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旦那様はサンタクロース(7)最終話

 街はイルミネーションが潤んだようにキラキラと澄んだ夜空に瞬いていた。

 そんな中、クリスマスの夜に私は1人大荷物を抱えて自宅へと一旦帰った。

(ふう~。チキンだっけ…?今からか…ローストチキン?やったことないなぁ…。照り焼きチキンならできるかなぁ…。)

 とりあえず夜12時まで開いているスーパーに鶏肉とスパークリングワインを買いに走る。鶏肉はいわゆるチューリップと言われる鶏の手羽元を買ってきた。これをじっくり照り焼きにしていく。

(うん、できた。)

 結婚して初めてのクリスマスなので、彼が何時に帰ってくるのか見当もつかない…。

 25日の夜は更けていき…。

(ハッ!!コタツで寝ちゃった!!)

 パッと目が覚めて慌てて携帯を見ると明け方の5時過ぎだった。部屋の電気は消えていて薄暗い。私はコタツをつけっぱなしにして、すっかりうたた寝してしまったようだ。

 でも……。肩口に毛布がかけられている。

 起き上がってコタツから這い出し、薄暗がりの中あたりを見回すと、行き倒れのサンタクロースが私が入っていたコタツの反対側の辺に足先だけ突っ込んで眠っていた。

「やだ…。風邪ひいちゃうよ…。」

 私が毛布をかけようとすると手首をぐっとつかまれたので思わず「きゃっ!」と声をたててしまった。

「ごめん。驚かせちゃった…。」彼が体を起こす。

「おかえりなさい!!」
言うやいなや私は彼の首に抱きついていた。

「ただいま…。メリークリスマス。」
彼の腕が私をキュッと優しく抱き締める。

「遅いよ!26日だよ!」

「ホントだねぇ。ごめんね…。」

「ううん、ごめんなさい!お疲れ様!メリークリスマス!!」

そう言って彼の顔を見つめると、目の下にはクマができ、心なしか頬もこけていた。

「朝ご飯…食べる?」

「う~ん…。温かいお茶かスープだけ…あればもらうよ。それ飲んだら少し眠らせて。3日間寝てなくて…。」

「うん、わかった。今ポトフあっためてくるね。」

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 彼は昼過ぎまで布団で眠った後、お母さんの作ったおかずと、私の作ったチキンをしあわせそうに…びっくりするぐらいモリモリ食べた。

「あ~、お腹いっぱい!美味しかった!母ちゃんとこ、行ったの?」

「うん、ありがとう。行って良かった。」

「そっか…。なら良かった。」

「色々聞いてきたよ。あなたの子どもの頃のこととか、サンタクロースの仕事のこととか。」

「へぇ。」

「ねぇ、聞きそびれたんだけど、なんでサンタクロースは世襲制なの?」

「別に、世襲制ってきまりは特にないよ。」

「ええっ?そうなの!?」

「うん、でも…ちょっと考えてみてごらん。こんな極秘の仕事…世襲にしなかったら、次の世代にどうやって伝えていくわけ?」

「……ああ、そっか。そうだよね。じゃあ、私たちの子どももいずれはサンタクロースに…?」

「まぁ、それは分からないよ。本人が嫌だ~って言えば無理強いはできないしさ。僕も最初嫌だったもの。」

「うん、…だってね。聞いたよ。」

「え~、母ちゃんそんなことまで話したのか…。」

「紺屋の白袴って言ってた。」  

「ああ、それ母ちゃんの口癖な。多分これから毎年こんなだから、これからもずっと迷惑かけると思うけど…。次までにもうちょっと色々勉強して、資格もワンランクアップして、もう少し早く帰れるようにするから…。」

「資格試験なんてあるの?」

「あるんですよ…。これで使っていい乗り物とか変わるし、全然スピード変わるから。」

「うん、分かった。頑張って!応援する。」

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 1ヶ月後。

「サンタクロース1級の試験に合格したよ。」

 そう彼から連絡がLINEで入った。実は私の方からも1つ報告があった。でも直接言いたくて、私は彼の帰宅を待った。

「ただいま~。」

「おかえりなさい。サンタクロース1級、おめでとう!」クラッカーを鳴らす。

「えっ、何?ケーキなんて用意したの?そんな大げさにしてくれなくていいのに…。」

彼は照れくさそうに頭をかきながらそう言った。

「んふふ…。実はそれだけじゃないんだよ、聖人君。ふっふっふ。」

「……何?」



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(完)
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おはようございます。かねきょです。
長々とお付き合い頂きまして、どうもありがとうございました。クリスマスまでになんとか間に合って良かったです。『旦那様はサンタクロース』は以上です。最後まで読んで下さった方!あなたは偉い!本当にどうもありがとうございましたm(_ _)m

では皆様、よいクリスマスを✨🎄✨

MERRY CHRISTMAS!

(関連楽曲)
『ふたりだけのクリスマス』

ありがとうございますサポートくださると喜んで次の作品を頑張ります!多分。