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第2回 web版「ぼくいえ」 床はパイン材のスポットで。前編

家を自然素材で作りたいという思いは強かったのだけれど、何から何まで木にしちゃってログハウスみたいになるのもなぁ。いかにも、木です!木で作りました!!木が好きだから!!!自然が大好きだから!!!!!みたいな感じになっちゃうのはどうもなぁ。

しかし、そうは言っても床は木だろう。

一応、石とかもね。想像はしました。特にキッチンなら石タイル貼りとかアリかもね、と。うちはキッチンもダイニングもリビングも仕事場も床続きで一体化しているので、キッチンのところだけ別の床になっていると、ここからちがうんですよ、という静かな線引きになっていいのかなと思ったのだ。しかしこれ、なんか落としたらもう100%割れるって話になりまして。100%じゃないな。もはや120%。割れないものまで割れるんじゃないかというくらい割れる。海外のキッチン写真とか見たらテラコッタを敷いてたりしてかわいくて、これが結構アリなんですけれどもね。海外の人たちは物を落とさないのだろうか。サンプルカタログも取り寄せましたが、まあやはり120%はいかんなということで、却下。

で、木材を探していました。

懸念点はいくつか。

まずお高い。値段が。

そして、私たちに「この材がいい!」という具体的な理想があるわけではなかったので、決め手がなかなかなかったこと。

床材に限らず、一貫して希望していたのは、時を経るにつれていい色に変わっていく材がいい、ということだった。古材を使った建物なども見学し、100年使われた家屋から移築した梁とか、暖炉でもあって煤を吸っていたのかものすごくいい色をしていて、こういうのがいいなあと憧れていた。しかし、新材をそういう風に見せる塗料なども充実しているのでそんなのはもちろんいやだったし、最初からどこかのお宅の古材を買うというのもちがうと思っていた。やはり、自分の家で、生活をしながら木をいい色に育てたいのだ。なので、建築士に「いい色になるのはどんな材ですか」という質問を浴びせかけていたのだが、はっきりとした答えは得られなかった。そりゃそうだろう。生活環境で大きく左右されることだし、そもそもそんな質問するやつぁいねぇ、ってことで(こんなんばっかりだったけど)、私たちを満足させるデータはないのだった。

ただ、どんな材でも自然の木材ならワックスを塗ることをおすすめします、と言われていた。勧められたのは「未晒し蜜ロウワックス」(有限会社小川耕太郎∞百合子社)。正確に言うと、おすすめ、というか、塗るべきだということだった。うちは開口が広いので日が燦々と入る。床材が焼けるというのだ。白っぽくなるというような言い方をしていた。ワックスを塗ればいい色に近づけると思います、と。ふむ。蜜蝋を使ったいい商品であることはわかるが、どのくらいの頻度で塗るべきものなのか……。

最後に、自然の床材だと床暖房はおすすめしない、と言われたのだ。木は生きている。だから、床に貼った後でも歪むし、反るし、曲がるというのだ。温めるわけだから尚更だ。恐るべし、木。うちは開口が大きい上に二階とつながっている。マンション育ちで脂肪が極端に少ない夫は寒がりで、最初床暖房を希望していた。しかし、自然をこよなく愛するのも夫だ。自然の床材だと床暖房はおすすめしない、と言われることで、逆に床暖房を諦める方に傾いた。木ってやっぱすげぇ、床暖房、いらねぇ、という思考回路だ。それに木も高いが、床暖房も高いしな……。

床材をどうするか、とりあえず自然の木材で、というところでちょうど見積もりが出て、これがめちゃくちゃ予算オーバーだった。もちろん床材の他にもいろいろオーバーしている原因はあるので仕方ないのだが、何をどう削るかで頭を悩ませていた。そこに建築士が朗報を持ってきた。パイン材がスポットで安く手に入ったというのだ。節が多い材なので、好き嫌いが多く、高い値段がつけられない商品だということだった。ほう。私たちは節は気にならない。というか、自然の材を求めていて節を嫌うってなんなんだ。自然じゃないじゃないか。

それにしまーす!!!それく〜だ〜さい!!!

(後編に続く)
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『ぼくらのいえが できるまで できてから』

……あの「ぼくいえ」が帰ってきた!

こだわりの家作りも超リアルなお金のあれこれも執念の壁塗りも、完全公開して話題になった施主による施主のためのバイブル『ぼくらのいえができるまで』から10年。畑の果樹も多くの実をつけ、新しい家族が増えた。
イラスト満載のページに加え、カラーページを増量して10年後の「ぼくいえ」の変遷と美味しい写真もてんこ盛りです!

【著者プロフィール】
川上夏子(クワズイモデザインルーム)
1974年生まれ、福岡市在住。企業向けデザイン、ブックデザイン、エディトリアルデザインからライティング、撮影、イラストなど、グラフィックデザインにまつわるいろいろを生業とする。著作に『ぼくらのいえが できるまで できてから』『小夏を探す旅』、ブックデザインに『福岡喫茶散歩』(小坂章子)など多数。

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