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【音盤紹介 vol. 2】 Tim Barnes / All Acoustics

Tim Barnes: solo percussion
(見出しの写真は裏ジャケ)

Tim Barnes、この人は一体どう認識されているのか。
Pullman、The Tower Recordings、Jim O'Rourkeのバンド、どうもピンとこない。
私が最初にその名前を意識したのは、代々木にあったOff Siteで鳴らされている音に興味を持っていた頃だったと思う。残念ながら、Off Siteでの演奏は見逃してしまったが。
ではいわゆる静音弱音なのかと言われると、それもまたどこかしっくりこない。
私にとってTim Barnesは、即興演奏の人なのである。
そこに静音も弱音もあるというだけだ。
最も気に入っているの演奏は、『Okkyung Lee / Nihm』に収録されている"Deep Blue Knot"。Okkyung Leeのチェロとのデュオで完全即興。
ダイナミクスあふれるフリーな演奏で、ジャズの匂いが全くしない。
自分もこんな音が出せたらと常々思っている。
Okkyung Leeは最高の即興演奏家なので、そのうち書きたいと思う。

All Acousticsは、その名の通り完全生音のソロ演奏だ。
完全ソロ演奏のアルバムは、これしかないのではないだろうか。

1曲目"29 Acoustic Sound Generators For Summer"は、まるで自身のセットを一つ一つ確認するように、スティックが真っ直ぐに振り下ろされる単発的な音から始まる。
次第にタムの上に置かれたシンバルや小物を鳴らす演奏が混在してくる。
小音量になっても、その音はマイクロスコピックな印象を与えない。
小さな音も大きな音もシームレスに繋がっている、ただそこにあり、そこで鳴っている。
ブラシやシンバルの摩擦音を経て、ドラムセット全体を使った大きな演奏へ。
叩くというより、タムの上でスティックをばら撒いたかのような音像。
最後は再び単発的な音が戻ってきて終了。
アフロアメリカンな感じは皆無だが、所々Milford Gravesを思わせる。

2曲目 "Nice On No Frame"。
割れたクラッシュのアタック音、ハイハットのオープンクローズのジャンクな音、タムの上でぐらぐら揺れる小さなシンバルの音、極度にサステインのないタム、お祭りの太鼓のような音。
ここでの演奏は、1曲目とは異なり、鳴らす、聞く、が主軸となっている。
物と物とがぶつかる、擦れる、ミュートされる。
まるでジャズを忘れたPaul Lovensのようだ。
前半部では印象的なシンバルドローンが聞ける。
うねりを伴うフィードバックのような持続音はどうやっているのだろう。
後半、鈴のように鳴るシンバルの余韻の後に訪れる、タムの連打が素晴らしい。
連打でありながらも非連続的で、一音一音が分断されて鳴り響く。

パーカッションソロということもあって取っ付き難いと思われるかもしれないが、聞きどころは多い。
即興演奏をする、聞く人なら尚更だと思う。

日本語情報レア度★☆☆・・・有名人だし情報はそこそこある、はず。
必聴度★★★・・・内容は濃い、ジャズじゃないソロが聞きたい人向け
入手困難度★★☆・・・残念ながら最近は見かけない

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