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インタビュー④ 『SPEED』について

――シリーズ二作目の長編『SPEED』について伺います。まずは書かれた経緯を教えてください。

映画『フライ、ダディ、フライ』の公開に合わせてシリーズの新作を出そうと思い、映画制作に携わりながら構想を練って、映画がクランクアップしたあとに一気に書き上げました。

――『フライ、ダディ、フライ』に続いてゾンビーズが主人公ではありませんが、その意図は?

前にも話しましたが、『ラン、ボーイズ、ラン』で彼らの卒業を書いてひどい高校から解放したのに、また彼らを主体にしたストーリーを書くことに抵抗がありました。なので、シリーズのテーマである“世界を変えたい”と願っている主人公を設定し、その手助けをする役割を与えようと思いました。

――おじさんの次に女子高生を主人公に選んだ理由はなんでしょう。

女子高の学園祭を襲ったりおじさんの復讐を描いたりと、むさ苦しい話が続いたからです(笑)。というのは冗談で、まだまだ男性優位の風潮の残る日本では女性のほうが“世界を変えたい”と強く願っているのでは、と思ったことがきっかけでした。それと、一度女性の一人称で書いてみたいという思いもありました。

――なぜですか。

いつも男の主人公の“僕”ばかりだと、小説家として成長しないと思ったからです。『SPEED』は書いていて常に緊張感がありました。

――女性読者からの反響はありましたか。

はい、たくさんありました。出版して10年近くが経ちますが、いまだに女性読者の方から感想をいただいています。本当に嬉しいことです。そういえば、若い女優さんたちから、主役の佳奈子を演じたい、と何度か逆オファーをいただいたこともあります。残念ながら制作には至らなかったのですが。

――タイトルの由来は?

僕は作品を書き始める前にまず頭の中で“映画化”するんですが、ちゃんと主題歌も決めるんです。『SPEED』はシェリル・クロウの『Steve Mcqueen』で、歌詞の中に、

 Like Steve Mcqueen
 All I need is a fast machine

という大好きな一節があって、そこから連想していき、『SPEED』に辿り着きました。ちなみに、歌詞に出てくるある単語を本文中に紛れ込ませているので、もし良かったら探してみてください。

――シェリル・クロウにはお世話になっていますね。

はい、足を向けて寝られません。


読むと新作をより楽しめると思います

――紛れ込ませるといえば、短編集『対話篇』に入っている『永遠の円環』とストーリーがリンクしていますが、どういった意図があるのでしょうか。

僕の中に“金城ワールド”があり、すべての作品はその中で起こっているので、登場人物やストーリーがところどころでリンクするんです。スティーヴン・キングでいうところのキャッスル・ロックのようなものでしょうか。

――ずいぶん大きく出ましたね。

すいません、言い過ぎました。ともあれ、諸作品を読み込んでもらえれば思わぬところにリンクを発見できて世界が繋がると思いますので、興味のある方はぜひトライしてみてください。

――『SPEED』は新作と非常に深くリンクしているようですが。

読んでいると新作がより楽しめると思いますので、ぜひ御一読を。

                                                      
                                                                                                (つづく)

                    インタビュアー:兼城和樹



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