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第3回 web版「ぼくいえ」 床はパイン材のスポットで。後編

建築中、私は週に何度か現場を見に行っていたので、床を貼るときも立ち会えた。天然パインの床材だ。ハンサム大工さんがたくさん届いた床材を一枚一枚ためつすがめつし、木目や板の反り具合を見る。そして貼る。まるでパズルのようだ。私は貼ったばかりの床に裸足で上がった。気持ちいい!!!これだ〜〜〜!!!本当は寝転んで頬をすりすりしたいくらいだが、大工さんの手前ガマンする。

床2004s

そしてその日のうちに養生カバーをかけられる。これで竣工するまでお預けとなった。

さて時は過ぎ、ある程度住まいが落ち着いてから例のワックスを塗ることにした。「未晒し蜜ロウワックス」(有限会社小川耕太郎∞百合子社)だ。そもそも床材自体が未晒しの天然材。養生シートを取ったらなるべく早く塗ってください、と言われていた。これは引き渡し前に美装の業者さんが入ってお手入れの方法をいろいろ指南してもらったときに言われたので、私はちょっと尻に火がついたような感じになっていた。早く塗らないと。白っぽくなっちゃう。ワタワタ。

しかしこれが面倒だった。

全ての家具を移動して、塗って、そのまま2、3日放置して、また家具を戻す。め、めんどくさいよ……。

む〜り〜!いやこれもう……。ちょっといいかな……。

それで実はそれ以来塗っていない。ハハハ。竣工は2004年で、塗ったのはその翌年だったか。床がまた白くなってしまうことがあったらその時に塗ろう、というぼんやりした決心を抱え、日々床の色に怯えながら暮らしたが(そんなわけない)、実際には床に与える生活の影響というのは、日焼けだけではなかった。

まず物を落とすと木もほげる。あ、ほげる、というのは博多弁なのかしらん。穴が開く、という意味です。そして、キッチンの床には油がはねて染み込む。また、前編でも書いたように、ウチはキッチンもダイニングもリビングも仕事場も床続きで一体化しているので、キッチンの周辺も油の影響がある。その後子どもが生まれ、挙句マジックで落書きをしていた。WAO!!!もう少し大きくなった工作好きの息子が、カッターマットもなしにダンボールをカッターでガ〜〜〜っと切り刻んでいたときは、もはや注意することもなく、ニコニコと見守ったものでした。

そして気がついた。これが生活なのだ、と。古材の家で見た美しく色づいたあの100年ものの梁も、そういう生活の全てを染み込ませて黒々とした姿になったのだ。

床201602s

どうです?艶やかでしょう?(エヘン)
日焼けの影響を受ける大開口側の床も、そうでない西側のキッチンの床も、特に変わりはない。白っぽくなったという印象もない。生活の色を帯びている。とても美しく、ツヤツヤと飴色。今のところ大変気に入っています。

あ、面倒くさがりの私の勝手な結論だけど、とりあえず一回だけは塗った方がいいと思います。何しろ全くのハダカの木なので、さすがに。そしてあとはオプションなのかな、と。余力がある方は定期的に塗るとまたウチとはちがういい色になるのではないでしょうか。しかし、弱音を吐くと、小さい赤ん坊とかいたら定期的に塗るってやっぱ無理だと思う。とほほ。

それからもう一点。
実は家中天然木にしたわけじゃない。ちょっとケチりまして、フローリングを敷いたところがある(ちなみに寝室は畳です)。一つは納戸、ここはまあいいのだけど、もう一つが子ども部屋。これがね、正直、ケチらんでもよかったのではないかというのが、子どももある程度大きくなった今の正直な気持ちです。ちなみに壁は珪藻土だが、子ども部屋だけ壁紙。なんだろう。子どもを持つ前に家を建てるとこうなってしまうのかな。私が中学生の時に実家を新築した時には、親にいろんなインテリア雑誌を見せて自分の希望を主張したものだった。まあ、あんまり聞き入れてはもらえなかったけど。

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『ぼくらのいえが できるまで できてから』

……あの「ぼくいえ」が帰ってきた!

こだわりの家作りも超リアルなお金のあれこれも執念の壁塗りも、完全公開して話題になった施主による施主のためのバイブル『ぼくらのいえができるまで』から10年。畑の果樹も多くの実をつけ、新しい家族が増えた。
イラスト満載のページに加え、カラーページを増量して10年後の「ぼくいえ」の変遷と美味しい写真もてんこ盛りです!

【著者プロフィール】
川上夏子(クワズイモデザインルーム)
1974年生まれ、福岡市在住。企業向けデザイン、ブックデザイン、エディトリアルデザインからライティング、撮影、イラストなど、グラフィックデザインにまつわるいろいろを生業とする。著作に『ぼくらのいえが できるまで できてから』『小夏を探す旅』、ブックデザインに『福岡喫茶散歩』(小坂章子)など多数。

ぼくらのいえ 縦長


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