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第5回 ガスタンク界のアイドルを追いかける(半田カメラ)

ガスガスタンクが好きです。

「ガスホルダー」というのが業界での正式名称のようですが「ガスタンク」の方が馴染みがあるので、ここではガスタンクと呼ばせてもらいます。

ガスタンクとは、あのガスを溜める巨大な容器のことで、私が好きなのは都市ガスを貯蔵する球体のガスタンク。球体だと内部圧力が均等にかかるため安全性が高いのだそうで、実に真っ当な理由でガスタンクは球体なわけですが、そもそもあんな巨大な球体が街中にドーンとあるなんて、冷静に観たらとても不思議です。みんな見慣れてしまって意識しませんが、不思議で違和感のある光景だと思います。私はそんな光景が好きですし、ガスタンクって単純にかわいい。そこには異論もあると思うので、これから誰がどう観てもかわいいガスタンクをご紹介します。とくとご覧あれ。

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おそらく誰が観てもかわいいこの写真。国内に実際に存在するガスタンクの写真です。けっして合成して顔を付けたわけではありません。新潟県新発田市(しばたし)にある新発田ガスさんのガスタンク、その名もニコタンです。これぞガスタンク界のアイドル。そして何を隠そう、私は長年ニコタンの追っかけをしているのです。

私が最初にニコタンに出会ったのは2012年のことでした。

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新潟にたいそう可愛らしいガスタンクがあると聞き、探しに行きました。最初に見つけたときの衝撃を忘れません。住宅街の中から飛び出す、巨大なまん丸笑顔。ひと目でファンになりました。これを癒しと言わず何を癒しと言うのでしょう。

目のタレ具合といい、口角の上がり具合といい、絶妙です。単純であればあるほどバランスの違いで印象は大きく変わります。単純そうに見えて実は計算され尽くしたパーツ配置の末のパーフェクトな笑顔だと推測します。

ニコタンはこれひとつだけではありません。複数存在しています。

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この新発田市の国道沿いにあるニコタン。こうしてみると「ニコタン+もうひとつの小さなガスタンク」に見えますが裏側にまわってみれば…

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小さい方のガスタンクにもニッコリ笑顔が。つまり背中合わせになっているのです。往年のアイドルユニットのようなナイスフォーメーション。こちらにもあちらにも笑顔を振りまいている、守備範囲の広い背中合わせニコタンです。

この国道沿いのニコタンが最初に誕生した初代にっこりガスタンクです。ニコタンは1989年に新発田ガスさんのイメージキャラクターとして誕生します。それまでガスタンクには冷たく怖いイメージを持つ人もいて、「笑顔が見えないガス事業」と言われていたんだとか。そこで社長さんの発案でガスタンクに笑顔が描き入れられました。この笑顔のガスタンクが大変好評でその後ニコタンは新発田市周辺で増殖をつづけることになります。

そしてとうとうニコタンの彼女まで誕生するのです。

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ご紹介します、桃色タンクのモモタンです!ニコタンとの違いはもちろん桃色なことですが、お気づきでしょうか、マツゲが一本ピョコンと描かれていることを。そして口元は少し控えめにニッコリ。あまりに女子力高めで、もはやかわいいのメーターが振り切りました。

また別の場所にある、こちらは横並びのニコタンズ。

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2012年の時点ではまだニコタン×ニコタンでしたが、

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2013年に行くと、ニコタン&モモタンのカップルが成立していました。誰が見ても文句の付けようのないお似合いな様子に軽く嫉妬をおぼえつつ、同じ方向を向き明るい未来を見るようなふたりの姿に感動したのでした。

実は、最初の訪問以来めでたくニコタンファンになった私は、すぐさまTwitterのニコタンのアカウントをフォロー。するとニコタンから直接情報が入るようになりました。ある時ニコタンから「桃色タンクのモモタンがタンクデビューしました!また会いに来てね~! ニコタン 」というかわいすぎるメッセージが届いたのです。なんてファン想いなんでしょう。まさにアイドルの鑑です。

さらに!あの背中合わせニコタンズも

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数年前にニコタン&モモタンに生まれ変わりました。ずっと新潟に行けておらず、この夏やっと会いに行くことができたのですが、久々に会っても相変わらず安定のかわいさ。私の影響をモロに受け、娘もモモタンファンなので今後は定期的に会いに行きたいと思っています。

娘をみていて思うのですが、子供がニコタンを好きになるのは当然の成り行きな気がします。アンパンマンが愛されるのは、ほぼ丸だけで構成されているから。丸だと子供も描きやすい。ニコタンなんてその最たるものです。「お絵描きしやすい」これが子供に好かれる条件のひとつだと思います。子供に愛される、ゆえにニコタンは愛されるのです。

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ちなみに娘の描いたニコタン&モモタンです。色塗りは私も手伝いました。

子供が描きやすいということは、大人にとっても描きやすいわけです。キャラクターグッズもつくりやすい。だって丸だったらなんでもニコタンになっちゃうんだから。ボールだって、マンホールだって、コースターだって。新発田ガスさんはグッズ展開もされていますが、余計なお世話ながら私も考えてみたりします。

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例えば、三色だんごはいつも「のっぺらぼうだな」と思います。ニコタンファンになってしまったがゆえの弊害と言えるでしょう。三色だんごはニコタン化すべきです。白のおだんごは、この際なくていいでしょう。

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お弁当はいつもニコタン&モモタンが入っていてもいいぐらい。ちなみにこのプレートは下の写真をモチーフにしました。

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ああ、かわいい。忙しい日常の中、この記事を書いていてひと時の癒しを得ました。癒されたい方はぜひ新発田市へ。ニコタン&モモタンの所在地は詳しくは明かせませんが、探してみる楽しみがそこにあります。ニコタンは現在、新発田市と隣りの胎内市にまたがり全部で5カ所に点在しています。会いに行ける究極の癒し系アイドルに皆さんも会いに行ってみてください。

ではまた次の巨なるものでお会いしましょう。

プロフィール
半田カメラ

大仏写真家。フリーカメラマンとして雑誌やWeb撮影の傍ら、大好きな大仏さまを求め西へ東へ。現在まで300尊をこえる大仏さまを撮影。「巨」なるものが好き。穴も好き。『夢みる巨大仏 東日本の大仏たち』(書肆侃侃房)が発売中!


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