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ボケ〜っとした自分と一緒にいたい
真夜中に、聞いたことのない音で目が覚める。
サーサー、サー、トントン、トン
トン、サー、サー、トントン、サー
明かりをつけて音のする方を見てみると
寝室の障子をカニが歩いていた。
よくみると、右手のハサミがない。
洗面器に保護して外に出ていただいたが、
小さな身体で、こちらに戦闘態勢で向かってくるような
気の強いカニだった。
翌朝、故郷の母から、
ササユリが咲いたという写メが送られてきたので、
その返事に、このカニの写真を送った。
「この子は片ハサミを失ってたよ。いろいろサバイバルしてきたからか、だいぶん気が強いカニだった。」
「そうか…カニ生も苦難続き…安泰じゃないんだね。」
母は、カニに同情する。
「そうだね。ボケ〜っとした危機感なしのカニもいるし、カニ生もいろいろだね。」
先日お風呂場で出会った、
ハサミはでかいのにやたらボケ〜っとしていたカニの写真も送った。
「ボケ〜っとしたカニ」
それをみた母が言う。
「ボケ~としてたほうが幸せそう。」
ハッとした。
ほんとだ。
ボケ〜っとしてた方がしあわせそうだ。
このところのわたしは、
忙しいとかなんとか言って
ボケ〜っとし忘れていた。
父の他界後、
事務仕事が忙しいとぼやく母も
ボケ〜っとする間がなかったのではなかろうか。
ボケ〜っとしないと
命のリズムが遠くなる。
がんばることがいいことのようによく言われるが
本当のところの人生のしあわせは
ボケ〜っからやってくるのだ。
と
わたしは思っている。
ボケ〜っの真ん中から
命が喜ぶ力が生まれてくるのだ。
わたしは、ボケ〜っとした自分と一緒に過ごして
ボケ〜っから自然に生まれてくる物語をみてみたい。
さあ、ボケ〜っとしよう!
頭であれこれ考えても仕方がない。
大きな流れを信じて
安心してボケ〜っとしよう。
あおきさとみ
カニ宇宙 https://kani-uchu.webnode.jp/
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