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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ①

(1)サンチャゴへの道

この看板が巡礼を導く

 これは、2022年8月中旬から9月下旬にかけて、「カミーノ・デ・サンチャゴ」の巡礼路600kmと、その後の旅の記録である。何を見た、何を食べたという内容だけでは面白くないので、スペインを鏡にして、自分や日本のことを考えた「思索の旅」となっている。
 以前、NHKBSで「カミーノ・デ・サンチャゴ」の巡礼路を歩く番組を見て以来、いつかは自分も歩きたいとの想いを持った(2023年2-3月に、Ⅱが放映された)。その後、2019年夏にカナダでユーコン川344kmを単独ソロカヤックで下った。翌2020年8月に熊野古道の小辺路(こへち)を、高野山から熊野本宮大社まで5泊をかけて歩いた。その時に、ここを歩く人の6割もが、「カミーノ・デ・サンチャゴ」の巡礼路を歩いた外国人だということを宿の人に聞いて驚いた。そして、私もこの道を是非歩きたいと思った。これらの「道(路)」は共に世界遺産に認定されている。

 ただ、年齢による体力の衰えという問題を抱える一方で、この間、「新型コロナウイルス感染症COVID19」のパンデミックが世界中に広がり、スペインはロックアウトされ、入国が禁止された。さらに2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、なかなか旅の環境が整わなかった。その間、ワクチンを打ち、巡礼路に関する情報を集め、登山や歩行の距離を増やして体力の維持に努めた。そして、やっと2022年夏に入国規制が解除された。

 サンチャゴ・デ・コンポステーラSantiago de Compostelaは、スペイン北西部のガリシア州の州都である。サンチャゴとは、新約聖書に登場するイエスの、「12弟子」の一人であるゼベダイの子(聖)ヤコブのことである。この地で、9世紀にヤコブの墓が発見された(何か変だが?)ことで、司教座となる教会が作られ、後にローマ、エルサレムと並ぶ巡礼地となった。ここは、その「カミーノ・デ・サンチャゴ」の終着地である。
 なお、巡礼路は「〇〇(人)の道」と称するものが何本もあり、私は一番長い「フランス人の道」を選んだ。なお、この道は約800kmであるが、私はそのうちの600km弱を歩いた。

 この巡礼は、サンチャゴ・デ・コンポステーラに向かって歩く苦行の旅である。そして、そのことを通して、巡礼は自分と向き合うことになる。日本から遠い異国の地で、家族から離れ、日常性から遮断されたところで長期間を過ごすのである。一切の肩書きを取り去り、裸のひとりの人間(「個」)となったところから、何が出てくるのか、それを見つめながら歩く旅となる。だから単独行である。

 日本のキリスト教は、1549年にイエズス会宣教師のフランシスコ・ザビエルが伝えたのが始まりである。そこで巡礼路からは外れるが、この機会に、ザビエルが生まれ育ったバスクの地を訪れてみたいと考えた。また、当時のキリスト教とは、どういうものであったのか、その片鱗に少しでも触れてみたいと思った。

 ここで私のことを自己紹介すると、40年間高校で歴史の教員をし、登山やカヤックなど、アウトドアを趣味にした。これは、スペイン語はおろか英語もからきし駄目な73歳の男が、スペインの巡礼路を歩いた旅と思索の記録である。

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