これ以上わかりやすく書けないオプション取引を始める時に知っておかないといけないこと(用語/概念)(1)

オプション取引は難解な印象がありますが、個別株投資を始めるにも色々な専門用語(指値/成り、信用取引、証拠金、配当/優待権利確定日/権利落ちなどなど)を覚えなければならないのと同じで何かについて得意になるには、その業界の専門用語にある程度習熟しなければならないのは避けられません。現代のトレードは情報戦とも言え、個別株以上に投入した勉強量が結果に反映されるのがオプション取引と思います。

A. 以下がおそらく最低限必要な用語/概念です。(普通の個別株取引でも使われる用語は含まれていません)

  • コール/プット

  • オプションで利益を上げる2つの方法(期中/SQ日)

  • 権利行使価格/プレミアム/権利行使価格と現在の価格との関係(OTM, ATM, ITM)

  • SQ値/SQ日/限月(げんげつ)/期近/期先

  • ボラティリティ (VI)/値動きの仕組み

  • 証拠金

  • ポジション/ポジション組み

  • 合成損益図

B. 以下は可能ならばクリアできるとより有利になると思います。

  • グリークス(ギリシャ文字のこと)

  • デルタ、ガンマ、セータ、ベガ

C. そして以下は本当に興味のある人だけ(私もわかっていません。ぶっちゃけ不要)

  • ブラック=ショールズ式/ブラック=ショールズモデル

今回はAの前半について説明します。
これ以上わかりやすくは書けないぐらい丁寧に書いたので、とても長くなり、かえってわかりにくくなったかもしれません。長いと思う人は一般的な説明サイトや動画を読んでみてください。(どの証券会社も説明のページがありますし、youtubeでもわかりやすい動画があります。)

コール/プット

:コールは買う権利、プットは売る権利 オプションは商品そのものではなく、この権利を取り扱い(売買し)ます(権利がわかりにくければ予約権、予約チケットという認識でも良いと思います)

架空のゲーム機PS6を例に考えてみましょう。1ヶ月後(Xデー)に販売開始予定で定価が10万円(ただしオープン価格)だとします。

コールオプション


あなた(Aさん)はある人(Bさん)からこのような話を持ちかけられます「Xデーが来たらPS6を95000円で購入できることを保証するからその権利を2000円で買わないか?」
PS6が人気が出て手に入りにくなり値段が上がると考え、Xデーに実機を持っていたら10万円以上で転売できると考えたあなたは、怪しげに思いながらも、今2000円払ってもXデーにPS6を95000円で買って10万円で売れば利益5000円から先に払った権利2000円を引いて3000円の利益が出る、と考え「Xデーに必ずPS6を95000円で1台購入できることを約束します」と書かれた権利書をBさんから2000円で購入します。
Aさんは95000円(権利行使価格)のコールオプションを2000円(プレミアム)で買ったことになります。逆にBさんは95000円(権利行使価格)のコールオプションを2000円(プレミアム)で売ったことになります。
この時点でお金のやり取りはAさんがマイナス2000円、Bさんがプラス2000円です(PS6の売買はまだ行われていないからです)

シナリオ1 (Aさんの予想どおり上がる) 

Xデーがやってきて市場でのPS6の価格は11万円となった。
BさんはAさんに「Xデーに必ずPS6を95000円で1台購入できること」を約束していたため、その約束は守らなくてはなりません。したがって、Bさんは泣く泣くPS6を1台11万円で購入し、Aさんに約束の95000円で売ります。
Bさんは95000-110000で1万5000円の損ですが、先に95000円で買う権利(コールオプション)をAさんに2000円で売って代金をもらっているので、差額13000円の損失です
逆にAさんはPS6を95000円で手に入れ11万円ですぐに転売したため15000円の儲けですが、先に先に95000円で買う権利(コールオプション)を2000円支払って購入しているので差額13000円の儲けです
権利を持っているAさんは理論的にはその権利を行使しない(PS6を買わない)ことも可能ですが、権利行使することで儲けとなるので、常識的には権利行使します。
仮にXデーにおける販売流通価格が15万円とか20万円とかに跳ね上がったらAさんは大儲け、Bさんはその金額で1台購入して95000円で売らなければならないので大損です。
(実際は実機やその購入代金は動かず、販売価格と権利行使価格の差額だけがやり取りされますので、CFD(差金決済;Contract For Difference)の一つと考えられます)

シナリオ2 (Aさんの予想に外れてさがる)

 Xデーになってみたら、理由はわからないけれどPS6の販売初日の価格は90000円で出回っていた。
市場で買えばPS6が90000円で買えるのに、Bさんに対し権利行使をしてわざわざ95000円で購入する理由はないのでAさんは権利を行使せず「放棄」する。BさんもAさんが権利を放棄するので95000円で売るためのPS6を1台確保する必要がなくなり、出費は生じない。結果Aさんは前もって購入した権利分2000円の損失。Bさんは先にその権利を売って得た2000円の分ただ儲け。
(つまりBさんはもともとPS6の値段が95000円を切って権利書を売った分だけ儲かると考えていたから権利を売ったのです)
仮にXデーのPS6の価格がどれだけ下がろうとも(6万円とか3万円とか)、95000円での購入権利は行使されず放棄されるので、Aさんの損失、Bさんの利益は2000円に限定されます

ここまでが権利をXデーまで保有していた場合です。(Xデーにおける権利行使/放棄による決済)

シナリオ3

 Xデーが近づくにつれてPS6の評判は高まり、初日の価格は15万円になるのではないか、いや20万円だと噂されています。仮にXデーでの販売価格が20万円となるとすれば、それを95000円で手に入れられることが保証されているなら大儲けです。ですので、その権利(権利書/予約券)を3万円でもいいから売ってくれないかという人(Cさん)が現れます。そこでAさんは考えます。自分の選択肢は (A)今ここで2000円で買った権利をCさんに3万円で売れば28000円の儲けだ。権利行使してそれだけの儲けになるにはXデーでの価格が125000円以上になる必要がある(125000-95000-2000)。自分はさすがにそこまでは上がらないと思うし、もし、逆に販売価格が90000円を切るようなことになったらそもそも2000円の損だから、ここで権利を売ってしまって利益を取ってしまおう。15万円とか20万円になったら自分の判断が間違ってたとして諦めよう。(B)いやいやみなの言うように、20万円、いや30万円まで行くかもしれないから2000円で買ったこの権利はXデーまで手放さない。それで大儲けだ(20万円なら20-9.5-0.2=10万3000円の利益)。万一販売価格が95000円を割っても権利を放棄するから2000円の損害だけで済むんだし、宝くじのようなものだ。
権利を売ってしまえば95000円で購入する権利はCさんのものとなり、XデーにはCさんがBさんから95000円でPS6を購入する権利を有します。
そして、Xデーまでの暴騰を期待して保有し続けても仮に噂がデマで当日95000円を割ったらシナリオ2の結末ということになります。

一方PS6が人気が出ずXデーに95000円を割って権利を売った分の2000円が丸儲けとなると考えていたBさんは気が気ではありません。仮に15万円となれば15万円で仕入れてAさん(もしくはAさんから権利書を買った別の人)に95000円で売るという大変な大損(5万3千円の損)が待ち構えています。95000円の権利行使価格の権利を売って2000円をもらったBさんはXデーになったらその権利を持つ人にPS6を1台確保して95000円で売るという「義務」が課せられています。この義務を解消するには流通している行使価格が95000円の権利書を1枚買い戻して破り捨てるしかありません。残念ながらPS6の価格がすごく上がるという憶測からもともと2000円だった行使価格が95000円の権利を3万円でも買いたい、という人がいる以上買い戻すにはそのぐらいでないと売ってもらえません。しかし、販売価格が15万円になって5万3千円の損になるぐらいなら3万円で権利を買い戻して28000円の損失で済む方が安心して夜も眠れるというもの。Bさんには(A)流通価格(プレミアム)が上がった95000円が行使価格の権利を損を出して買い戻す、もしくは(B)125000円以上には上がらない、場合によれば元々の予想どおり95000円も切る可能性があるから、Xデーまで保有する、の選択肢があり、Aの場合買い戻す際の損失が出ますが、Xデーにいくらで1台確保することになるか分からないという(損失無限大)不安からは解放されることになります。Bの場合、運が良ければシナリオ2となり2000円の儲け、販売価格が120000円となれば12万円で仕入れて95000円で売るので2万5千円の損失、先に権利を売った2000円があるので、2万3000円の損失となり、途中(期中)に権利を3万円で買い戻すよりは少ない損失で済みますが、あくまで結果論で、最悪いくら損が出るのか、2000円の儲けが手元に残るのかはXデーを迎えるまでわかりません。

シナリオ4

 事前にPS6は失敗作だからあまり売れないだろうから90000円ぐらいではないかという噂が流れ始める。
AさんはこのままXデーまで権利を保有してもそうなれば結局、権利行使はしない(放棄)ので2000分の損です。そこでもし仮に、別の人(Cさん)が現れて、「世の中の噂はそうだけど、結局蓋を開けたら10万円前後になると私は思う。だから、あなたに取っては紙屑になる可能性のある権利書を私に1000円で売ってくれないか。2000円が損失となるぐらいなら、多少損が減らせるでしょう?」と持ちかけます。ここでのAさんの選択肢は(A)最後まで保有してシナリオ1か2の結末を迎える (B)ここでCさんに権利を売ってしまって損失を2000-1000=1000円に下げる。この場合、結局Xデーに販売価格が10万円を超えても権利は他の人に譲ってしまっているので儲けは得られない。(C)この後、噂の方向が逆転して値が高騰するのではという噂になるかもしれないからその時に権利を途中(期中)に売って利益を得ることを目論む(シナリオ3)の3つです。
最終的な実機の販売価格がいくらになるかは読めませんが、権利を2000円という安い値段で購入しているので、最悪損失は2000円限定と考えれば、途中で権利書の値段が上がる利益や販売価格が97000円以上となりXデーに利益が出る可能性(場合によっては大儲け)を考えると途中(期中)で権利を他者に譲るメリットはあまりないかもしれません。
Bさんにとっては元々販売価格が95000を割ると考えたからその行使価格でのコールオプション(買う権利)を他者に売ったわけなので、シナリオどおりなら最後まで保有すれば2000円の儲けです。ただ、最初に売った時にくらべて、販売価格が95000円を超える可能性が許容できるレベルを超えてきていると考えるなら、当然、権利書の取引価格も2000を超えてくる可能性があり、それから買い戻すなら損失となるので、1000円でなら売る人がいる今、権利を1000円で買い戻して、差額1000円の利益を確定した上で、Xデーに実機本体を確保する責任をなくすという手はあります。Bさんにとっては先に2000円をもらうことでXデーに実機を確保する責任(つまり理論的には損失無限大)を背負っているのですから、そのリスクが生じる可能性ともらった2000円を100%手に入れるメリットとの天秤を常に考える必要があります。

シナリオ3、4は期中に権利を売買することで、権利の流通価格(プレミアム)の変動による差額から利益を得る方法です。

つまりコールオプションは買った場合権利行使価格より上がれば利益(無限大)下がれば損失(プレミアム分限定)、売った場合はその逆です。
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プットオプション

プットは逆で売る権利(正確にいうと買い取ってもらえる権利)ですからBさん(売り手)はAさんに対して「Xデーが来たらPS6を11万円で必ず買い取ることを保証するからその権利を5000円で買わないか?」ということです。AさんはXデーにPS6を10万5000円以下で仕入れることができると見込めばそのプットオプションを購入します。

シナリオ1

Xデーに権利行使価格よりも下がっていた場合。Xデーには11万円以下であれば権利行使をし10万円であれ8万円であれその時の流通価格で実機を確保、Bさんに11万円で買い取ってもらうことで利益を得ます。(実際は差額利益ー権利購入価格(5000円)が利益。つまりXデーでの販売価格がひっくければ低いほど利益が大きい。)
Bさんにとっては市場で安く買えるものを11万円で購入するという約束の実行なので、その差額が損失となります。PS6の場合は理論上販売日の価格が0円以下にはなり得ないので、最大損失は11万円です。日経も理論上0円以下にはなりませんので、最大損失は権利行使価格分全額ですが、一般的には損失は無限大と表現されます。
(実際は実機やその購入代金はうごかず販売価格と権利行使価格の差額だけがやり取りされます)

シナリオ2

Xデーの販売価格が11万円以上なら、それで実機を購入して11万円で買い取ってもらっても損になるので、Aさんは権利を放棄し、権利購入代金だけが損(損失限定)
Bさんは権利を売った代金が丸儲け(最大利益限定)となります。

つまりプットオプションは買った場合権利行使価格より下がれば利益(無限大)上がれば損失(プレミアム分限定)、売った場合はその逆です。

期中変動についてのシナリオは皆さんで考えてみてください。

以上をまとめると

オプションで利益を上げる2つの方法(期中/SQ日)

  1. SQ日まで建て玉を保有し、強制決済による方法(シナリオ1、2)

  2. SQ日を待たずに、期中のプレミアムの変動による売買差益を得る方法(シナリオ3、4)
    私の場合それぞれ半分ずつぐらいだと思います。(そういう意図ではなく結果的にそうなっている)

限月

 上記でいうXデーのこと。日経では毎月第2金曜日(SQ日と言います)の寄り付き(厳密には違いますが)の価格をSQ値と呼び、そのSQ
値と購入したり売り建てた権利行使価格との差額でSQ日に自動決済(強制決済)されます。現在3月6日ですが、最も近いSQ日は3月11日です。その日に自動決済されるオプションを3月限(3月ギリと読む)のオプションと言います。(一番近い期日のものを期近、その次のものを期先と呼びます。今だと4月限(4月ギリ)が期先です)

権利行使価格

 (日経では125〜250円単位です。27750円、28000円など)これはあくまで個別株でいう銘柄のようなもので売買にその値段が必要だというわけではありません。SQ日決済の場合にこの権利行使価格とSQ値(後述)との差額で損益が決まります。

プレミアム

 事前に発行する権利を獲得するのに必要な費用、いわゆる売買代金。権利行使価格にも価格という単語が含まれるために、プレミアムと呼んで区別します。期中は変動します。そしてオプションのプレミアムとして重要なこととして「原則すべてのプレミアムは期中だんだんと減少して行きSQ日には0円となります(時間減衰と呼びます)」(これとても重要です)
つまりSQ日まで保有せず、期中の売買差益で利益を得ようとする場合、買いで利益を得るにはプレミアムの時間減衰分以上にプレミアムが上昇する必要があります。売りの場合は先にプレミアム分はもらってしまっているので、よほど日経が動かない限り、時間減衰によりそのプレミアムはゼロに近づきますから、期中で買い戻しても、SQ日まで持っても、利益は出やすいしくみです。(オプションではなくオプションの「売り」が世界三大利殖の一つに数えられている理由です)ただし、前述の通り、売り建は理論上、利益限定損失が無限大なので、そのリスクとの兼ね合い、ということになり、万一プレミアムが上昇(特に急騰)した場合に備えたリスクコントロール(損切り)が重要です。

オプションの取引をするには

つまり、オプションの取引をするには

  1. 限月

  2. 権利行使価格

  3. コール or プット

  4. 買い or 売り

の4つを決める必要があります。(つまり2月限のプット27000円と2月限のプット27500円と1月限のプット27000円と2月限のコール27500円は全部違う銘柄)
プレミアムはこちらで決めることはできず、株価に相当しますので、その時の相場状況(SQ日がどのぐらい近いかとかその権利行使価格が日経平均とどのぐらい離れているかなど)によって、刻々と変化していますので、どのぐらいのプレミアムでインするかを見定めることの重要性は個別株と同じです。
ほとんどの取引が期近と期先(つまり今月と来月)の限月と考えて良いと思います(3ヶ月以上先も取引できますが、板が薄いです)

例:2022年3月限 権利行使価格 27000円 のコール を34円で1枚買う → 202203 C27000 +1(@34) もしくは3月限C27000買い と表現
4月限 権利行使価格 27500円のコールを130円で1枚売る
→ 202204 C27500 -1(@130) もしくは4月限C27000売り と表現

色々書きましたが
下記のリンク先の図が分かりやすいと思います。

レバレッジと損益額

オプション取引はレバレッジが1000倍です。
202203 C27000 +1(@34) を建てる場合 34円x1000=34000円必要です。 そして期中にプレミアムが100円になった場合含み益は100-34=66の1000倍の66000円です。また3月のSQ日でSQ値が27500円だった場合の利益は27500-27000=500円の1000倍の50万円からコールオプションの購入代金を34000を引いた466000円です。このコールオプションを売りで建てていてSQ日を迎えた時は466000円の損失です。一方SQ日にSQ値が26000円だった場合も25000円だった場合(それ以上下の場合)も権利放棄となるので買い方はプレミアムの購入代金分の損失に限定(34000円)、売り方はその分の儲けです。

ここまでたどり着ければもうすぐ取引が開始できます。

続きは次回に
ーーー(ここまで)ーーー

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