踊り手(ダンサー/コリオグラファー)さんとMMDユーザーの出会い
前置き
MikuMikuDance(3DCGアニメーション制作ツール、以下MMDと略)の基本的機能の中で一番多く活用されるであろう、モーションを動画から書き写すという行為は、MMDがリリースされてから長年行われています。
昨今では人の手による「モーショントレース」以外にも、AI技術を使った自動トレースツールの活用でMMDで好きなモデル(キャラクター)を動かせるようになりつつあります。
そういった中で、自分自身で踊ったものを撮ってトレースする方は非常に稀ですし、多くはニコニコ動画・YouTube等で「踊ってみた」系のものを見つけたりする事がほとんどでしょう。
そういった環境の中で、少なからずトレース元になる「踊ってみた」
動画の制作者(もしくは踊り手さん)の方に連絡を取る場面が増えていく事でしょう。
多くのMMDユーザーの方は既に配布されているモーションを使用する事がほとんどでしょうが、自分でモーションを作成する方は許諾を得ている場合も多いでしょう。
そういったやりとりの中で、比較的独立性(一人で解決できる範囲)が高いMMDではあるものの、ダンスの振り付けや動きを借りるという面では、いわゆるコラボとなり複数人でのコンセンサスを取らなければならなくなります。
特に無断でAIを活用したモーショントレース等を行った場合や、動画を収益化してしまった場合など、後々問題になりそうな場面が増えてきているのも現状です。
無用のトラブルを事前に避けるために、ダンサー・振付師とMMDユーザーがどうやりとりすればスムーズに、かつ無用なトラブルを避けられるかをここに記すものです。
ただし、すべてのトラブルがこの記事によって避けられる訳ではありませんし、参照程度のものですので、筆者の方では責任を負いかねます事、予めご了承ください。
最初の声掛けなど
トレース元となる動画(以下、参照動画と記述)の投稿者、もしくは動画に写ってるダンサーの方(撮影者が別な場合もあるので)と連絡が取れる窓口があるかどうかを確認する必要があります。
YouTube・ニコニコ動画などでは動画投稿コメントに記載されていたり、動画最後のクレジットに表記されている場合などがありますが、その記載があるかどうかは半々でしょう。
昨今ではメールアドレスを公開している方は稀になり、多くはX(旧Twitter)のアカウント名がほとんどかと思います。
場合によってはYouTubeの場合はチャンネル管理者に連絡を取れる場合がありますが、ニコニコ動画では直接ユーザー間でやりとりできるものはありません。
ですので、連絡を取る前に以下の確認が必要になります。
動画投稿コメント、動画説明、チャンネル説明等に記載されている連絡先を見つける
連絡先がどのメディアツールなのか(メール・X・BlueSky等)確認する
X等の場合、DMが公開状態なのか限定状態なのかをプロフィール等から確認する
限定状態であれば、メンション(指名)を指定して連絡を取りたい旨を投げてみる
連絡を取る際に気をつけるべき点はいくつかあります。
まず、自身は何者なのかを明記する。(例:私は個人で創作活動しているMMDユーザーです。私の作品はこちらです)
参照動画の感想を簡素に述べる(印象に残った、感動した等)
MMD動画として再現したい(トレースしたい)旨を述べる
モーションを配布する予定であればその旨を述べる
モーション配布する場合、予定している配布動画・配布サイトを明記する。また、他の人がモーションを利用する場合、モデルによって表現が変わる可能性がある事を予め了承していただく旨を述べる
個人活動なので、動画を完成させられない場合もある事を、予め了承を得たい事を記す
もし(こちらが指定した)期限内に返答が無かった場合は、ご縁が無かったという事で諦める事を記しておく
最後に、謝辞を伝える(例:お忙しい中、ここまでご一読して頂きありがとうございました…等)
このように箇条書きすると手間が掛かると思うでしょうが、人様の作品を活用するのであれば、この手間は惜しむべきではありません。また、一部の方は「(動画内などで)クレジットを表記すれば十分でしょう」と考える方もいらっしゃいますが、これは利己的な考え方ですので、改める事を強くおすすめします。
やり取りを続ける中で
許諾を得るやりとりの中で、運が良ければ一発でOKを貰えるケースもあれば、何度かやりとりを続けてようやくOKが出る場合もあります。また、当然ながら許諾を得られない場合も多くあります。
金銭部分のみならず、これは「交渉」ですのでお互いに利が無ければ許諾を得られません。食い下がって交渉を続けるのも手ですし、結果が思うようなものではなかったら諦める必要もあります。
あなたが今作っている作品のジャンルによってローカルルールみたいなのがあるように、ダンサーさん側にもローカルルールや常識的な事というのがあります。
それを知らずに相手に失礼にあたってしまう事や、諦めざる得ない事になる事も多々あります。
そういうケースを増やさない為にも、まずは相手を知る事が大事になります。どういう事かというと話は簡単で「分からなければ聞く」というのが一番良い方法です。
具体的には、自分を無駄に飾らずに
「私はMMDユーザーで踊ってみたやダンサー関係に対して理解が及ばないところも多々あります。お手数ではございますが、失礼や常識外れな事がありましたら、お手数ですがご教示頂けると大変ありがたいです。」
というような前提を文中のどこかに書いておけば、相手もこちらがどういう人なのかを伺い知る事ができるでしょう。相手も自分の知る範囲内だけでなく、他ジャンルやMMDユーザーとどういうやり取りが必要なのかを知れるかもしれません。
つまり一文を加えるだけで、互いの印象や不必要なすれ違いなどを避ける事ができます。
最後に
この件に関わらず、他の人とのやりとりは短文ひとつで済ませるのではなく、何度もやり取りを行う「コミュニケーション」を大事にしつつ、言葉を大事に選ぶ事で、以降のやり取りがスムーズになり、互いの関係も良好なものになる可能性が大きくあります。
気持ちよくMMDライフ、ダンスライフをお互いに過ごすために、少しの手間を掛けてみましょう。お互いの信頼を得られる事で、長い付き合いになるかもしれません。
ネットが普及した現在でも、出会いは貴重な財産です。何度も繰り返しにはなりますが、手間を惜しまずにコミュニティを広げましょう。
どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。 MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。