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劉暁波の思いを(書肆侃侃房 田島安江)

今年も6・4がやってきた。どうしてもこの日は忘れるわけにいかない。天安門事件の犠牲者を追悼するために、「言論の自由」を取り戻すために。中国という国はいま、ますます意固地になっているよう思える。劉暁波がほとんど命をかけて発信し続けた「自由」への希求。香港も台湾も、封印された人々の思いはいま、内に内にと向かっているように思える。

記念碑が声を殺して哭いている
流血が染み込んだ大理石のマーブル模様
心が、思いが、願いが、青春が
戦車の錆びたキャタピラーに轢き倒され
東方の太古の物語が
突如、鮮血となって滴り落ちてきた
あんなにうねり逆巻いていた人々の流れが消えていく
ゆっくりと干あがる河のように
両岸の風景が石の塊に変わったとき
一人ひとりの数えきれない喉が恐怖で窒息し
砲煙に震えあがり散り散りになった
殺し屋の鉄かぶとだけがきらきら光る

詩集『独り大海原に向かって』「死の体験―「六・四」一周年追悼―」の冒頭である。

この日の多くの死者の思いを、劉暁波が伝えたかったことを「無きもの」にしてしまってはいけないのだ。それこそが世界の良心なのではないだろうか。


書肆侃侃房 田島安江


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