損益分岐点

 秋めいてきて、かき氷の季節も過ぎようとしていますが、来年まで待てないのでひとこといっておきます。

 かき氷のカップはなぜギザギザなのか、頭痛薬はアイスクリーム頭痛の予防に効くのか、など考察すべき問題は、山積していますが、今回、かき氷を食べると汗がひく、について考えてみましょう。

 その前にもうひとつの問題を考えてみましょう。

 氷水と常温の水体を冷やすのにどちらが有効か。

 なかなかめんどうなもんだいですが、摩擦と空気抵抗のない世界に行ってみるのは一興です。
 人体の比熱は0.83で体重60kgの人の体温を1度上げたり下げたりするのに必要な熱量は、49.8kcalまあ50kcalです。氷水は0℃、常温を25℃としましょう。

 体重60kgの人が38℃の体温を37℃に下げるのに放出する熱量は、50kcal。氷水1gが0℃から37℃に上がるのに必要な熱量は、37cal水1kgだと37kcalですから、だいたい1.3kg(1300ml)の氷水を飲むといいことになります。常温の水の場合、水1gが25℃から37℃に上がるのに必要な熱量は、12cal水1kgだと12kcalですからだいたい4kg( 4ℓ)飲むと体温が下がります。

 水は絶対無理、氷水はどうでしょう。1.3Lこれもなかなかです。というわけで、水を飲んで体温を下げるのは難しいのです。

 実は、汗がだいじなのです。水の蒸発熱は、1g539cal およそ100mlの水分が皮膚の表面から体温を奪って蒸発すると、53.9kcalの熱を奪いますから、1度体温が下がるのです、大事なのは蒸発すること、滴り落ちる汗、タオルで拭ってしまう汗は役に立ちません。

 100mlの水分をのんだ時に水分が奪う熱量はどれだけでしょう。氷水で3.7kcal、常温の水で1.2kcal。氷水で蒸発熱の6%ほどですからほとんど影響ありません。

 それじゃあどっちでもいいじゃない。と思うでしょうがさにあらず。

 体に水分が満ちあふれているときはそれでいいのですが、水分が不足している脱水状態の時はどうでしょう。水分が500ml不足しているとすると、500mlまでの水分は汗になりません。どちらも600ml飲まなければならないことになります。

 結局温度より飲水の量が問題になります。常温の水と氷水、たくさん飲める方を選ぶのが正解です。

 ちなみに私の場合、アイスクリーム頭痛持ちなので氷水はどんなに頑張っても200mlが限度ですが、常温だったら500mlぐらい飲むことができます。体温を1℃下げようと思ったとき、不足水分量が100ml以下であればどちらでもいいですがそれを超えると常温の水でないといけないことになり、損益分岐点は不足水分量+100mlということになります。

 氷の場合、どうでしょう。氷の融解熱は、80cal/gです。0℃の氷が解けて37℃になるには120calの熱が必要ですから、1度体温を下げるには、400gの氷を食べればいいことになります。  氷水の3倍以上の効果がありますから、100gの氷を食べるのと、300ml余の氷水を飲むのは同じ効果がありますからやっぱりよく冷えそうですね。

 でも、アイスクリーム頭痛頭痛持ちの私は、酢豆腐と同じで、氷は一口に限りやす。

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