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第5回 web版「ぼくいえ」 Miele電気クッカー、買い替えの顛末。前編

先日、知人(新婚/30代男性)に「持ち家って建てた後どのくらい金かかります?」と聞かれた。うむ。最初に頭に浮かんだ、確実にかかるお金と言えば、土地と家の固定資産税だ。条件によっていろいろ異なるのでウチの生々しい金額をツマビラカにしてもアレなんですが、年間で16万円ちょいといったところだ。

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んで、次にやっぱ維持費。維持費だ。

最初に嗚呼、と思ったのは、壁だ。壁というのはなんといっても外から見えるものなので、飛び込みセールスの餌食になる。竣工して10年目くらい経った頃からだろうか。徐々に「ピンポ〜ン!お宅の壁がだいぶアレなんでウンタラカンタラ」というセールスが増えてきた。確かに、薄いクリーム色の壁の一部がうっすら黒く変色してきている。どんどん新しい技術が開発されているのだろう。主に「光触媒」ってゆーやつが推しらしい。太陽の光で壁がきれいになるからお手入れ不要なんだとか。ふうむ。でもこれお高いんでしょう?いや実際に高いのだ。だからあんなにガンガンセールスマンが投入されているんだろうけれど。

本題に入ります。
ウチのキッチンにはMieleの電気クッカーを入れた。ウチはオール電化なのだ。ドイツ製で電磁波の発生がIHクッカーに比べてだいぶ少ない(タッチパネル周辺からわずかに電磁波が発生する。ちなみにドイツの電磁波測定ガイドラインはとても厳しく、ドイツで大丈夫ならそれは大丈夫というくらいのものなんだって)。コンロの高さというのはちょうどお腹の位置になる。子どもを持ちたいと思っていたのもこの電気クッカーを選んだ理由の一つだった。

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その電気クッカーがここ数年、調子が悪くなってきた。そもそも発端は、キャンプで使ったダッチオーブンを家で洗って火にかけて乾燥させようと思ったあの時ではなかったと思っている。ちがうかもしれないけど、さすがにダッチオーブンは重い。故障するならあの時だろう。ほどなくして4つ口コンロのうち一番大きなコンロが暴走を始めた。火の強さを0(消火)から9(超強火)で表すのだが、消化のボタンを押してもマックスの強火が消えないのだ。これは怖い。最初にこの状態になったときはナダめたりスカしたりしているうちにすぐに治ったのだが、数カ月に一度くらいの割合でこの現象が起こるたびに、治るまでの時間が長引いていった。しまいには、コンセントを切ってひと晩置いておかないと治らなくなってしまった。困った。大きなコンロだったのでご飯を炊くのに使ったりしていたが、使う回数を減らしたりしていた。たまにしかならない現象だけど、なるときは突然来る。すぐに出かけなければならないときなど、放っておくわけにはいかないのでとても困る。

何度かこの状況に陥ったあとは挙句ちょっと慣れてきて、そのマックス強火の状態を利用してお茶を沸かしたりしていたのだが、やはり良くないだろう。一度修理してもらおうと代理店に電話してみた。Mieleの代理店、少ないんだ…。診断の結果は、打つ手がないという。修理部品のサポート期間が終わっていて、そろそろ買い替えの時期だという。そういえば竣工から10年は経っていた。しかしそう言われても、それでは買い換えます、という気にはなれなかった。一応あと3口残っている。その時は代理店から派遣された修理の男性が2人、申し訳なさそうにコンロの枠に溜まった焦げを1時間ほどかけて専用のスクレイパーで削り取ってくれて、見た目はスッキリした。けれど、もうこの大きなコンロは使えないなあと途方に暮れたのだ。

そしてその後数年して、2番目に大きなコンロが同様の状態に陥った。一応料理の仕事なども請け負っているワタクシ。そもそも趣味は料理。さすがに2口では厳しい。ここへ来てようやく、買い替えが視野に入ってきた。

これを維持費というべきか。家の維持費というべきか。電気クッカーは電化製品なのだから、冷蔵庫やクーラーを買い換えるのといっしょでそれを家の維持費とは言わないかもしれない。けれど、キッチン作業台の一部に埋め込んだコンロが、故障して使えなくなって買い換えなければならない日が来るとは、なぜか竣工時思っていなかった。これは永遠に使えるものだと。(中編に続く)

【著者プロフィール】
川上夏子(クワズイモデザインルーム)
1974年生まれ、福岡市在住。企業向けデザイン、ブックデザイン、エディトリアルデザインからライティング、撮影、イラストなど、グラフィックデザインにまつわるいろいろを生業とする。著作に『ぼくらのいえが できるまで できてから』『小夏を探す旅』、ブックデザインに『福岡喫茶散歩』(小坂章子)など多数。

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