ドラコ奇譚:ヨルズの目覚め
息を呑んだ…
「あ」
昨日と変わりない、いたって平凡な昼下がりのことだった。深淵街の中層、大穴の出口に向かう昇降機乗り場にほど近いエリアの、誰にも見つからないような場所にそれは居た。壊れかけの自販機が点滅する、うら悲しい空間だった。ぼろぼろの外套を着込んで、朽ちた布で顔を覆っている。褐色に澱んだ鱗をまとってたたずむ、変わり果てた姿の貴方を見つけた。
「おい、」
感極まって、言葉がこぼれた。
「コスモス……なのか」
それは私の声に応えるように顔を上げて、こちらをじっと見た。生き