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独逸散文写真集

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ドイツの暮らしのなかで見えた、さまざまな情景、日本とは違う習慣、文化。 その瞬間を写真に切り取り、短い散文とともにつづります。 一年を通し、全12作。ぜひお手に取って、ご覧になっ… もっと読む
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春を告ぐもの

まるで 草木が芽吹くように―― 冬の間、かたく扉を閉ざしていた店たちが、春の訪れとともにいっせいに開く それは「アイスカフェ」 あたたかな陽気とアイスカフェのオープンが、私たちに春を告げる 家に閉じこもっていた人々も外へ 久しぶりに顔をのぞかせた、太陽に会うために はしゃぐ子供も デートのカップルも 話好きな老婦人たちも その手には必ず、色とりどりのアイスクリームが握られている 花とアイスが、ドイツの春をカラフルに彩る ドイツへ来て、初めて感じた異国文化がこ

そして、再びの春|『独逸散文写真集』あとがき

日本で暮らしていた頃。 「ドイツの春」を私に教えてくれたのは『文化』でした。 ヘルマン・ヘッセの小説 ハイネの詩 シューマンの交響曲 夏に台風の多い日本と違い、ドイツは春にこそ嵐が起こり、天気が崩れやすいこと。 五月にこそ、のどかさと春の爛漫が訪れること。 そうして想像の中だけにあったドイツの春を、私はすでに七度も体感しています。 3月はイースターを祝い、4月は天気に注視しながら、待ちに待ったとばかりにアイス店へと足を運ぶ。大量の白アスパラを買い込んではスープを作り、そ