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【音盤紹介 vol.8】 Brötzmann / Bennink / Schwarzwaldfahrt

Han Benninkの録音は、その全てが聞き逃してはならないドキュメントである。

森の中に置かれたマイク、それだけで全てが録音されている。
スティックで叩かれる木・岩・地面・そこに在るあらゆるもの、川に沈むシンバル、川に投げられる石。
歩き回りながら吹かれるサックス・クラリネット。
鳥の声、風の音、川の音。

音が始まって、終わり、また始まるのとは全く違う音の在り方。
音は遠ざかり、近づき、また離れ、そして唐突に終わる。
Han Benninkは、何物にも捕われない演奏スタイルと、押し寄せる音の強烈なスウィング感に印象を引っ張られがちだが、音楽とは何か、音楽でないものとは何かを常に追求し続けている演奏家である。
ここでは、Fred Van Hoveがいないことがプラスに働いているように感じられる。
ピアノという楽器は、場面を、そしてイメージを固定する力があまりにも強すぎるからだ。
トラックに分かれているが、それは曲の切り替わりではなく、瞬間瞬間の切り替わりを意味する。
あたかもゴダールの映画を見ているような、不連続性。
何も語られていないのが信じられない、つまりは傑作なのである。
サイトスペシフィックな即興演奏、と言えなくもない。
ここから個人的大名盤 "Tetsu Saïtoh, Michel Doneda / Spring Road 01"まで、遠くないように思う。

再発CDに掲載されているBrötzmannのコメントがまたいい。
以下要約抜粋。
「自然の中で録音してみないか、それはある冬の終わりの思いつきだった。森の中はあまりに寒く、楽器のコンディションも最悪だった。ここにはメッセージなど何もない、ただただ楽しかった。」

断っておくが、Peter BrötzmannやHan Beninnk、ヨーロッパフリーを聞いてみたいという人が最初に聞く一枚では、決してない。
最初に聞くなら、圧倒的に"Nipples"をオススメする。

総評

日本語情報レア度★★★・・・ない、全くない。けれど、汝恐れることなかれ。
必聴度★★★・・・周りの評価など知らぬ、必聴星三つ。
入手困難度☆☆☆・・・マジか、amazonでダウンロードできるなんて、、、

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