3-⑧ ガレージセールの行方(1)

堀田さんにはその後もビアサーバーの始末の仕方など、こまごまとしたものの片付け方やどこに連絡すべきかなどを教えてもらった。
質問相談したいこともあり、売り上げに貢献したい気持ちもあって堀田さんの店にはブリリアントの後でしばしば寄った。

あたしにとっての一番の懸念事項は、壁画の始末だった。
「管理会社が壁画はやっぱり消してください、とのことでしたので、業者を紹介していただけますか」
「わかりました。壁、黒だし、黒塗りするんだったら自分で塗るというのもアリですね」
「あっ、それいいですね!あたし昔、知り合いの店の内装工事で漆喰の壁ぬる手伝いしたことあって、楽しくやったことあるんです。重かったけど、、、」
と、その時は酔いも手伝ってはしゃいだけれど、帰宅してあれこれネットで調べ、酔いのさめた頭でよくよく考えてみるとメンドクサソウ、が先にたってきた。しかも、失敗したらよけいとお金と時間かかるんじゃ?と思えてきて堀田さんに「やっぱり、今回はおとなしく業者にお願いしようと思います」とLINEを送った。

数日後にまたブリリアントの片付けに行った際に壁画のある壁2面のタテヨコの長さをはかり、写真に収めた。ふと気づくとカウンターの上にも、こちらはアーティストではなく、マーカーでスタッフが描いたと思われる店名や落書き程度の、それでも3mくらいの幅のものを見つけて「あ゛~ 依頼範囲増えたあ」と思いつつ堀田さんの店に行き、「こんなものもありました」と写真を見せると
「これくらいだったら、シンナーとかで消せるんじゃないですか?」
と言われた。「へ、そんなもんなの?」と帰宅後にネットでググってみると、たしかにシンナーや無水エタノールなどで消せるらしい。

「無水エタノールって、じゃあアルコールも有効なんでねえの」
と翌日ブリリアントに行き、カウンターによいしょっと上って開封済みで捨てるしかないスミノフをクイックルワイパーに含ませて拭いてみると、おお、消える!ボルダリングで鍛えた体幹力とバランス感覚を上手につかってカウンター上の板につかまりながら、落書きを消していった。

そう、思わぬところでボルダリングが役に立った。
この5年くらい、ちみちみボルダリングジムに通っているものの、生来の怖がり意気地なしと、ボルダリングするには重めの体重なのでいまだに底辺の課題をうろうろしている程度だけれど、それでもやはり体幹がしっかりし、バランスのとり方がうまくなってきたこと、身体の預け方、安定した足場や手のかけかたのカンが養われていることを、はからずも今回のブリリアント片付けで実感した。

そーた君に紹介してもらった業者の寺本さんが見積もりに来てくれた。
ざっと厨房器具などをみてもらったが、まだこちらで片付けるあてのある物品がある状態なのでそれが片付かないと見積り金額を伝えられないという。
「だいたい、どれくらいになりそうかはわかりますか」
「まあ…、6万くらいはお渡しできると思います」
依頼したら、どれくらいのはやさで片付けてもらえるのかきくと
「ああ、依頼もらえたらすぐ…4,5日で片付けますよ」
と言う。
しかし、「壁画は、うちでは…専門の業者に頼んでください」という。ちぇっ、そーた君、一手に引き受けてくれるところじゃなかったのか。

食器類については、堀田さんは「知り合いに売ったら」と言うけれど、正直、そのために自分の日にちや労力を割くのはメンドい。しかし、社長は「できれば売ってほしい」と言う。引取・片付け業者の寺本さんは食器類は値がつかないと言う。ウェブ販売を担当している猫田さんに相談したが、断られた。

食器類は未使用の高級品しか売れないし、もし出品して割れ、低評価がつくと出品者としての評判が落ち、他の出品物の売れ行きに悪影響がでるから、とのことだ。それでも、買取業者複数にあたってくれて、「どこも値がつかないと言っている」という回答を持ってきてくれた。

やってみて「売れませんでした」だったらやるだけはやりました、という姿勢を見せられて社長も納得してくれるだろう。堀田さんに飲食店のひと向けのセールだったら、何曜日の何時あたりがよさげか、値段のつけ方なども相談したうえで3日間と決め、ひさしぶりにイラレを使ってへっぽこチラシを作り、堀田さんに飲食店店主向けに情報を流してもらった。

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