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甘い言葉には責任が伴う

 noteのハッシュタグに、#都合のいい言葉をかけてくる大人は優しいんじゃなくて好かれたいだけ、というものを見つけました。何だか笑えるハッシュタグですが、このようなハッシュタグの意見が存在する事を踏まえた上で、敢えて発言する都合のいい言葉というものがあれば、それは本当に優しいものになると思いました。

 大学卒業後に、和食の学校という進路をとることになったという話を大人の方にすると、人によって色々な反応が返ってきます。応援して下さる方や、心配される方、面白がる方など、それぞれ社会を経験してきた方々の感覚から、様々な考えをめぐらせるのでしょう。
 その中でも、個人的に一番嬉しかったのが、つくばの某バーテンダーさんが仰った、「飲食店は楽しいからやった方がいいですよ」という言葉でした。その方は、ちゃんとお話をしたのはその時一回だけで、親しい間柄とは言えませんでしたが、ここまでストレートに進路を肯定されて、不意を突かれたのを覚えています。
 思えば、私が飲食業界に飛び込んでいくことに対し、応援して下さる方は多くいらしたのですが、このバーテンダーさんのように、私にとって甘い言葉をかけて下さる方はそれほどいなかったと思います。甘い言葉というものには、人を騙すイメージが付き纏いますが、一方で、真摯に相手に向き合おうとする際、それを発するのには、大きな責任が伴うものであるように感じます。その甘い発言でその人の人生が悪い方向に行ってしまうことを想像すれば、そのような言葉は簡単には投げられないでしょうから。厳しい言葉を言ってくれる人は貴重だみたいなことは、よく言われますが、それは確かにそうなのですが、厳しい言葉というのは、それが外れても言われた側は辛い思いをしませんから、責任なく発することができるとも言えます。なので、私はむしろ、相手を破滅に陥れかねない、甘い言葉を責任もって伝えて下さる大人の方というのは、本当に貴重で、信用できる方なのではないかと思うのです。
 そんな甘い言葉を下さったバーテンダーさんに私は、「大半の方は飲食店は厳しいと仰るんですけどね」とお返しすると、「そんなことは業界を志す人はみんな承知の上ですから、言っても仕方ないでしょう」と、お話をされていました。きっと彼が身を置いている業界は厳しくも楽しいところなのでしょう。彼のお言葉のお陰で、不安を残しながらも、前向きに進路を進めることができました。次彼のお店に行くことがあれば、「この業界は楽しかったです」とお伝えしたいと思います。覚えられているかは分かりませんが、この際どっちでもいいやと思います。

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