2-⑥照山さんの登場と部長くんの失脚(3)

部長くんの嫌がらせは、子どもっぽかった。

あれこれであたしの揚げ足を取る。
立場を利用して、さまざなに文句をつけてあたしに謝罪させる。
お給料は、現金主義の会社だったので給料日に部長君が現金を下ろしてきてみなの分を封筒につめ、渡していくがあたしにだけ渡さない。
あたし以外の皆に給料を渡してどこかに行く。
あれこれの用事が終わって遅くに会社に戻ってきた社長が渡す、ということが2,3カ月続いた。

正直、こんなところで働きたくないな~、と思ってきた。

例の、照山さんに手伝ってもらっている案件が片付いたらこの会社やめよう、社会人としてこの案件だけは済ませようという気持ちで働いていた。

社長は敏感なので(それなら当日に助けてくれよ)、そんなあたしの様子を見て社内外のひとから聞き取りに走ったらしい。
すると、自分が右腕と頼んでいた部長くんの悪い話がいろいろと聞こえてきたという。
それまでは、「社長が頼りにしているので…」と遠慮して不満を社長に伝えていなかった従業員たちが、部長君の暴君ぶりを社長に伝えだした。また、社長に頼られているのをいいことに、傍若無人に振舞っていたのがたたり、社長のビジネスパートナー複数人からでさえ「あいつ、まるでチンピラだよ?ひどく感じ悪いし、周辺に置いておいたら、むしろ社長の評判がさがるよ?」「さっさと八田くんをクビにして、金井さんを手元に置いておいたほうがいいんじゃない?」と言われたようで、これはかなり衝撃だったようだ。

あたしは大人なので、仕事で嫌いなひとがいてもしれっと働けるが、部長くんはお子ちゃまなのであたしが嫌いとなると顔も合わせたくないらしく、最初は出ずっぱりにしてほぼ事務所には寄らないようにし、ついで自分のデスクも飲食業の建物のほうに移してこちらには全く顔を出さないようになった。

社長が八田さんを重用していたのは承知していたので、去るのはあたしだと思っていたのに、社長としては事業の発展にはあたしが不可欠だと判断したらしく、意外にも部長くんを切る方向に舵を切った。これまでの担当から彼から切り離し、あたしのいる事務所には来させないようにした。あたしはそれをとても、有難く感じた。

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