【音盤紹介 vol.9】 Irène Schweizer & Mani Neumeier / European Masters Of Improvisation
ド直球なタイトルの1990年録音。
泣く子も痺れる憧れる、イレーネ女史と我らがマニさんのデュオ。
Irène Schweizer Trio(Guru Guru以前のUli Trepteとマニさんとのトリオ)以来、久しぶりの共演なのではなかろうか。
音盤は、おそらくキャプテントリップからでたやつのみ(レーベルのページが壊れていたのでリンクは貼らない)。
一聴して分かるのが、録音の荒さ。
蛍光灯のノイズのような音、大きめなヒスノイズ。
ピアノの上に置いたテープレコーダーで録ったかのような、リハーサルテープの如き音質である。
マイクの位置なのか、ドラムのローが拾えておらず、ハイはジャリッと歪み気味で、スネア・タムはバシャバシャと響く。
それに対し、ピアノの音は輪郭鋭くソリッド。ピアノの録音としては明らかにNGだが、ゴツゴツとした質感が面白い。
現場で聞くとかなり違う印象だったと思われるが、このブートレグ感が演奏のスピード感を2割増しにしているようだ。
イレーネ姐さんのピアノは、複音を鳴らすことは少なく、迷いのない単音フレーズを、時に反復させながら叩きつけていく。ドラムとのDuo録音が多いためか、何処が空いているのかよく知っている人の演奏だ。
ウォーキングするベースに振り下ろされる高音のフレーズの群れは、弾けば弾くほどに速度を増していく。イレーネ姐さんの迫力が、音質の悪さによって倍増している。何とも容赦なきピアノである。
対するマニさん、いつになくフリーな演奏。フリージャズ出身の面目躍如といったところか。と言っても、後半には得意のタムを絡めた転がるような叩きまくりの演奏も登場してくる。いつものユーモラスな雰囲気は控えめ、そんなマニさんもまた良い。
年齢を重ねた上での久しぶりの共演、終始リラックスしたムードで、などとは決してならないあたりに、二人の音楽に対する姿勢・本気度がうかがえる。
ここには、過去を懐かしむようにノスタルジックな演奏をする者はいない。
昔話に花を咲かせるのは、いつも立ち止まった者達だけなのだ。
Irène Schwiezerを聞いてみたいという方は、Intakt Recordsからたくさん音源が出ているので、まずはそちらから聞くことをオススメします。
日本語情報レア度★★★・・・売り切れ在庫なし情報ばかり
必聴度★★☆・・・ジャーマンロック愛過多なので星多めで
入手困難度★★☆・・・レアではあるがプレミアではない、ユニオンで探せばある
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