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大臺 序乃壱

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此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
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2021年5月の記事一覧

大臺神楽闇夜 1章 倭 2 襲来1

大臺神楽闇夜 1章 倭 2 襲来1

迂駕耶から少し沖に出ると有名なオノゴロ島がある。其処から更に沖に進むと高天原と呼ばれる大きな島に辿り着く。
 言わずと知れた人気スポットである。人気の理由は矢張り初代大神であるイワレビコの産まれた場所とされているからだ。だが、此処に観光地としての何かがあるのかと言えば其れは皆無であると言える。有るのは大きな集落が二つ、中ぐらいの集落が一つ、そして八重国が誇る海軍の砦が北と南に一つずつあるだけである

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大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇5

大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇5

神楽が目を覚ましたのは氷室が出て行って暫くしての事だ。ガヤガヤと煩わしい声で目を覚ます。薄ぼんやりとした視界はまだ暗い。
「まだ朝ではないぞ」
 ボソリと言って又目を閉じる。
 そして思い出したかの様に横を手で探る。いるはずの氷室がいない。神楽はゴロリと向きを変えソロリと目を開ける。
 矢張り氷室はいない。
「行きよったんか…」
 と、神楽は又目を閉じる。
 ガヤガヤと煩わしい声が耳を濁す。
 防

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大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇4

大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇4

日が昇る少し前、唐突に戸を叩く音がした。その音で氷室は目を覚ます。むくりと体を起こし神楽を見やる。神楽はよだれを垂らしながら熟睡している。氷室は神楽を起こさぬようそっと立ち上がり羽織を羽織った。
 トントン…。
 再度戸を叩く音がした。
 氷室は静かに戸に向かいソッと戸を開ける。
「氷室乃神…。大神より伝令であります。」
「うむ…。」
「出兵の準備をせよとの事であります。」
「分かった。少しそこで

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