1-⑥オフィス撤退4

社長から弁護士を通じて
「引き続き、働いてもらえるだろうか」
とのお伺いがあった。

あたしは「はい」と答えたけれど、馬鹿正直な照山さんは
「僕の担当はすべて中止になったのですることないですけど、それでもお給料もらえて雇い続けてもらえるのなら」
と言う。
たしかに、彼の担当業務は社長がいないとまわらないし、こういう状況になったので彼担当の取引先は一斉に引いたのですることはないけれども。
「することないのに、雇用続けるわけないだろ」
ということになった。

「金井さんとしてはどうですか、照山さんがいなくても、業務は続けられると思いますか?」
デザイン関係の仕事がなくなったいま、情報を管理するだけならば、もともとあたしがやっていた業務を照山さんに分けたものなので情報を引き継いでもらえばできる。

「照山さんは、8月で退職でいいですか?」
「諸々の片付けがあるので、9月までのお手伝いをお願いしたいです」

弁護士諸氏では対応できないため、あたしが英語が必要な社長の海外案件に対応してバタバタしていたのでオフィス撤退作業は照山さんに手伝ってもらうのが得策だと判断した。照山さんだって、「再就職活動、大変だろうなあ~。できれば、雇用してもらってる間に次の仕事見つけたい」と言っているのでちょこちょこ手伝いながら就職活動できるのは、彼にとってもよいだろう。

それにしても、こういう状況になって真価がわかるというか、人間性がでるというか。
その日のうちにさっさと手を切ってきた大手。
「うちはお宅とは関係ありませんから、ウェブにある協力会社としてだしてあるロゴ消してください」
と言うところもあれば、
「申し訳ありませんが、このような状況ですので削除してください」
と丁寧に言ってくるところも。

「現状を説明しろ」と言ってくるところもあれば
「応援しています。必要だったら『彼が間違ったことをするわけがない』という声明も出すよ」と言ってくれる海外のビジネスパートナーもいた。


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