというほど綺麗にされてはおらず 自由に咲くことを許されたそれらは生き生きと咲き誇っているようにみえる 風に揺れながら

多いとも少ないとも言えないそこそこの交通量の道がこちらとあちらの間に1本あって ふと目線を右にむけると 建ち並ぶマンションの切れ目からほんの少しだけ この街のシンボルである台北101の頭がみえる それはここから望める空の景色を遮らないようにそっと建っているようだ

手元に目をやると焦げ目がしっかりとついた それでいてひとたびスプーンを入れればふわっと崩れてしまうスフレチーズケーキと ふだんはあまり頼むことのないカプチーノが並ぶ 植物性ミルクのオータリーを使ったそれは甘くなくケーキと合わせるにはちょうどよかった

後ろを振り返ってみれば レジカウンターの上のロフト部分にも客席があって薄暗いが 全体としては天井が高く開放的な店内 ロフトに向かう階段の壁側にはコーヒーが並ぶ棚がそなわっている 木の温かみと適度な照明によりとても落ち着いた内観である

雰囲気は勉強するのにもってこいな店だが 実際は常に人が絶えず、楽しげに飛び交う話し声も途切れることは無いので ひとりでこの空間を独占するにはなんとなく後ろめたさを感じてしまう そんな店であまり時間をかけずにこんな文章を綴っている時間がなんだかものすごく贅沢なことに思えた

腕に刺青の入った厳つそうな店員の接客は硬すぎず柔らかすぎず なんとも言えないが実にちょうどいい 気取ってもいないしかしこまりすぎてもいない感じはこの店の雰囲気を楽しむ上で最も重要なことかもしれない

隣でパソコンをたたく音
締め切ったつもりでもふわっと開いてしまう入口のドア
そして目の前には道に沿って規則正しく並ぶバイクたち

この空間とともに味わうカプチーノとチーズケーキはとても柔らかな味であった

ふと この店の雰囲気に自分も溶け込めているのか少し心配になった もう一度外に目を向けてみる 向かいのマンションに咲く花も この街のシンボルも 先ほどと変わらず この景色の中にしっかりと溶け込んでいた

ただ 手元のカプチーノだけがすっかり適温を過ぎてしまっていた




Stone espresso bar&coffee roaster
📍台北市大安區安和路二段171巷6號


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