YRP野比に住むとは思っていなかった

 最寄駅がYRP野比駅になった。京急線を使うと路線図の端っこの方に載ってるのが見える一際目を引く名前の駅。YRPはどうやら何かの研究所の集まりで、その最寄駅で、地名が野比だからYRP野比のようである。研究所というのはどうやら自己顕示をしたいものらしい。
 生まれも育ちも横浜だった私は、しばしば京急線を利用することがあったのでYRP野比駅を知っていたし、YRP野比駅は縁のなさそうな所だなあと思っていた。1000万人弱の横浜市民の殆どは同じようなことを京急線に乗っていて思っていたと思う。まさか最寄駅になるとは。
 といってもYRPは、YRP野比駅から徒歩で気軽に行けるほどは近くなく、駅前からバスが出ているくらいの距離で、駅周辺は特に変わり映えのするところはない。駅前にはコンビニが立ち、通りには居酒屋が数軒並び、私には前後十年縁もなさそうな専門店がぽつり、ぽつりと居座っている。自宅に向けて暫く歩いていると住宅地に入り、その奥には畑と工場が立ち並ぶ。
 偶々用事があって隣の長沢駅に降り立った。長沢駅は長沢という地名なので長沢駅。YRPといった類のものはつかない。駅前にはドラッグストアが立ち、通りには居酒屋が数軒並び…おおよそYRP野比駅と変わりはない。
 特異な名前をした駅だったけれど、蓋を開けてみたら他の駅と変わらない、周辺に住む人の移動の拠点、街の賑わいのちょっとした中心になるだけの駅であった。行ったことはないけど、津田沼駅とかもそんな感じだと思う。規模感は分からないけど、駅の周辺はある程度賑わって、少し歩けば住宅地が広がっていて、そこの人の生活を支えている。住んでいる人にとっては何でことのない普通の駅である。
 こけしとか赤べことかも同じようなものかもしれない。人の家に飾ってあると、何でこんなもの飾ってあるんだろうとか思うけれど、その家の人からすれば何かのきっかけで偶々飾っているだけで、何ともない家の風景の一部なのだと思う。通販番組のやたら機能の多いチョッパーとかもそんな感じだろうし、北欧とかもそんなもんなんだと思う。トゥクトゥクとかもそうだろうし、アメリカの宇宙軍とかもそんな感じかもしれない。

 やっぱり宇宙軍は違うかもしれない。

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