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【雑文】まんじゅうを呪う

突然であるが、私はまんじゅうが大好きである。

といっても「まんじゅう類」だけが好きなわけではなく、洋菓子にあたる、ケーキ(マリーアントワネットの発言で有名)であるとか、まんじゅうと同じ和菓子のようかん(ある種類は藤村Dが飲むことで有名)であるとか、世界一甘いと噂されるインドのグラブジャムンやドイツのザッハートルテ(戦艦の名前みたいでカッコいいことで有名)などの世界のお菓子だって好きなわけであって、有り体に言うと”甘いものであればなんでも好き”なんである。

したがって、世間一般でいうところの糖尿男子なわけであるが、なぜタイトルのように”まんじゅう”だけを呪うのであろうか?他の菓子類は愛され、庇護され、そして私の腹にすっかり収まるのに、だ。

だがおかし、もとい、しかし。おまんじゅうだけ呪うのにはもちろん理由がある。

「おまんじゅうは可愛すぎる」んである。

ここでは一般的な白いおまんじゅうを例にとるが、なんであろうか、あの白くスベスベとした、またはモチモチとした皮の食感。指先でギュウと押すと優しく押し返してくる心地よさ。

両の手でもって「さあ、開けますよ」と力を込める前にすでに割れている時さえある、あの気のきいた感じ。もちろんそのままカブりついても、歯を拒むような堅牢さなど無く、なすがまま、食うものの全てを受け入れる、例えるならば、地母神のような懐の深さ。

そして崇高な存在であるにもかかわらず、その形は「丸」である。

丸いもの、これはもう一般的に見ても可愛いに分類されるであろうことは自白の明、盛者必衰の理なのである、いや、これはただ単に語感がかっこいいから言ってみたかっただけです。

こういったことで、私はまんじゅうが好きすぎて際限なく食ってしまうんである。まさに無限地獄。

このままでは主に自分の健康面でよろしく無い、ということで、まんじゅうを、憎しみ、呪い、こんなに丸くて可愛いコイツをどうしてやろうか?と計画するに至ったわけであるが、ではどうするか?

まず手始めに、カラリと揚げてやる。そのフワフワした美麗な皮に醜い衣を纏わせ、油地獄に叩き落とす。

さあどうだ、こんなにキツネ色にこんがりしやがって!食ってやる!

うまい。その美味さ無限地獄。サクッ、ジュワッとしてる。

ふむ、これで勝ったと思うなよ。揚げたてのものは普通なんでも美味いんである。

であれば、とまんじゅうを高速回転するレコードプレーヤーに乗っけてやる。

皆さんご存知のことと思うけども、まんじゅうは、その清楚さに似合った清潔な白い箱などに並べられて静かにしている。

そう、奴らはのんべんだらり、ノンキで白いフワ丸であるから高速で移動したことなど無いんである。さぞかし驚き、恐怖し青ざめることであろう。

勝利を確信し、まんじゅうを乱暴に掴みプレーヤーに落とす。さてどんな残虐なミュージック を聴かせてくれるのか。

結果、ものすごいスピードで回転する白い物体が乗ったプレーヤーがそこにあるだけであった。まんじゅうはみじろぎひとつせず、抜群の安定感で回り続けている。その姿は、私の些細で幼稚な目論見など最初からお見通しであったかのように寛大である。

こうなれば私は完敗を認めざるを得ない。なんて偉大なおまんじゅう。

こうして私はやっぱりおまんじゅうを呪うことをやめ、祝うことにしたのであります。



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