2024年 岐阜市議会 6月定例会(6月18日) 一般質問 「不妊治療に対する援助及び助成について」

○ 可児隆 岐阜市議会議員
 次に、少子化対策に繋がる、不妊治療に関わる項目について質問します。
 厚生労働省が、2023年に公表した、不妊治療の実態に関する調査研究、最終報告書によると、2023年、日本に於ける、不妊治療の人数は約45万人と推定されています。
 また、この報告書によると、不妊治療を受けたことがある、または、現在、受けている夫婦は、全夫婦数の22.7%に上ります。
 不妊治療の実施件数は、年々増加しており、2010年には、約25万件であったのが、2023年には、約45万件まで増加しています。
 この増加は、晩婚化や晩産化の進展、不妊治療の技術の進歩などが背景にあると考えられますが、子供のいない夫婦の28.2%が、不妊治療を受けているということです。
 その実態を把握し、時代に合った援助や助成を改善することが急務と考えます。
 不妊治療の費用については、2022年4月より、不妊治療に対する保険適用が拡大され、これまでは保険の適用範囲外だった人口受精など、一般不妊治療の他、体外受精や顕微受精などの生殖補助医療にも保険が適用されることになりました。
 保険適用後は、自己負担が3割となり、不妊治療のハードルは、低くなりつつあります。
 しかし、その保険適用には条件があり、その条件は、不妊治療の対象となる年齢が、治療開始の時点で、女性が43歳未満であることです。
 その上、保険が適用される回数は、女性が40歳未満の場合、子供1人に対して、最大6回まで、40歳から43歳未満の場合は、最大3回までとなっています。
 これは、女性が年齢が上がるにつれて、体外受精の成功率が下がることや、43歳を過ぎると、体外受精で出産に至る割合が5%以下になることが、年齢制限を設ける理由だということです。
 2020年4月の不妊治療保険適用以前は、この岐阜市にも、特定不妊治療助成制度があり、初回医療費最大30万円の助成などが支給されておりました。
 この助成にも、やはり年齢や回数に縛りが設けられており、出産を切望する方が、継続で治療を受けられるという目的には、100%寄り添ったものではあったか疑問が残ります。
 どの政策も同様ですが、制度化したことが成功ではなく、その制度が実態と一致し、効果として現れることが重要と考えます。
 これから出産を切望する方が不安無く、継続して治療を受けられているのか、保険適用後の不妊治療の自己負担費用がいくらくらいなのか、また、その費用や、治療に関する時間などが、生活にどれほどの負担になっているのかついて、実例を基にを紹介したいと思います。
 ここに、実際に不妊治療を受診されている方からお預かりした、2年間半の領収書です。
 私、これを見てね、すごい量なんですけれども、私も、実は、幼少の頃、岐阜大学病院に毎週1回、母親に連れられて通院してました。
 体が弱いこともあって、随分、親に迷惑をかけましたが、いつも、母親に付き添っていって頂きました。
 それで、父が死んで、父の書類の整理をしていたら、缶缶のケースが出てきました。
 その缶缶のケースを、蓋を開けてみたら、私の領収書、医療費の領収書だけが、ポンポンに入ってました。
 数えてみると、何枚もありましたが、合計はきっと、100万は超えてる数字だと思います。
 本当にね、私が、ここまで育ったのも、父親のおかげで、本当に苦労をかけて、私を育ててくれて、そして、病院まで、何も言わずに連れてくれて、こうして、今、あるのも、両親のおかげ、そして、皆さんのおかげだと思っております。
 このようなね、領収書が、ご夫婦はもちろん、金銭的にも精神的にも大変でしょうが、もし、お子さんがね、授かって、お子さんが、そういう風に思って頂いてね、私も、涙を流しましたが、そのようなね、関係であることを本当に切望します。
 ここで紹介する例は、結婚後5年経過、3年間、自然妊娠を試みましたが、未だ懐妊されず、現在も治療を継続されています。
 不妊治療は、結婚後3年目の婦人検診で、「妊娠が難しいのでは?」と診断された2022年の2月から始められました。
 当時は、まだ保険適用がされておらず、2022年2月8日の初診から3月末までに、初回検査を含め、合計4回通院し、6,080円を自費で支払いされていました。
 保険適用後の2022年4月からは、不妊治療が保険適用になったこと、また、友達夫婦の子供がいる家庭の暮らしにも、憧れを感じ、夫婦で「子供が出来るまで頑張ろう」と決意し、その年から本格的に不妊治療を受診しています。
 その年の通院は、合計23回、10日に1回の割合で通院し、保険適用ですが、2022年には、合計6万4,210円を自費で支払っています。
 紹介している方の年齢が30歳の前半ということで、40歳未満という年齢的な縛りには焦りはなかったのですが、不妊治療の効果がなかなか現れず、採卵、採精から体外受精、顕微受精、受精卵、胚培養、胚移植までの一連の流れに於いて、胚移植まで行った回数で、数えられる治療の回数が、保険適用では6回と決められており、治療が2回、3回と重なると、残された保険適用回数には、ストレスを感じているとのことです。
 2022年から「治療を無駄にしない」、また、「子供がいる家庭が欲しい」という気持ちがさらに強くなったため、2023年からは、排卵日に合わせた治療を優先するため、正規職員を辞め、就業日や就業時間に融通の利くアルバイトに変更し、結果、2023年の通院回数は、60回、支払った自費も47万3,869円と高額になってしまいました。
 2023年10月28日から11月6日に至っては、実に、10日連続で通院しています。
 当然、経済的にも精神的にも、苦しくなったということです。
 現在も治療の甲斐もなく、不妊治療を継続しているとのことで、2024年の4月時点での治療費総額は59万5,538円、前述の治療の回数も合計4回となり、保険適用6回にあと2回で、効果が無ければ、以降は自費となることから、子供を諦めることも検討しなければならないとのことです。
 また、会社を休む際に、不妊治療という理由で、心情的にも使い辛く、企業側の理解も無く、治療のためには退職という流れになるという現状も認識して頂きたいということです。
 岐阜市内の医療機関に、不妊治療に関する現状の問題点を問い合わせしましたが、やはり、費用面と仕事の治療の両立が困難な面を指摘されます。
 少子化対策として、手当てや支援拡充、男性育取得促進や働き方改革など、様々な対策が出されていますが、その1つ前の「不妊」というワードにも目を向ける必要があると私は考えます。
 また、国からの政策が、実態として不充分であれば、その部分を補い、また、その実態に寄り添った改善策を提案することが、自治体の役目だと考えます。
 そこで、こども未来部長に2点、ご質問します。
 1点目、全国で45万人と言われる不妊治療の人数、正式な公表はされておらず、人口比率で換算すると、岐阜市の不妊治療の人数は1,200人から、多くて1,800人というデータがあります。
 今、紹介させて頂いた不妊治療の実態を確認して頂いた上で、現在、不妊治療されている方、また、これから不妊治療を受ける方に対し、岐阜市として、保険適用前に助成されていたような、不妊治療助成制度が、独自に必要と思われたか、お答え下さい。
 2点目、厚生労働省のデータによると、2022年の出産平均年齢は30.9歳、1975年の出産平均年齢25.7歳から、47年間で、5.2歳も上昇しています。
 また、2020年の40代の女性の出産は、約5万人と発表されています。
 このデータからも、不妊治療の保険適用条件にある、40歳から43歳という年齢制限や限られた治療回数を改善する余地があると考えますが、岐阜市のお考えをお答え下さい。
 6月5日に厚生労働省が発表された、2023年の日本の出生率が1.2人と過去最低になりました。
 東京では1を切ってるそうです。
 出生率の低下が問題になっている中、奇跡の町と紹介された岡山県 奈義町の出生率は、2019年が2.95人です。
 保育園料の減額や3人目保育料無償、高校生の奨学金支給など、町民に寄り添った自治体の経済支援が、結果として身を結んだ例です。
 魅力作りは箱物やイベントの開催ばかりではありません。
 住んでいて良かった、住みたいと考える、自治体独自の考えた支援も、魅力づくりの重要な要素だと思います。
 岐阜市から発信できるメッセージとして、不妊治療に対する支援制度の設立、保険適用の年齢や治療回数の条件緩和を国に対する意見書など、ご検討頂くことをお願いし、不妊治療に関する質問を終わります。

○ 議長
子ども未来部長、髙橋弘行 君。

○ 髙橋弘行 子ども未来部長
 不妊治療に関する、2点のご質問にお答え致します。
 まず、1点目の不妊治療が保険適用された後の経済的負担についてでございます。
 不妊治療は、身体面や精神面、経済面の負担感と共に、妊娠、出産に至らない辛さ、夫婦間の関係性の変化、生活と治療の調整、治療の休息や終結の決断など、様々な悩みを伴うことがあると伺っており、とても、大変な治療であると認識しております。
 議員、ご案内の通り、不妊治療については、令和4年4月から保険適用となったことにより、自己負担額が、それまでの全額負担から3割負担となったことで、経済的負担が軽減されると共に、これまで、経済的理由により、不妊治療に二の足を踏んでみえた方に対する受診へのハードルが低くなったと考えております。
 また、岐阜県に於かれましては、令和5年6月より、保険を適用して行った、特定不妊治療及び特定不妊治療に伴い、保険を適用して行った男性不妊治療に対して、支払った医療費の自己負担分、いわゆる、3割負担分について、10万円を上限に助成を開始されております。
 さらに、治療費が保険適用されたことにより、医療費が一定以上の条件を超えた際に返還される、国の高額療養費制度が利用できることから、1ヶ月の自己負担額が基準を超える方は、この制度を活用することで、より負担を軽減することができます。
 このように、保険適用となったことにより、所得に関わらず、不妊治療にかかる経済的負担を軽減することができ、安心して治療を受けられる環境が整ってきたと考えております。
 次に、2点目の、年齢や治療回数の制限についてお答え致します。
 厚生労働省が実施した、有識者会議、「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」の中で、女性の年齢と妊娠出産に伴うリスクについて検討されており、その検討内容を一部ご紹介致します。
 妊産婦死亡率は、30代半ばでは、出産10万件あたり約6件で推移しているが、37歳以降には10件を超え、さらに、42歳で27.1件、43歳で38件と大幅に増加すること。
 また、特定不妊治療を行った場合の流産率は、40歳では3回に1回以上、43歳では2回に1回以上と高い割合で流産が起きていること。
 さらに、妊娠高血圧症候群や前置胎盤などの産科合併症についても、年齢が高くなるに伴って、その発生頻度が高くなること。
 加えて、治療回数の制限に関しても、特定不妊治療を受けた方の累積分娩割合は、6回までは回数を重ねるごとに増加する傾向にあるものの、6回を超えるとその増加傾向は緩慢となり、分娩に至った方の内、約90%は6回までの治療で妊娠出産に至っていること。
 また、30歳から34歳及び35歳から39歳の階層に於いては、治療階層を回数を重ねるにつれて、累積分娩割合は増加しているものの、40歳以上では、治療回数を重ねても累積分娩は割合は、ほとんど増加しないということなどが示され、こうした医学的知見を踏まえ、国は助成回数について、年齢による差を設け、初めて治療を開始する日の年齢が40歳未満の場合は6回まで、40歳以上43歳未満の場合は3回までとしたとのことであります。
 議員、ご質問の、年齢や治療回数の制限につきましては、国がこうした、母体の安全性や治療の有効性を考慮し、導入したものを、保険適用後も踏襲することとしたものであり、本市に於いて独自に変更することは考えておりません。
 何れに致しましても、本市としましては、不妊に悩む方々に対し、不妊に関する専門相談員や産婦人科医を配置している、岐阜県不妊不育症相談センターをご紹介するなど、少しでも安心して治療を受けていけるよう、必要な情報提供に務めて参ります。

○ 可児隆 岐阜市議会議員
 次に、不妊治療については、本当に、教科書通りのご返答、ありがとうございます。
 年齢や治療回数の制限が、どのような統計を基に算出されたか、承知しております。
 3年間の子供を授かるために努力した経緯、経験から、男性不妊治療や検査に関する助成や高額医療費の返還請求などを、全て認識されています。
 今回、不妊治療の実例を紹介させて頂いたのは、出産を希望する方が、実際に、不妊治療を受診し、負担になったことや、制限されること、正規職員の仕事が維持できない状況になることの実態を、身近な例として、共有させて頂きたかったからです。
 国は統計に沿った形で、何歳まで何回までと、制度を簡単に作りますが、治療を受けてる当事者には、「それ以上は無駄」と言われているような制限です。
 再三訴えますが、国の大まかな制度に細かな寄り添いをし、切望する市民のために何ができるのかを考え、実行することが、地方自治の役割ではないでしょうか。
 国の制度をね、復唱し、「こんな制度がありますよ」が答えでは、奈義町のような奇跡は生まれないと思います。
 問題点を分析し、何かいい方法が無いかを考えることが第一歩です。
 今、話題のChatGPTに、「岐阜市の問題点と将来は?」と訊くと、「高齢化、人口減少、若年層の労働力の流出」というワードが出てきます。
 このワードはね、どこも同じかもしれませんが、今、岐阜市が何かの新しいことを検討し、実行しないと衰退の一途を辿ります。
 岐阜市に住めば、納得行くまで不妊の治療が受けられる、という独自の政策を考えることも、将来の岐阜市のための方向ではないでしょうか。
 今後のご返答に、この言葉を繰り返しです。
 やらないことを前提にし、その理由を考えるより、どうしたらできるのかを考えましょう。
 そろそろ、市民のために真剣になっていきたいと思います。