持ち上げ日記9/3

雨。新宿駅。

丸の内線の出口から、地上に上がる階段で、大きなスーツケースを一段ずつひっかけながら登っている20歳くらいの若い女性を発見した。
スーツケースはとても重そうで一段引き上げるのにも苦労している様子だったので流石に見過ごせず声をかけることにした。



 後ろから話しかけると怖いのと、荷物を上げます以外の目的が行動から滲み出ないように、前を通り過ぎて少し階段を登って、一旦彼女の視界に入ってから、大荷物に気がついて2〜3秒待って「流石に見過ごせず降りてくる」意味になる導線をとって、話しかけた。

話しかける時は、左手の手の甲を前にして指輪を見せながら、大きすぎない声で、顔を見ずに荷物だけを見て、
「上まで持ちますけどいいですか?」と、僕がいなくなる時間を明確に約束した上で、汚いかもしれない手で私物に触ることだけを聞いた。

スーツケースの近くまできたところで初めて相手の顔を見て改めて「いいですか?」と断れるタイミングを作った上で、
スーツケースの持ち手ではなく、底の部分をダンボールを抱えて持つように持ち上げた。持ち手を持たれてしまうと知らない男性の手汗や菌がついて私物について嫌なイメージになるかもしれないからだ。

彼女は「すみませんお願いします」と言ってくれたのと、荷物は確かに男の僕でも重いと感じる重量で、役に立つ要素があって少し安心した。

地上に着いて、荷物を下ろした時に僕の口から「ここでいい?」と不意にタメ口がついて出てきた。

なんなんだよこのタメ口。
自分がキモかった許せなかった。どこまで気をつけても、年下の女の人に対する不意のタメ口が出てくる。
インストールされきってる「偉そうな口の聞き方」と、他人の「女の子扱い」いい加減にしないかと思った。でも、これだけ自分を縛ってきた僕でも無理なんだからもう無理だとも思った。


吐き気と嫌悪感が出てきたので、相手の返事もお礼も聞くことなく、素早く立ち去り、角を曲がったところでしばらく座って休憩した。

もうダメだ。
怖くなくなりたいが、もう無理だろう。

サブウェイのアボカドベジー食べます