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わたしの川にはカニがすんいる

箪笥の奥から
学生時代にもらった
手づくりの手提げ袋がでてきた。

なつかしい。

学生時代は仙台に住んでいて
自然食の居酒屋さんで
バイトしていた。

今から25年以上前、
自然食にこだわった居酒屋さんは
珍しかった。

とにかくマスターが
真っ直ぐな愛のあるすばらしい人で
そこに集まるバイトのメンバーも常連さんも
みんなゆかいな人ばかりで。

自然食の野菜の濃厚な味や
新鮮なお魚と日本酒が相性がいいってこと
夜中に飲む赤ワインが美味しいってことや
食べ物の物語に感謝すること
みんなで一緒に創っていく楽しさや
いろんな大人がいると言うこと

その後の人生に必要な
たくさんのものを学び体験させてもらった。

そこでバイトしていた
先輩のおねえさんが
その手提げ袋を
作ってくれたのだ。

よくみると内側の布が
カニ模様ではないか!
たくさん並ぶカニの模様の布を見て
ときめいた。

そういえば
その頃のわたしは、
まだ若くて顔が丸々で
酔っ払った赤い顔で笑うと
「カニに似ている」と
よく常連さんに言われていたのだ。

今思えば
女子大生に向かって
カニに似てると言う常連さんも
どうかと思うが
わたしはカニと言われてまんざらでもなく
両手を顔の横に広げて
カニー!とカニのモノマネ?をやっていた記憶がある。

だから、おねえさんは、
カニ模様の布を選んでくれたのだ。

まさか
20数年後に
わたしがカニカニいってばかりのおばさんになり、
カニー!とときめきながら
この裏地をながめることになろうとは、
その頃誰が想像しただろう。

そういえば、
小学校の頃は
「たしカニ!」
「ひそカニ!」
「さわやカニ!」
など言いながら、
「カニ!」の部分で両手でピースする
というのも自分の中で流行っていた。

実は子どもの頃から
カニには縁があったのだ。

人生の奥底には
脈々とその人の流れがある。
ひとつの人生にはひとつの川が流れている。

わたしの人生の奥底にも
わたしの川が流れていて
そこにはずっと昔からカニが住んでいたのだ。

わたしが
いい子であろうが
わるい子であろうが
がんばろうが逃げようが
飲んだくれようが旅にでようが
歌おうが泣こうが
結婚しようが離婚しようが
移住しようが再婚しようが
わたしがどんなであっても

川は変わらず
脈々と流れているのだ。

その川のことを思うと
安心する。

わたしの中には
ゆるぎなく豊かな川が流れていて
そこにはカニが住んでいるのだ。

あおきさとみ
カニ宇宙 https://kani-uchu.webnode.jp/

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