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松元悠 個展「独活の因縁|The Fate of an Udo」

大学の先輩である安井海洋さん(学芸員・美術批評家)が企画する、松元悠さんの個展「独活の因縁|The Fate of an Udo」に行ってきました。
場所は帝国ホテルプラザの2階にあるギャラリー「MEDEL GALLERY SHU」。帝国ホテルは愛知県にいた頃に博物館「明治村」で中央玄関部を移築したものしか見たことがなかったのでドキドキしました。広いホテルとプラザ内の中を迷いながらもなんとか到着。

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2017年から現在までの12作品が展示

昨今の社会状況で制作が進まず、予定より展示作品が少なくなってしまったそうですが、ギャラリー内外には12の作品がズラリ。
松元さんはリトグラフと呼ばれる版画作家。マスメディアが報じた様々な出来事をリトグラフに描いているそうです。
特筆すべきはそこに描かれる人物は全て当事者の代わりに自画像であるということ。
見つめていると絵の中に引き込まれてしまいそうな不思議な力があります。

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『1人の自死と9匹のハムスター』の引力

12作品の中でも私が最も惹かれた作品は『1人の自死と9匹のハムスター』。記憶によれば私が伺った際にはすでに1枚購入された方もいたようです。
写真撮影OKとのことでしたがあまりにも見入ってしまったために撮影させていただくのを忘れておりました……。
自画像と9匹のハムスターが描かれている作品ですが、少し怖くなるくらいの生々しさすら感じる作品。あくまで個人の感想ですが、もしかしたら自画像は「自分自身」と置き換えることさえできるのでは、と考えが至った際には「自分自身」が作中に引き込まれてもう後戻りできないような感覚がありました。
安井さんの「到来する外部 ― 松元悠「血石と蜘蛛」評」によれば「作者は私たちが見ない振りをしてきた出来事のリアルな側面を画中に混入させる。そのことにより、出来事の現場に通じる道が一瞬だけ開かれるのである」とのこと。
豊かな色彩に彩られたリトグラフの中にちょっとだけ「怖さ」がある、そんな不思議な魅力をもつ松元悠の作品たち。
気になった方はぜひチェックしてみてほしいと思います。

(松元悠 note 『到来する外部 ― 松元悠「血石と蜘蛛」評』より)

松元悠 個展「独活の因縁|The Fate of an Udo」展示作品(抜粋)

展示作品を撮影し忘れてしまったため、許可をいただき作品の写真をこちらに一部掲載させていただきました。
ぜひ、松元さんの作品の魅力を感じてください。

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昼食(下井草)/リトグラフ、BFK紙/650×550㎜/2019

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ファイター(下井草)/リトグラフ、BFK紙/650×550㎜/2020

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作品(粟島)/リトグラフ、BFK紙/650×550㎜/2020

(MEDEL GALLERY SHU HPより)

松元 悠 

1993 京都生まれ
京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画コース 卒業
京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画 修了

個展
2019 「活蟹に蓋」三菱一号館美術館 (東京)
2019 「血石と蜘蛛」 YEBISU ART LABO (愛知)
2018 松元悠「カオラマ」 京都芸術センター南・北 (京都)
2017 「マル秘と鶏」 SUNABAギャラリー (大阪)
2015 「松元悠 展」 Oギャラリーeyes (大阪)

statement
ニュースをきっかけに、それらの出来事について何らかの方法(現場に訪れる/事件の当事者を演じる等)で、当事者の追体験を試みる。
リトグラフ技法による作品群は、それらの行為が積み重なって出来た、作者の想う当事者のイメージ(=当事者像)である。

モニター越しのニュースに触れた時、わたしは無意識に当事者に感情移入し、共有しようとし、理解しようとする。

しかし、わたしと当事者との関係はほとんどの場合無縁であり、わたしという存在は、それらの出来事をネタとして消費する一視聴者に過ぎない。

一方で、「当事者を想う」という行為は、見ず知らずの他者と地続きで繋がるための行為とも言える。
ニュースショーが演出する当事者像から一歩踏み出し、出来事の追体験を試みた時、そこに立ち現れるのは自らの手で再構築した人物の姿である。
それは当事者でもなければわたし自身でもない。あるいは、その両方であるかもしれない。

とすれば、実在するニュースを元に作品を作ることは「消費」だろうか。
それとも、「他者を想う」という当事者不在のコミュニケーションだろうか。

共感でもなければ消費でもない。他者との対話の在り方を模索し続けている。

2019.06.24

(松元悠 note 『松元悠 cv | statement』より)

開催概要

MEDEL GALLERY SHU CONTEMPORARY ART REVIEWS VOL. 8
松元 悠 個展
独活の因縁|The Fate of an Udo
企画:安井海洋・飯盛希
場所:MEDEL GALLERY SHU
期間:2020年6月29日(月)〜7月8日(水)
時間:11:00〜19:00(最終日は17:00まで)

松元悠はマス・メディアが報じる出来事をリトグラフに描く。インターネット、新聞、雑誌が伝える当事者の情報は断片的であり、私たちはマス・メディアの向こう側に生きた人間がいるという事実をしばしば忘却している。
松元もまた、そうした情報の消費者の一人にすぎないことを自覚している。しかし、彼女は当事者の代わりに自画像を描くことで、出来事との関わりを創出しようと試みる。それは当事者の不在を埋めるのではなく、むしろ、空白を指し示すための行為である。

(MEDEL GALLERY SHU HPより)

MEDEL GALLERY SHU

〒100-0011 東京都千代田区内幸町 1-1-1
帝国ホテルプラザ2F
営業時間:11:00 – 19:00
☎ 03-6550-8111

(MEDEL GALLERY SHU HPより)

参考:『松元悠 個展「独活の因縁|The Fate of an Udo 作品解体書』

文・写真:金子修平

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