2024年 岐阜市議会 6月定例会(6月18日) 一般質問 「総合窓口受付業務の民間委託について」

○ 議長
2番、可児隆 君。

○ 可児隆 岐阜市議会議員
 議長のお許し得ましたので、大きく分けて4つの質問をさせて頂きます。
 まず、最初に、市民課 総合窓口 受付業務の民間委託について、岐阜市役所の市民課 総合窓口は、現在、パーソル・テンプスタッフ株式会社に業務委託をしていると認識しています。
 パーソル・テンプスタッフ株式会社は、労働者派遣事業も行っており、同社のwebサイト上に公表している、「パーソル・テンプスタッフの派遣事業状況」によると、同社の岐阜オフィスでは、2022年度、1日8時間あたりの労働者派遣の料金額の平均が、16,600円。
 そして、派遣労働者の賃金額の平均が、11,304円となっています。
 この結果から、料金と賃金の差額を試算すると、労働者賃金のマージン率は、31.9%ということになります。
 1985年以前の日本では、労働者派遣事業は、法的に認められていませんでしたが、2003年に
は、製造業への派遣解禁、最終的には派遣法の適用される26業種の派遣期間の制限3年を撤廃して、無制限となり、非正規労働の拡大に一層の拍車をかけました。
 この、労働者派遣事業の問題点は、本来、労働者に支払うべき賃金から中抜きをして、労働者
派遣事業者の利潤とするため、低賃金労働者を増やしてしまうこと、そして、労働市場に於いて、供給量を増やすことにより、二重の意味での賃金への下方圧力がかかってしまうことです。
 立命館大学大学院の大田英明 特任教授の論文『日本の非正規雇用拡大に伴う経済低迷 「失われた30 年」の背景』では、労働者派遣事業を含む、非正規雇用の割合が増えるほど、賃金水準、可処分所得、家計支出が低下し、GDP成長率が鈍化するので、自治体などの公的部門が非正規の労働者の割合を増やすことは、国民貧困化政策を行っていることと同じだと結論付けています。
 そこで、岐阜市 総合受付窓口の業務委託についてです。
 この業務委託は、前述の大田英明 特任教授が、経済成長を鈍化させると警告する、非正規雇用の増加を、自治体である、岐阜市が採用しているという例です。
 岐阜市民総合窓口受付業務の業務委託は、岐阜市役所が、「歩かせない」、「書かせない」、「待たせない」窓口の推進と、市民サービスの向上を図る、また、サービス・レベルの標準化や、繁忙期、閑散期の柔軟な対応を可能とするため、民間活力を活用するとして、公募型プロポーザル方式にて、業者選定をしています。
 令和6年10月1日~令和10年1月31日を業務履行期間として、13億5,415万3,900円の予定価格とし、3社が参加し、前述のパーソル・テンプスタッフ社が選定されています。
 この窓口受付業務は、公募型プロポーザル方式で、業務委託する必要がある業務なのか、疑問です。
 自治体によっては、プロポーザル方式を採用する業務は、高度な創造性、技術力または専門的な技術、もしくは、経験を必要とする業務、また、自治体に於いて、発注使用を定めることが困難であるなど、標準的な業務の実施方法が定められていない業務と定義しています。
 この定義付けは、当然で、このような定義が無いと、市役所の仕事は全て、公募型プロポーザル方式での選定となり、業務委託業者にマージンさえ払えば、業務を丸投げで済んでしまいます。
 求人情報誌「タウンワーク」によると、窓口のスタッフ業務の時給は、1,050円~1,250円とあります。
 とても、専門職の時給ではありません。
 ちなみに、2023年度 職員区分別 時給データによると、正規職員は、時間給3,521円。
 フルタイムの会計年度任用職員は、1,968円。
 パートタイムA 会計年度任用職員は、1,732円とのことです。
 冒頭で紹介させて頂いた、労働者派遣事業者へのマージン率31.9%で試算すると、パートタイムA 会計年度任用職員の時給1,732円から、マージン率31.9%の553円を差し引くと、時給1179円。
 求人情報の窓口スタッフ時給の、まさに、範囲内です。
 労働者派遣事業者への委託は、民間活力や指導力でサービスを向上するという理由もあるのでしょうが、特殊技術を必要としない受付業務や案内業務で業務委託する意図が見えません。
 この、総合窓口受付業務の場合、前述のマージン率で試算すると、4年間で4億3200万円が事業者に支払われることになります。
 無駄な支出に思えてなりません。
 このように、この、総合窓口受付業務が1つの例です。
 岐阜市の経済を発展させるためには、自治体が率先して、まずは、会計年度任用職員の年収を上げるため、時給を上げる。
 会計年度任用職員を正規職員として採用する。
 労働者派遣業者への業務委託は、端末操作などの専門分野に限り、フルタイム会計年度任用職員を増員する、などの政策が必要と思われます。
 そこで、市民生活部長に2点、ご質問します。
 1点目、市民課 総合窓口受付業務は、市職員のみで実現できるものであり、民間委託事業者に委託することでしか得られない効果が何なのかお答え下さい。
 2点目、今後、業務委託を止め、市職員が補う形で、切り替えるお考えは無いのか、お答え
下さい。
 労働者派遣事業も行っている民間事業者への業務委託が及ぼす「負の効果」を訴え、最初の質問を終わります。

○ 議長
市民生活部長、田中啓太郎 君。

○ 田中啓太郎 市民生活部長
 総合窓口 受付業務の民間委託についての2点のご質問は、関連がありますので、一括してお答えを致します。
 庁舎1階の総合窓口は、来庁者に、「便利で優しい窓口サービスの提供」をコンセプトに、「歩かせない」、「書かせない」、「待たせない」窓口を促進する中、本年5月実施の来庁者アンケートでも、98%以上の方から、「とても良い」、「良い」、と引き続き、高い満足度を示す回答を頂いております。
 総合窓口は、旧庁舎から窓口数を大幅に増やし、従来から市民課で取り扱っておりました、住民異動や戸籍の届け出などの業務に加え、国民健康保険や子供福祉に関する業務について、出生や婚姻、転入といった、7つのライフ・イベントにかかる、39種類91項目の手続きをワンストップで行っております。
 この、総合窓口では、住民票の写しや、戸籍謄本などの証明に加え、税務証明書の発行、また、パスポートの申請や、マイナンバーカード関連の他、その一角にお悔やみコーナーを設置し、身近な方が亡くなられた際、ご遺族等が安心して必要な手続きを進められるよう、グリーフ・ケアに配慮しながら、その、トータル・サポートを行っております。
 本市では、こうした、総合窓口を実現するには、従事者や、従事者の安定的な供給が可能であって、併せて、業務に対する高度な知識、スキル等を持つ、民間事業者活用が有用であると考え、当初より、正職員等の増員や、民間からの労働者派遣は、利用しないことと致しました。
 そこで、国が示す、公共サービス改革基本方針に沿って、偽装請負とならないような、詳細な仕様を定め、民間委託する総合窓口受付 業務委託として、事業を進めてきたところであります。
 当該業務につきましては、特に高度な技術的知識や経験に基づく判断を必要とすることから、岐阜市 公契約条例の趣旨に留意し、岐阜市プロポーザル方式ガイドラインの公平性、競争性及び透明性の確保の3つの基本原則や、対象基準等に基づき、公募型プロポーザル方式により参加事業者を募ったところであります。
 また、当該業務は、企画提案が肝要であることから、学識経験者等の外部委員と職員で構成する審査委員会に於いて、企画提案を含む要素により評価する選定を経て、最優秀者に特定された民間事業者と協議し、随意契約を結んでおります。
 こうしたプロセスや委託契約の締結により、民間活力を活用したサービス・レベルの標準化や繁忙機とそうでない時期の柔軟な対応を可能とする窓口体制の確立を実現することができております。
 具体的に申し上げますと、手続きについてモデルケースに於ける検証では、約3割の時間短縮を図ることができております。
 窓口受付案内員であるコンシェルジュの配置、お手持ちのスマートフォン等でリアルタイムに窓口の混雑状況が確認できる、岐阜市 総合窓口 混雑情報サイト「岐阜市Now」の導入も実現致しました。
 また、ほぼ1年を通し、戸籍の届け出受付や、住民票の移し等の証明書を交付する窓口サービスを提供できております。
 さらに、郵送請求に関する業務や、市民の皆様からの問い合わせ等への電話対応業務、住民異動届等の端末による業務についても併せて委託をしております。
 一方で、本市職員は最終審査や決済を行うと共に、お悔やみハンドブックの作成や、窓口DXの推進等の企画調整業務、加えまして、お悔やみコーナーや養子縁組届等、より専門性が高く、幅広い知識を要する業務では、窓口業務も担っております。
 今般、締結を致しました、第2期の委託契約に於きましては、特に「書かせない」窓口を推進し、ひいては、「歩かせない」、「書かせない」、「待たせない」窓口、その進化を図ることとしており、委託契約に基づき、その実現を図って参りたいと考えております。
 市民課の総合窓口受付業務は、労働者派遣事業によるものではなく、委託事業でありますが、いずれにせよ、受託事業者との定期及び随時の協議調整の機会等を通じ、今後も高い水準の市民サービスが提供できるよう取り組んで参ります。

○ 議長
2番、可児隆 君。

○ 可児隆 岐阜市議会議員
 ご丁寧なご回答、本当にありがとうございます。
 再質問がありましたが、先ほど、堀田先生と同質問でしたので、取り消しました。
 ご回答頂いた点につき、数項目、意見要望を述べさせて頂きます。
 まず、市民課 総合窓口受付業務の民間委託ですが、ご返答頂いた、市民課 総合窓口受付業務を公募型プロポーザル方式で民間に委託した目的や、その効果や評価について、よく理解できました。
 しかし、問題は、費用対効果を指摘させて頂いているのであって、この、業務委託で、令和6年10月1日から令和10年1月末までの3年4ヶ月で、およそ13億5,000万円の税金が使われるということ、月間3,400万円です。
 また、マージン率から試算する、業者支払い月間金額は、その1/3の1,060万円、毎月、これだけの人件費やマージンを支払えば、民間利用に於いて、当然の効果だと思います。
 逆に、月間1,060万円、年間1億2,700万円の委託経費の費用効果として、具体的な数字で報告された、手続時間の3割削減では、効果が乏しく、民間の発想力なども見えません。
 令和10年2月以降の窓口受付業務についても、また、プロポーザル方式が採用され、過去の実績という点で勝る、現行業者が継続することが目に見えています。
 まさに、随意契約です。
 これだけの税金を使用するのであれば、提案させて頂いた通り、市役所職員の増員、業者に支払うマージン金額を、能力の向上のために研修などに利用し、その研修で民間力や感覚を身につけ、より良いサービスを提供できる組織を作る、といった方向性の方が、人材育成にも繋がり、将来的に岐阜市の財産になると思っております。
 高齢化が進み、市役所でのサービスが多様化する、今後、予想される市役所のあり方を実現するためにも、税金の使用は持続可能な案件で、使用すべきと考えます。
 公募型プロポーザル方式の採用する案件か否かの検討を実行して頂きますよう、お願いすると同時に、質問の中で提案させて頂いた通り、岐阜市の経済を発展させるため、特殊能力や技能を必要としない案件には、会計年度任用職員の雇用の推進、または、フルタイム会計年度任用職員の採用を優先的にご検討頂けるようお願いいたします。


総合窓口 受付業務 時給比較(表)


総合窓口 受付業務 時給比較(グラフ)