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10年10万kmストーリー 第80回 プジョー206RC(2003年) 11年12万5000km


距離計は15万kmを越えた


 見知らぬ人から、SNSのダイレクトメッセージが送られてきた。

<10年10万キロストーリーは以前は『NAVI』誌上で、現在は「note」で拝読しております>

 おっ、昔からの読者さんからだ。ずっと読んでくれているなんて、ありがたいではないか。

<当方は2003年モデルのプジョー206RCを2011年5月に2万5000kmで購入し、現在は14万kmを越えました。買い換えるのもいいのですが、これといったクルマもなく現在に至りますが、その前のプジョー106S16も、さらに前の日産パルサーGTiも10万キロ以上所有していました>

 送り主は、206RCに10年10万km以上乗り続けている人だった。パルサーGTiにも10万km以上乗っていたというならば、相応の年齢の大人なのだろう。簡潔で丁寧な文面も、それを予想させていた。

 このようにして未知の読者から連絡をもらうのは、とてもうれしい。記事の反応がダイレクトメッセージというかたちとなって伝わってくるのは励みになる。

<もしよろしければ、当方を取材してみては如何でしょうか?>

 取材の申し込みだ。これもありがたく、うれしい。

 プジョー206RCのことは、よく憶えている。コンパクトな206に177馬力の2.0リッター4気筒エンジンを搭載したスポーティモデルだ。トランスミッションは5段マニュアル。パワフルになった分、ブレーキやサスペンションなども強化され、大径ホイールに205/40ZR17インチの(当時としては)扁平サイズのタイヤを履いている。たしか、アルカンタラが張られたシートの背面にはバケットタイプで、“RC”の文字が刺繍されていた。スポーティモデルでありながら、ESPなどの装備も充実したトップモデルだった。

 試乗記も書いた。

『206RCは、5段MTをローに入れて走り出すと、極低回転域から太いトルクを発生させ、太いタイヤで路面を鷲掴みするようにダッシュするのが痛快だ。2リッター4気筒エンジンは最高出力を発する7000rpmまで鋭く回っていくが、途中、4000rpm以上からのパワーの盛り上がり方が大人しくなってしまうのが、ちょっと残念。実用上で何の不足もないのだが、回転が上がるに伴ってパワーも盛り上がっていくと、もっと面白いのだが。ここは、クルマのキャラクターを定める際の分岐点だろう。“ホットハッチといえども実用車だから、低回転域でのトルクの太さを優先し、扱いやすさを目指す”のか? それとも、“ホットハッチにとっても、エンジンは命。中高回転域での回転の伸びこそがスポーティ感覚を高める”のか? この辺りのエンジンフィーリングのセッティングは、コンペティターとなるフォード・フォーカスST170の方が一枚上手だ』

 他に、ルノー・ルーテシアRS2.0とも比較して書いている。

『走りっぷりは、どんな状況下でもフラットな姿勢を保ち、タイヤグリップを失わない頼もしいものだ。その点では、ルーテシアRS2.0の方がロールが大きく、乗り心地も全般的にソフトだ。206RCに乗るのは、街なかでも山岳道路でも痛快そのものだ。運転のすべての動作に対するクルマからの反応が五感を刺激し、ドライバーを煽り立てる。それが下品にならないのは、206シリーズ自体の完成度の高さの上にRCモデルが構築されているからだろう』

 待ち合わせ場所に現れたのは206RCではなく、同じプジョーの1007だった。通勤や買い物、親御さんの送り迎えなど日常的な用途には1007を使っていて、206RCには用途を選んで乗っているという。ラリー観戦のためには遠出もいとわず、北海道の帯広や四国の久万高原まで走っていったこともある。206RCにはクラッチのオーバーホールが予定されていて、おおよそ17か18万円という見積もりを受け取っている。オーバーホールが済むまでは大事を取っている。それならば、2台分の維持費を負担するより、どちらか1台に絞った方が合理的ではないかと訊してみたが、1台にはできないのだという。

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