【音盤紹介 vol. 3】 高橋竹山 / 津軽三味線

自分は青森の生まれだが、特別津軽三味線が好きなわけでもなく、昔から慣れ親しんできたわけでもない。
ただ、高橋竹山の音は、定期的に聞きたくなる。

1973年、渋谷ジァン・ジァンでのライブ。
ここにある音は、日本の伝統芸能の継承なんていう大層なものではないし、民族音楽ライブラリーのような貴重な記録音源でもない。今日、今を生きていくための、生きている音だ。たとえここに津軽三味線の伝統という文脈がなかったとしても(そんなことは当然あり得ないが)、鳴らされている音にいささかも影響を及ぼさないだろう。三味線を好きではじめたわけでない、と竹山は言う。視力をほぼ失い、強烈な差別を受けながらも生きていくために芸を売る。無駄な音、無駄な響きなどあるはずがない。青森で育ったこともあり津軽三味線を聞く機会はあったが、高橋竹山の音は別物だという印象は今も変わらない。

津軽衆らしい自虐の効いた語りもまた良い。竹山にとっては、渋谷に行くのもアメリカに行くのも大畑に行くのも、どれも同じことだったのかもしれない。ただここでの語りは、結構標準語を意識して話していると思うのだが、それは青森の人間にしか分からないだろうか。

必聴度★★★・・・どの音源でもいいから高橋竹山は聞くべき!
入手困難度★☆☆・・・現在買える、買うべき

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