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インタビュー②

――ここからはゾンビーズ・シリーズについて伺います。そもそもゾンビーズ作品はシリーズ化を前提として書かれたものなんでしょうか。

いえ、違います。実はゾンビーズは一作目の『レヴォリューションNo.3』で役目を終えるはずで、シリーズ化の予定はまったくなかったんです。『レヴォリューションNo.3』でデビュー後、すぐに長編を書きたかったんですが、編集者から、無名の新人作家の書き下ろしなんて出るわけないよ、と言われて(笑)。この(笑)はオーケーですか?

――オーケーです。笑うしかないですもんね。

当時はもう出版不況が始まっていて、新人には厳しい時代に突入していました。とにかく単行本を出さないと一人前の小説家として認知されず、他の出版社からも声が掛からない。でも、単行本は出ない。これから先どうすりゃいいんだ、と。ちなみに、『GO』を出版したあと、やっといくつかの出版社から声が掛かったんですが、『レヴォリューションNo.3』を読んでいた編集者は一人もいませんでした。読んで声を掛けてくれたのは某映画会社のプロデューサーだけでした(笑)。この(笑)もオーケーですよね?

――笑えない話ですが、オーケーです。上記のような事情でシリーズの続編を書くことになったわけですね。

はい。まずはシリーズを書き溜めて短編集を出そう、と編集者に言われました。一作のみのつもりだったので続編が書けるか心配だったんですが、書き始めてみるとなんの問題もありませんでした。ゾンビーズのメンバーが勝手に動いてくれるというか。これなら何作でも書けるぞ、と思いつつ『ラン、ボーイズ、ラン』を書き終えました。そして、編集者から、出版不況だから無名の新人作家の短編集は出しにくい、と言われました。

――(笑)はつけないんですか?

当時のことを思ったら笑えませんよ。デビュー翌年の僕の年収は32万円でした。新人賞の原稿の下読みをやって稼いだ金です。作品を発表するあてもなく、生活もままならない。ここで勝負をかけないといけない、と思って書いたのが『GO』でした。

――それで一息つけたと。

はい。『GO』のお陰でゾンビーズシリーズも書き続けることができました。ただ、『異教徒たちの踊り』、『フライ、ダディ、フライ』、『SPEED』と書いていくうちに、彼らをずっと高校生でいさせることに疑問を感じ始めました。そもそも、彼らは学校が嫌いなんです。居場所がなくて行き着いたところでたまたま仲間と出会えて、充実した三年間を過ごせたけれど、彼らが通う高校はお世辞にもいいところとは言えない。だから、僕は二作目の『ラン、ボーイズ、ラン』でさっさと彼らを卒業させているんです。過去の出来事を題材に書けばいくらでも続けることはできるけれど、その代わり、彼らはずっとマンキー(=暴力教師)に殴られ続けなくちゃならない。そのことに抵抗がありました。

――ゾンビーズの通う高校はあなたの出身高校がモデルだそうですが、あなたの実感がこもっている気がします。

はい、とはなかなか言いにくいんですが(笑)、僕も二度と高校時代には戻りたくないと思っているので、確かにそうかもしれませんね。ちなみに、『レヴォリューションNo.3』の女子高襲撃は僕の実体験がベースになっています。かなりデフォルメはしてありますが。新人賞の最終選考に何度か落ちて、次に何を書くか悩んでいた時に、あの時の楽しかった感覚を書こう、と思って書いたのが『レヴォリューションNo.3』でした。

――『レヴォリューションNo.3』というタイトルの由来を教えてください。

僕はタイトルをつけるのが苦手でいつも悩むんですが、『レヴォリューションNo.3』はびっくりするぐらい自然に頭に浮かびました。元々ビートルズの『レボリューション』という曲が好きでよく聞いていたので、そこから発想しました。ちなみに、ビートルズの『ホワイトアルバム』には『レボリューション 1』と『レボリューション 9』という曲が入っているんですが、3を作って割り込んでやろうという思いもありました(笑)。


――シリーズ最終作『レヴォリューションNo.0』はどんな思いで書かれたんですか。

完結編を意図しましたが、彼らの卒業は『ラン、ボーイズ、ラン』ですでに書いているので、それなら逆に結成までの原点の話を書いて終わろうと。それと、当時の自分の心境も多少は入っていますね。あの当時はとにかくゼロに戻ってやり直したかった。エピグラムとして冒頭に掲げた『ライク・ア・ローリング・ストーン』の一節を、当時はよく口ずさんでいました。ちなみに、作中に登場する合宿も実話がベースになっています(笑)。

                                (つづく)

                        インタビュアー:兼城和樹


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